機関の13Fを「株数」で読むと逆になる──IBIT・MSBT・Circle保有の増減を評価額で見直す

nley Bitcoin Trust(MSBT)を257万株・約4,330万ドル、FBTCは約38%増。Circle Internet Group株は146万株から832万株へ大幅に積み増している。

見出しだけ並べると、機関投資家が揃って買い増した四半期に見える。ここから先が本題だ。

論点1:株数が増えても、評価額は減っている

Morgan Stanleyのケースがいちばん分かりやすい。IBITの保有株数は23%増えた。同じ四半期に、その持ち高の評価額は18%減って6億6,700万ドルから5億4,900万ドルになった。 期中にビットコインが下落したためだ。

「保有を増やした」と「保有額が増えた」は、同じ四半期のなかで反対方向に動きうる。どちらの数字を見ているかで、結論が逆になる。

この観点でJPMorganの数字を見ると、内部矛盾がある。株数は830万株から1,040万株へ25%増だが、評価額は1億6,200万ドルから3億5,570万ドルへ120%増と報じられている。1株あたりに直すと第1四半期が約19.5ドル、第2四半期が約34.2ドルで、期中にIBITが倍近く値上がりした計算になる。だがMorgan Stanleyの開示は同じ期間にIBITが下落したことを示しており、両立しない。第2四半期末の1株あたり単価(JPMorgan約34.2ドル、Morgan Stanley約33.3ドル)は整合するので、ずれているのは第1四半期の比較値のほうだと考えられる。

報じられている「25%増」は株数、「120%増」は評価額。後者は現時点では鵜呑みにできない。

論点2:率の大きさと、絶対額の大きさは別

JPMorganの「XRPへの復帰」は、率としては無限大からの復帰にあたる。絶対額を見ると、Bitwise XRP ETFが約1,356ドル、Grayscale XRP Trust ETFが約3,763ドルだ。

5兆1,000億ドルを運用する銀行の、4桁ドルの持ち高である。 位置づけとしては、機関投資家の選好を示す材料というより、取引システム上の残高に近い。

IBITについても同じ物差しが要る。3億5,570万ドルは大きく見えるが、同じ13Fが示すJPMorganの届出対象保有総額は1兆8,070億ドル、34,064銘柄。IBITは全体の0.02%にあたる。

Tudorの2,290万ドルも同様だ。2024年11月時点の届出では同社のIBIT保有が約1億6,000万ドルと報じられていた。間の四半期の増減は追えていないが、少なくとも**「著名投資家が買った」という方向の話ではない可能性がある**。金額の絶対値だけを見出しにすると、この向きが消える。

論点3:13Fの日付と、いまのフローは別物

6月30日の写真に対して、8月の実際の資金の動きはこうなっている。

  • 8月11日:米ビットコイン現物ETFから1億4,467万ドルの純流出。5営業日続いた流入が止まった
  • 8月13日:6,116万ドルの純流出。前日の反発が1日で終わった。内訳はFidelityのFBTCが4,682万ドル、IBITは1,434万ドルと控えめ。同日のイーサリアムETFは738万ドルの純流入で逆方向

つまり、13Fが「着実な積み増し」を示している一方、直近の日次フローは流出側に振れている。この二つは矛盾していない。見ている時点が6週間違うだけだ。

「機関投資家が買っている」という文と「ETFから資金が抜けている」という文は、同じ日に両方成立する。次にJPMorganの持ち高が分かるのは11月中旬の提出時であり、それも9月30日時点の写真になる。

論点4:先物建玉は、そもそも別の指標

BTC先物の建玉が8月に15%・37,000 BTC増えたとする分析も出ている。取引所別の内訳、算出期間、出典が確認できていない。

指標の性質として押さえておくべきは、建玉が未決済契約の積み上がりを示す数字であり、保有額とは別物だという点だ。契約には買い方と売り方の双方が関わるため、建玉の増加だけから価格の方向は決まらない。価格上昇を伴う建玉増は継続への新規資金、価格が横ばい・下落しながらの建玉増は売り持ちの積み上がりやヘッジを示しうる。清算状況と資金調達率と合わせないと読めない。

ETF保有の開示と先物建玉を同じ表に並べる場合、前者は特定主体の保有報告、後者は市場全体の未決済ポジションだという違いが残る。数字が大きくても、同じ資金の動きを表すとは限らない。

まとめ

今朝の材料は、機関投資家の四半期開示が一斉に出たことによるものだ。読み違えを避けるには、4つを分けて確認すればいい。

誰が(提出者と、自己勘定か顧客分か)、いつ時点か(13Fはすべて6月30日基準)、株数か評価額か(同じ四半期に逆方向へ動きうる)、率か絶対額か(338%増が1,430万ドル、無限大の復帰が1,356ドル)。

2,290万ドル、25%、338%、23%増と18%減、37,000 BTC。これらは別々の物差しの数字であり、一つの相場観へ束ねられるようには作られていない。