ETHの価格が2026年の安値まで下がったその日に、ある米国企業が逆にETHを買い増した。SharpLink——公開企業として世界2位のETH保有量を持つ会社だ。
この記事の要点
- SharpLinkのETH買い増しは、企業の暗号資産保有がBTCだけではなくなったことを示す材料である。
- 含み損がある中で買い増す理由は、財務戦略、保有方針、ETHの位置づけを分けて見る必要がある。
- 取得価格、保有量、評価損益、今後の資本政策は一次情報で確認したい。
しかも同社は、すでに巨額の含み損(評価上の損失)を抱えている。それでもなぜ買うのか。本稿はこの1件だけを取り上げ、何が起きたのか、なぜそうするのか、何に注意すべきかを、専門用語を噛み砕いて整理する。
結論を先に言えば、入力材料の数字には取り違えが1つあり、それを正す。そのうえで、この出来事が示す「企業の暗号資産保有はBTCだけの話ではなくなった」という変化を、やさしく解説する。
まず整理:何が起きたか
数字を時系列で正確に並べると、こうなる。6月25日:SharpLinkが5,000 ETH(約785万ドル)を取得。仲介はFalconX、平均価格は約1,576ドル。これは約8か月ぶりの購入(前回は2025年10月) 6月27日:さらに**29,196 ETH(約4,670万ドル)**を取得。
仲介はGalaxy Digital、平均価格は約1,599.50ドル 3日間の合計:分析会社Lookonchainの集計で、約39,196 ETH(約6,240万ドル) ※入力材料は「29,196 ETHで6,240万ドル」としていたが、これは別々の数字の組み合わせだった。
正しくは、29,196 ETHは単日の購入で約4,670万ドル、6,240万ドルは3日間合計(約39,196 ETH)である。円換算は当日の為替次第だが、6,240万ドルはおよそ90〜100億円規模(1ドル=150〜160円換算、参考値)。
ポイントは、価格が下がっている局面で企業が買い増したことだ。価格だけを追うと、「企業がどの資産を財務に組み入れ始めたか」という動きを見落とす。そもそもSharpLinkとは 聞き慣れない社名なので、先に背景を押さえる。
SharpLinkは2019年、スポーツ賭博・ギャンブル業界向けのアフィリエイト広告会社として設立された。それが2025年6月にETHを財務の中心に据える「暗号資産トレジャリー企業」へ方針転換し、2026年2月に旧称SharpLink GamingからSharpLinkへ改名した。
会長はEthereumの共同創業者でConsensys創業者のジョー・ルービン氏が務める。「トレジャリー企業」とは、暗号資産を一時的な投機ではなく、会社の中核的な準備資産(トレジャリー)として大量に保有する会社のことだ。
BTCでこれを最初に大規模に行ったのがマイケル・セイラー氏のStrategy社で、SharpLinkはその「ETH版」と言える。現在の保有量は約868,700 ETH(うち約22,100 ETHは後述のステーキングに回している)。
これは公開企業として世界2位で、1位はトム・リー氏のBitmine(約567万ETH、約89億ドル)だ。なおBitmineも6月22日に52,203 ETH(約9,200万ドル)を買い増している。
なぜBTCではなくETHなのか ── 鍵は「ステーキング」 企業がBTCではなくETHを選ぶ理由を、ここで噛み砕く。最大の違いはステーキングだ。ステーキングとは、ETHをネットワークに預けて(ロックして)その安全性維持に協力し、見返りに報酬(利回り)を受け取る仕組みである。
銀行預金の利息に少し似ている。BTCは保有していてもこうした利回りを生まないが、ETHは預けることで利回りを得られる。SharpLinkは約22,100 ETHをステーキングに回し、さらにオンチェーンでの利回り戦略にも手を広げている。
つまりETHトレジャリーの狙いは、(1)価格上昇の余地、(2)ステーキングなどの利回り、(3)Ethereumが今後DeFi(分散型金融)・資産のトークン化・ステーブルコイン・ブロックチェーン決済の基盤として広がることへの賭け——この3つを同時に持つことにある。
価格の値上がりだけが目的ではない点が、BTC一辺倒の保有とは違う。変化前と変化後 変化前:「企業の暗号資産保有といえばBTC」だった。セイラー氏のStrategyが代表例で、議論の中心は値上がり益とバランスシートへの計上だった。
変化後:ETHを選ぶ企業が現れ、論点が広がった。値上がり益だけでなく、ステーキングの利回り、その会計処理、どこに安全に保管するか(カストディ)まで含むテーマになった。読者の判断基準は「企業がBTCをいくら買ったか」から「企業がどの資産を、どんな利回りと会計で、どう保管しているか」へ更新される。
最大の論点:含み損でも買い増す意味 ここがこの記事の核だ。SharpLinkは現在、深い含み損を抱えている。含み損とは「まだ売っていないが、買った値段より今の値段が安く、評価上は損が出ている状態」を指す。
分析によれば、SharpLinkの平均取得単価は約3,609ドル。一方でETHは足元で約1,540〜1,600ドルしかない。この差から、**含み損は約17.9億ドル(およそ2,800億円規模)**と推計される。
株価(SBET)も1か月で約27%、半年で約50%下落した。普通なら買い増しを止めてもおかしくない。それでも買うのはなぜか。企業の財務には大きく2つの財布がある。日々の支払いに使う「運転資金」と、長期の方針(テーゼ)を表す「戦略的配分」だ。
値下がり局面での買い増しは後者、つまり「下がった時こそ、あらかじめ決めた計画(例:価格や時期で機械的に分割購入するドルコスト平均法)に従って積み増す」という戦略の表れと読める。短期の値動きに反応した行動ではなく、長期の確信に基づく行動という解釈だ。
ただしリスクもはっきりしている。**会計のルール上、暗号資産は時価で評価する(時価評価)**ため、含み損はそのまま損益計算書に響き、投資家との関係(IR)で重荷になりうる。企業のETH保有で本当に問われるのは「価格が上がるか」より、「深い下落に耐えて持ち続けられる仕組み(リスク上限・明確な開示・流動性の備え)があるか」だ。
なお、平均取得単価や含み損の額は、公開されているブロックチェーン上の記録(オンチェーン)からの推計であり、監査済みの確定値ではない。方向性は確かでも、金額は会社の正式開示で確認したい。市場の文脈 ── なぜ今これが効くのか この買い増しが起きた相場の状況も押さえておく。
ETHは6月25日に2026年の安値(約1,537ドル)を付けた。BTCも5万9,000ドルを割り込み、暗号資産全体が売られた 下落のさなか、ステーブルコインのUSDT(テザー)の時価総額が一時ETHを上回った(約1,860億ドル対1,850億ドル)。
ETHがいかに売られたかを示す象徴的な場面だった ETHの現物ETFへの資金流入は一定せず安定していない。だからこそ、企業による買い(コーポレート・ビッド)が需要のサインとして相対的に重みを増している SharpLinkは本日(6月29日・月曜)、米国株の代表的な株価指数であるRussell 2000とRussell 3000に新規採用される見込みだ。
指数採用は関連ファンドの組み入れ需要につながりうる 要するに、相場が弱く、ETFの買いも細い局面で、企業が逆張りで積み増した。これが「企業保有はBTCだけではない」というテーマを、価格の弱さとは別の軸で前進させている。
次に見る情報(確認チェックリスト) 追加購入の有無と金額(積み増しが続くか、一時的か) 保管先(カストディ)はどこか、ステーキングの比率と扱い 平均取得単価と現在価格の差(含み損の推移) 本日のRussell指数採用が株価・需給に与える影響 ETH現物ETFの資金流入が回復するか
含み損の会計上の開示(オンチェーン推計でなく、会社の正式な数字) 数字を見るときは母数・期間・対象範囲・出所が明示されているか
まとめ
SharpLinkの3日間のETH買い増しは、横に広げるより一つの材料を深く読む価値がある。整理すると、3日で約39,196 ETH(約6,240万ドル、うち6月27日が29,196 ETH=約4,670万ドル)を、2026年の安値圏で取得した。
同社はETH保有量で公開企業2位だが、平均取得単価が現在価格を大きく上回り、含み損は約17.9億ドルと推計される。持ち帰るべきは「企業がETHを買った」で終わらせないことだ。なぜBTCでなくETHか(ステーキングの利回り)、なぜ含み損でも買うか(戦略的配分とルールに基づく逆張り)、何がリスクか(時価評価による損益の振れとIR)。
企業の暗号資産保有は、価格だけでなく、利回り・会計・保管まで含むテーマへ広がっている。#ETH
確認したいポイント
- 記事中の数値や報道ベースの材料は、公式発表、一次情報、取引所や事業者の告知で確認する。
- ETF、ステーブルコイン、税制、規制関連は、施行日、対象範囲、提供事業者の対応時期を分けて見る。
- 取引やウォレット接続を行う前に、URL、手数料、対応チェーン、利用条件、リスク説明を確認する。
本記事は情報整理を目的としたものであり、特定の暗号資産や金融商品の売買を推奨するものではありません。
出典: @LaboNft のX記事





