2022年8月、サムスン電子は折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold4」「Galaxy Z Flip4」の韓国での予約購入者に、特典として「New Galaxy NFT」を配りました。ブロックチェーン企業のTheta Labsと組み、このNFTを持っている人が提携する店舗で割引や引換券を受けられるようにした点が特徴です。
旧版の記事は「南アフリカのオーナーが特典を受けられる」と書いていましたが、各社の報道で対象とされているのは韓国の購入者です。この記事では事実関係を確かめ直し、スマートフォンのメーカーがNFTを配った狙い、特典の使い方、その後の動き、そして同じような特典型NFTを受け取るときに見ておきたい点をまとめます。
何が起きたか:折りたたみGalaxyの予約特典にNFT
サムスンは2022年8月10日の新製品発表イベント「Galaxy Unpacked」で、Galaxy Z Fold4とGalaxy Z Flip4を発表しました。発表の直前、8月8日から9日にかけて、韓国向けの予約特典にNFTが含まれることが海外メディアで報じられています。
SamMobileやTechSpotの報道によると、予約者が受け取るNFTは提携先の店舗で認証すると、その人専用の割引コードのように使えるものでした。サムスンは韓国の複数の企業と覚書(MOU)を結び、NFTの保有者が割引や優待を受けられるようにしたと説明しています。
同じ名前の「New Galaxy NFT」は、2022年2月にもGalaxy S22シリーズとGalaxy Tab S8シリーズの韓国での予約特典として配られていました。8月の配布はその第2弾で、今回は記念品としてだけでなく、実店舗で使える特典が付いたことが新しい点です。
なお米国向けの予約特典はNFTではなく、最大200ドル分のSamsung Creditなどでした。NFTを使った特典は韓国市場に限った取り組みだったことになります。
Theta Labsの「ThetaPass」でオフラインの店舗と結びつける
技術面を担ったのは、動画配信向けのブロックチェーン「Theta Network」を開発する米国のTheta Labsです。決済・金融ニュースサイトのThe Paypersによると、両社はThetaの「ThetaPass」という仕組みを使い、NFTをオンラインだけでなく店舗でも使えるようにしました。
利用者は認証用のアプリを入れ、店頭でスマートフォンをかざしてNFTを持っていることを確かめてもらいます。対象として挙げられたのは次のような韓国の事業者です。
- 新羅免税店(The Shilla Duty Free):買い物に使えるクレジット
- ゴルフ練習場チェーンのShow Golf:打席の利用
- カーシェアのe-Cruise:乗車の引換券
- Galaxy Storeやサムスンの販売網:ギフトカードや端末購入時の引換券
- NFC関連の技術を提供するAlllink
報道によって店舗名の表記に揺れがあり、Show Golfを「Show Gold」と書いた記事もあります。The Paypersはこの取り組みを約10万人のNFT保有者を対象にした「世界最大規模のオフラインNFT特典キャンペーン」と紹介していますが、これはTheta側の説明に基づく表現で、第三者が規模を比べた数字ではありません。
なぜメーカーがNFTを配ったのか
2022年前半は、世界の大手ブランドがNFTに相次いで参入した時期です。ただ、多くのブランドNFTは「持っていることを示す記念品」にとどまり、買った後に何ができるのかがはっきりしないという批判もありました。
サムスンの取り組みは、NFTを本人に結びついた引換証として使う発想です。紙のクーポンや番号式のコードと違い、NFTはウォレットに入っているかどうかで保有者を確かめられます。提携店にとっては、新しいGalaxyを予約した比較的購買意欲の高い層に、確実に特典を届けられる利点があります。
メーカーの側から見れば、端末の販売と自社のデジタルサービスを結びつける狙いもあったと考えられます。サムスンは2022年1月のCESでテレビ向けにNFTを閲覧・購入できる機能を打ち出しており、スマートフォンでもNFTを身近な機能として見せようとしていました。
一方で、この時期の暗号資産市場は5月のTerra(LUNA)崩壊などで大きく下げており、NFTの取引も春の水準から縮んでいました。値上がりを期待させるのではなく、日常の買い物で使える特典として打ち出したのは、こうした相場の冷え込みとも無関係ではなかったはずです。
その後どうなったか
2022年8月の配布以降、サムスンが同じ形の「New Galaxy NFT」を新しい端末の予約特典として続けたかどうかについて、公式の発表や主要な報道は確認できませんでした。店舗での特典がいつまで使えたのか、どれだけ利用されたのかといった結果の数字も公表されていないようです。
NFTの市場全体はこの後、長い縮小局面に入りました。crypto.newsが2026年6月に伝えたところでは、NFTの年間取引高は2022年の500億ドル超をピークに、2025年には約55億ドルまで減っています。同じ記事は、バイナンスが2026年7月3日で取引所内のNFTマーケットプレイスを閉じ、自己管理型のBinance Walletに移したことも報じました。コインベースやクラーケンもそれ以前にNFTの販売所を閉じています。
こうした流れの中で、大手企業がNFTを「特典の器」として使う取り組みの多くは、期間限定のキャンペーンとして終わりました。サムスンの例も、技術的にはNFTを実店舗の割引と結びつけられることを示した一方で、それが定番の販促手段として定着したことを示す材料は見当たりません。
読者が知っておくべきこと:特典型NFTの見方
メーカーや店舗が配るNFTは、暗号資産のように値上がりを期待するものではなく、発行者が用意した特典を受けるための鍵です。受け取る前後に、次の点を確かめておくと安心です。
- 特典の中身と期限:何に使えて、いつまで有効か。キャンペーンが終わると、NFT自体は残っても特典は受けられなくなります。
- 譲渡できるかどうか:他人に送れるNFTでも、特典は最初の受取人に限る場合があります。売買を前提に考えないほうがよいでしょう。
- どのウォレットに入るか:メーカーのアプリの中で管理されるのか、自分で管理するウォレットに入るのかで、失ったときの復旧方法が変わります。
- 偽の配布に注意:「無料NFTを受け取れる」と書いたメールやSNSの案内から、偽サイトでウォレットをつながせる手口があります。受け取り手続きは必ず公式アプリや公式サイトから始めてください。
NFTの仕組みから確かめたい方は初心者向けのNFT解説を、偽の配布がどう仕掛けられるかはNFT詐欺の4類型を読んでみてください。
日本の読者にとっての意味
今回のGalaxyのNFT特典は韓国で予約した人が対象で、日本で端末を予約しても受け取れるものではありませんでした。提携先も韓国の店舗です。
日本では、決済手段として不特定の相手に使えないNFTは、一般に資金決済法上の暗号資産には当たらないと整理されています。企業が販促のために配る特典型のNFTは多くがこの類型で、受け取った人が特別な登録や手続きをする必要はありません。ただし、NFTを売って利益が出た場合は課税の対象になり得ます。区分ごとの考え方はNFTの課税区分の解説にまとめています。
スマートフォンとブロックチェーンを結びつける試みとしては、ソラナの開発元が手がけたWeb3向け端末のように、ウォレット機能そのものを売りにした製品も出ています。関心がある方はSolana MobileのSeekerの記事も合わせてどうぞ。
よくある質問
Q. New Galaxy NFTは日本でも配られましたか?
A. 報道で確認できる配布先は韓国の予約購入者です。米国の予約特典はSamsung Creditなどで、日本での配布は確認できませんでした。
Q. NFTでどんな特典が受けられたのですか?
A. The Paypersによると、新羅免税店での買い物クレジット、ゴルフ練習場の利用、カーシェアの乗車券、Galaxy Storeのギフトカードなどです。店頭でスマートフォンをかざしてNFTの保有を確かめる仕組みでした。
Q. Theta Labsとはどんな会社ですか?
A. 動画の配信や共有に向けたブロックチェーン「Theta Network」を開発する米国の企業です。サムスンとは2022年2月のGalaxy S22の予約特典NFTでも組んでいました。
Q. 企業が配る無料NFTは受け取っても大丈夫ですか?
A. 公式アプリや公式サイトから受け取るものであれば、通常は問題ありません。一方で、メールやSNSのリンクから「無料NFT」をうたう偽サイトに誘導し、ウォレットの操作を承認させる手口があるため、入口が公式かどうかを必ず確かめてください。
この記事の出典
- SamMobile:Samsung Galaxy Z Fold 4 and Z Flip 4 pre-order customers get NFTs
- TechSpot:Samsung is offering NFTs to customers who pre-order a Galaxy Z Fold 4 or Z Flip 4
- The Paypers:Theta joins Samsung to launch offline NFT campaign
- crypto.news:Binance shuts down NFT marketplace amid prolonged market downturn
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




