2022年7月11日、暗号資産の取引所などを運営していた米国のCrossTower(クロスタワー)は、Rippleと提携し、XRP Ledger(XRPL)で発行されたNFTを自社のNFTマーケットプレイスで扱うと発表しました。XRPLはRippleの関係者が開発に深く関わってきたブロックチェーンで、当時はNFTの機能を本番環境に入れる準備が進んでいた時期です。
旧版の記事はこの発表を紹介していましたが、翻訳の不自然な箇所や、その後の経過が抜けていました。この記事では発表の内容を確かめ直し、XRPLのNFT規格XLS-20の仕組みと、提携相手だったCrossTowerがその後どうなったかを、2026年時点の情報で補います。
2022年7月の発表内容
CrossTowerの発表によると、同社はXRPLで発行(ミント)されたNFTを自社のマーケットプレイスに加え、Rippleがブロックチェーン面の技術支援を行うという内容でした。NFTの発行に慣れていない企業やクリエイターでも、ウォレットや決済、流動性の支援といった基盤をそのまま使えるようにし、準備に何か月もかかっていた立ち上げを早めることを目指すとしていました。
ファンはクレジットカードでNFTを買え、ウォレットも組み込まれていると案内されています。マーケットプレイスにはすでに複数のプロジェクトが参加を決めており、XRPLでの最初の案件も続けて発表する予定だとされていました。
旧版の記事は「XRP Ledgerネットワーク上のキャスティングNFTをCrossTower NFT Business Hubに追加」と書いていましたが、これは英語の「minted(発行された)」を取り違えた訳です。正しくは「XRPLで発行されたNFTをCrossTowerのNFTマーケットプレイスで扱えるようにする」という意味です。
CrossTowerとはどんな会社だったか
CrossTowerは2019年に設立された米国の企業で、暗号資産の取引所とNFTの売買サービスを手がけていました。発表文では、米国、バミューダ、インドに拠点を持ち、同社の取引所はデータ会社CryptoCompareの評価で世界の上位10に入っていると紹介されています。2020年にはバミューダ金融庁から暗号資産取引所の免許も受けていました。
インドでは2021年9月に取引サービスを始めています。旧版の記事は、提携によってCEOのカピル・ラティ氏が関心を寄せていたインドへの進出の機会が広がると書いていました。発表のなかでラティ氏は、Rippleがインドで開発者のネットワークづくりに力を入れている点に触れ、自社もインドのブロックチェーン人材の育成に取り組むと述べています。
一方で、旧版の「世界有数のWeb3企業」という表現は発表文の宣伝的な言い回しに近いものでした。この記事では、確認できた事実だけを残しています。
XRP Ledgerの特徴
XRP Ledgerは、2012年から動いている公開型の分散台帳です。ビットコインのようなマイニングではなく、検証者(バリデーター)が取引の順序と結果に合意する仕組みで、取引は数秒で確定します。手数料はごく少額のXRPで、支払った手数料は誰かに渡るのではなく消滅します。公式サイトでは毎秒1,500件程度の取引を処理できると説明されています。
XRPLのもう一つの特徴は、多くの機能がスマートコントラクトではなく台帳そのものに組み込まれている点です。独自トークンの発行や分散型取引所(DEX)が最初から用意されており、NFTも同じように台帳の機能として追加されました。
旧版の記事は、XRPLがマイクロペイメントやDeFiのプロジェクトを「躍進させた」と書いていましたが、根拠が示されておらず、評価として強すぎるため削除しました。RippleとXRPの全体像はRippleとXRPの解説記事で詳しく扱っています。
NFT規格XLS-20の仕組み
XLS-20は、XRPLにNFTの機能を組み込むための仕様です。旧版の記事は2022年7月時点で「テストに成功した」と書いていましたが、当時は本番環境への導入に向けた準備段階でした。XRPLでは、新しい機能は「アメンドメント」と呼ばれる変更として提案され、検証者の多数が一定期間賛成して初めて有効になります。
最初の案(NonFungibleTokensV1)には不具合が見つかったため、修正を含めたNonFungibleTokensV1_1が改めて投票にかけられ、2022年10月31日に有効になりました。XRPL公式ブログによると、本番環境で最初のNFTが発行されてから短い期間に、3万点を超えるNFTが発行されています。
XLS-20では、NFTが売買されるたびに発行者が一定の割合を受け取れる「転送手数料」を発行時に設定できます。関連するNFTをまとめる分類番号(タクソン)、発行や販売を他者に任せる仕組み、NFTを焼却できるかどうかを決める設定なども用意されています。
XRPLでNFTを持つときのコストと注意点
XRPLでは、アカウントを使うために一定量のXRPを口座に置いておく「リザーブ」が必要です。XRPLの公式資料によると、2026年時点のメインネットでは基本リザーブが1XRP、台帳に置くオブジェクト1つごとの追加リザーブが0.2XRPです。NFTは最大32点ずつ「ページ」にまとめられ、追加リザーブはNFT1点ごとではなくページごとにかかります。
NFTの売買の申し込み(オファー)も1件ごとにリザーブの対象になります。オファーを出したまま放置すると、その分のXRPが使えない状態で残るため、不要になったオファーは取り消しておくのが基本です。
リザーブの額は、検証者の投票によって見直されることがあります。実際に使う前に、ウォレットや公式資料で最新の値を確かめてください。XRPLのNFTはイーサリアムのNFTとは別の仕組みなので、対応していないウォレットやマーケットプレイスでは扱えない点にも注意が必要です。
CrossTowerのその後
提携の発表から間もなく、暗号資産業界は大手企業の破綻が続く時期に入りました。CrossTowerは2022年11月、経営破綻したVoyager Digitalの資産の買収に名乗りを上げましたが、最終的にはBinance.USが落札しています。同じ11月には、プライムブローカー事業を手がけるBEQUANTの買収で合意したことも発表していました。
その後、2023年5月には指数算出会社Wilshire Indexesが、基準を満たさなかったとしてCrossTowerを価格算出の対象取引所から外しました。2024年1月19日には、バミューダの最高裁判所がCrossTower Bermudaの清算を命じています。報道によると、同社は期日どおりに債務を返済できない状態で、資産約21万5,000ドルに対し負債は約330万ドルでした。
同じ報道は、米国の親会社も米国で清算手続きに入っていると伝えています。2026年9月時点では、CrossTowerの公式サイトにも接続できませんでした。提携で予定されていたXRPLのNFT案件がどの程度実現したかは、確認できませんでした。
2026年時点のXRPLとNFT
CrossTowerは姿を消しましたが、XRPLのNFT機能そのものは使われ続けています。2025年6月11日には、発行後にNFTの情報を書き換えられる「DynamicNFT(XLS-46)」が有効になりました。発行時に書き換え可能の設定をしたNFTに限り、発行者などが新しい取引で参照先の情報を更新できる仕組みで、ゲームのアイテムやチケットなどへの応用が想定されています。
Rippleをめぐっては、XRPの販売が証券法に違反するとして米SECが2020年に起こした訴訟が長く続いていましたが、2025年8月に双方が控訴を取り下げ、裁判は終結しました。経緯はSECとRippleの控訴取り下げを伝えた記事にまとめています。
このように、基盤となるブロックチェーンの機能が続いても、その上でサービスを出していた企業が続くとは限りません。CrossTowerの例は、マーケットプレイスや取引所を選ぶときに、運営会社の財務や規制上の立場まで確かめる必要があることを示しています。
日本の読者が押さえておきたいこと
XRPは日本の暗号資産交換業者でも取り扱いがあり、国内で購入することができます。ただし、CrossTowerのNFTマーケットプレイスは日本向けに提供されていたサービスではなく、現在は利用できません。XRPLのNFTを扱うには、XRPLに対応したウォレットや海外のマーケットプレイスを使うことになるため、利用規約や日本からの利用の可否を事前に確認しましょう。
海外のサービスに資産を預ける場合、運営会社が破綻すると資産の返還に時間がかかったり、全額が戻らなかったりするおそれがあります。自分で鍵を管理するウォレットに移しておけば、運営会社の破綻の影響は受けにくくなりますが、その分、秘密鍵や復元用のフレーズを自分で守る責任が生じます。
税金の面では、XRPを使ってNFTを買ったときや、NFTを売って利益が出たときに所得税の申告が必要になる場合があります。取引ごとの日時や金額を記録しておき、判断に迷うときは税務署や税理士に相談してください。この記事は特定の暗号資産やNFTの購入を勧めるものではありません。
よくある質問
Q. CrossTowerとRippleの提携はいつ発表されたのですか?
A. 2022年7月11日です。CrossTowerがXRP Ledgerで発行されたNFTを自社のNFTマーケットプレイスで扱い、Rippleが技術面で支援するという内容でした。
Q. XRP LedgerでNFTが使えるようになったのはいつですか?
A. NFT規格XLS-20を実装したアメンドメント(NonFungibleTokensV1_1)が2022年10月31日に有効になり、本番環境でNFTを発行できるようになりました。
Q. CrossTowerは今も営業していますか?
A. 2024年1月にバミューダの子会社の清算が裁判所に命じられ、報道では米国の親会社も清算手続きに入ったと伝えられています。2026年9月時点で公式サイトにも接続できませんでした。
Q. XRPLのNFTを持つのに費用はかかりますか?
A. 取引ごとの少額の手数料に加え、口座に一定量のXRPを置いておくリザーブが必要です。NFTは最大32点ずつのページ単位でリザーブがかかります。額は変わることがあるので、公式資料で最新の値を確認してください。
この記事の出典
- CrossTower Partners with Ripple to support NFTs minted on the XRP Ledger | PR Newswire
- NFT Partner Spotlight: CrossTower | Ripple
- Non-Fungible Tokens Are Now Available | XRPL.org
- DynamicNFT is Now Available | XRPL.org
- Reserves | XRPL.org
- CrossTower Bermuda is latest crypto casualty | The Royal Gazette
- Binance, other crypto firms line up bids for bankrupt Voyager Digital after FTX collapse | CNBC
- Wilshire Indexes demotes eToroX, Crosstower and OKCoin as contributing exchanges | Wilshire
- SEC and Ripple End Five-Year XRP Lawsuit With Joint Appeal Dismissal | The Defiant
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




