2022年夏のNFTの傾向を振り返る|有名人NFTとPlay and Earnのその後

旧版の記事は2022年7月、暗号資産の相場が下がるなかでもNFTへの関心は続いているとして、有名人のNFT参入とブロックチェーンゲームの広がりを「NFTの傾向」として紹介していました。当時は、スポーツ選手や歌手が自分のNFTを出し、遊んで報酬を得るゲームが注目を集めていた時期です。

この記事では、旧版で名前が挙がった事例を一次情報や主要報道で確かめ直し、その後の市場の動きを加えました。2022年夏の傾向が2026年までにどう変わったのかを知ることは、これからNFTやゲームに関わる人がリスクを見きわめるうえで役に立ちます。

2022年7月時点の市場の空気

2022年は、NFTの取引が最も膨らんだ年でした。DappRadarの年次集計では、2022年のNFT取引高は572億ドル、取引件数は1億2,170万件にのぼっています。ただし年の後半に向けて相場は冷え込み、5月のテラ(LUNA)の崩壊や6月以降の暗号資産貸付業者の破綻が続いたことで、市場全体に慎重な空気が広がっていました。

旧版の記事が書かれた7月は、ちょうどその転換期にあたります。価格は下がっていても、有名人や大手企業のNFT参入の発表は続いており、「NFTはまだ伸びている」という見方と「バブルが終わった」という見方が入り混じっていました。

こうした時期の記事を読み返すときは、当時の熱気をそのまま受け取らず、その後の数字と照らし合わせることが大切です。以下では、旧版が取り上げた二つの傾向を順に確認します。

傾向1:有名人のNFT参入

旧版は、マイケル・ジョーダン氏、ジャスティン・ビーバー氏、マドンナ氏の名前を挙げていました。確認すると、それぞれ関わり方が異なります。ジョーダン氏は息子らと立ち上げたHEIRというプラットフォームから、2022年3月にSolana上のNFT「6 Rings」を発売しました。当初は1万10点を予定していましたが、販売ペースが想定より遅く、5,005点に減らしたと報じられています。

マドンナ氏は2022年5月、デジタルアーティストのBeeple氏と組んだ3点組みのNFT作品「Mother of Creation」をSuperRareで発表し、売上は女性と子どもを支援する3つの団体に寄付されました。旧版は「自身のイメージからインスピレーションを得てコレクションを発表」と書いていましたが、実際は他のアーティストとの共作です。

ビーバー氏は自分でNFTを出したのではなく、2022年1月に、猿のイラストで知られるBAYC(Bored Ape Yacht Club)の1点を500ETH(当時約130万ドル)で購入したことが話題になりました。旧版は3人をまとめて「コレクションを発表」したように読める書き方でしたが、発行した人と買った人は分けて考える必要があります。

有名人NFTのその後

有名人が関わったNFTも、2022年後半からの相場下落の影響を強く受けました。ビーバー氏が購入したBAYCのNFTについては、その後の価値が購入額を大きく下回ったことが繰り返し報じられています。BAYC全体の最低価格も2022年4月の高値から長期間下落しました。BAYCが注目された経緯はBAYCの躍進を分析した記事でも取り上げています。

この経緯からわかるのは、有名人が関わったことは話題づくりには役立っても、価格を支える保証にはならないという点です。発行元が特典や活動を続けているか、実際の取引がどれだけあるかのほうが、コレクションの状態を知る手がかりになります。

なお、有名人の名前や画像を無断で使った偽のNFTや、有名人を装った勧誘も繰り返し問題になりました。購入する前に、公式サイトや本人の公式アカウントから発行元を確かめることが基本です。

傾向2:遊んで稼ぐゲームの流行

旧版がもう一つの傾向として挙げたのが、ブロックチェーンを使ったゲーム(GameFi)です。ゲームで得たアイテムやトークンを売れる「Play to Earn(遊んで稼ぐ)」の考え方は、2021年にAxie Infinityの人気で一気に広がりました。遊ぶ前にNFTのキャラクターを買う必要があるため、NFTを貸し出して報酬を分け合う「スカラーシップ」という仕組みも生まれました。

2022年になると、NFTを買わなくても無料で遊べ、稼ぎたい人だけがNFTを買う「Play and Earn」や「Free to Play」を掲げるゲームが増えました。旧版が紹介したBeaRexも、この路線のゲームです。

旧版は、NFTを買って「好きなだけお金をかけてプレイ」すれば「努力に見合った報酬」が得られるという書き方をしていましたが、報酬の価値はトークンの市場価格に左右され、元本が保証されるわけではありません。この記事ではその点を補って説明します。

旧版で紹介したBeaRexとは

BeaRexは、NFTのクマのキャラクターを操作してベリーを集め、恐竜から逃げる2Dの横スクロール型ゲームとして紹介されていました。ただ遊ぶだけのモードと、NFTのクマを買って報酬を得るモードを切り替えられる点が特徴で、2022年6月にはInstagramのARエフェクトを使った遊び方も発表しています。

クマのNFTをほかのプレイヤーに貸してレベルをクリアしてもらい、トークンの一部を受け取る仕組みも説明されていました。旧版はこれを「受動的に収入を得ることができる」と紹介していましたが、受け取るのはゲーム内のトークンで、その価値は市場の需給で変わります。

旧版はBeaRexを「ブロックチェーンを利用した初の『Play and Earn』Web3.0」と書いていましたが、同じ考え方を掲げたゲームはほかにもあり、「初」と言い切れる根拠は確認できませんでした。2026年時点での運営状況やトークンの取引状況も、信頼できる情報で確かめることはできませんでした。

Play to Earnのその後

遊んで稼ぐモデルは、2022年のうちに大きく失速しました。Axie Infinityでは、報酬として配られるトークンSLPが大量に発行される一方で使われる量が追いつかず、価格が急落しました。Axiosは2022年4月、SLPの価格が高値から大きく下がり、プレイヤーの収入が細ったことを伝えています。

さらに2022年3月には、Axie Infinityが使うRoninネットワークで、別のチェーンとの間で資産を移すブリッジが攻撃され、ETHとUSDCあわせて約6億2,500万ドル分が流出しました。CoinDeskなどが報じたこの事件は、当時として過去最大級の暗号資産の流出で、のちに米当局は北朝鮮と関係するハッカー集団の関与を指摘しています。

こうした経験から、その後のブロックチェーンゲームは「稼げること」よりも「遊んで面白いこと」を前に出す方向に変わっていきました。ゲームとしての品質が問われる流れは、GameFiの課題と今後を整理した記事でも詳しく扱っています。

2026年から見たNFT市場の数字

DappRadarの集計では、NFTの年間取引高は2022年の572億ドルから、2023年は168億ドル、2024年は137億ドルへと減りました。2024年の取引件数は4,980万件で、2022年の半分以下です。同社は2024年を、取引高と件数の両方で2020年以降でもっとも低調な年の一つと位置づけています。

取引高が減った一方で、1件あたりの価格が下がり、安いNFTの取引件数が増える時期もありました。数字を見るときは、取引高(金額)と取引件数(回数)を分けて確認すると、市場の変化を読み違えにくくなります。

旧版は「NFTは依然として増加傾向」と書いていましたが、少なくとも取引高で見ると、2022年を頂点に縮小が続いたことになります。当時の見立てとその後の実績を並べると、短期的な話題だけで市場の方向を判断する危うさがよくわかります。

これからNFTやゲームに関わる人のチェックポイント

2022年夏の傾向を振り返ると、確認しておきたい点は大きく三つあります。一つ目は、発行元や開発元が継続して活動しているかです。公式サイトやSNSの更新が止まっていないか、開発の報告が出ているかを見ておきましょう。二つ目は、報酬として配られるトークンの発行量と使い道の設計で、配る量が使われる量を大きく上回ると価格が下がりやすくなります。

三つ目は、資産を預ける仕組みの安全性です。ブリッジやウォレットへの攻撃は、ゲームの人気とは関係なく起こります。大きな金額を一か所に置かない、公式が案内する以外のリンクからウォレットを接続しないといった基本を守ることが大切です。

日本に住む人がゲームで得たトークンやNFTを売って利益が出た場合、原則として所得税の対象となり、雑所得などに区分されます。この記事は特定のゲームやNFTへの参加を勧めるものではなく、実際に関わる場合は余裕資金の範囲にとどめ、記録を残しておくようにしてください。

よくある質問

Q. 2022年のNFTの取引高はどのくらいでしたか?

A. DappRadarの年次集計では、2022年のNFT取引高は572億ドル、取引件数は1億2,170万件でした。その後、2023年は168億ドル、2024年は137億ドルに減っています。

Q. Play to EarnとPlay and Earnの違いは何ですか?

A. Play to Earnは報酬を得ることを主な目的にしたゲームの考え方で、多くは遊ぶ前にNFTの購入が必要でした。Play and Earnは、無料で遊べることを前提に、稼ぎたい人だけがNFTを買う形を指すことが多い言葉です。

Q. 有名人が関わるNFTなら価値は下がりにくいのですか?

A. そうとは限りません。有名人が関わったNFTでも、2022年後半からの相場下落で大きく値下がりした例が報じられています。発行元の活動や取引の実態を確認することが大切です。

Q. 旧版で紹介されたBeaRexは今も遊べますか?

A. 2026年時点での運営状況は、信頼できる情報で確認できませんでした。遊ぶ前に公式サイトや公式SNSで最新の案内を確かめてください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。