HeartXのVote-to-Earnとは?2023年の展開と報酬設計

HeartXは2023年4月6日、アート作品への投票でHNXトークンを得るプレイベント「Vote-to-Earn」を発表しました。左右にスワイプして好みを示す仕組みで、NFTの売買に先立って、作品を見る人をコミュニティへ招く企画でした。

ただし、登録不要とされたプレイベント、4月19日に発表された招待制のクローズドベータ、6月12日に発表された公開ベータでは条件が異なります。ここでは各段階の発表と公開資料を照合し、2026年9月27日時点で実際の稼働まで確認できていない部分を分けて説明します。

HeartXが目指したアートコミュニティ

HeartXは、作品を作るアーティスト、集めるコレクター、鑑賞する利用者を結ぶNFTマーケットプレイスとして紹介されました。運営チームはDecent Arts Singapore Pte. Ltd.です。2023年3月20日の発表では、以前の名称がArteXだったことと、HeartXへ名称を変更したことが説明されています。

企画の中心は、作品への投票を集め、その結果をコミュニティ内の評価に反映させることでした。NFTを出品・購入する人だけでなく、まず作品を見て好みを表現する人も参加者とする設計です。作り手の作品が見られる機会と、鑑賞者が参加を続ける動機を、トークン報酬で結ぼうとしていました。

一方、投票で芸術の価値を再定義する、利益の機会を広げるといった説明は、運営側の理念や目標です。芸術作品に客観的な適正価格が付いたことや、参加者全員に利益が生じたことを証明する実績ではありません。今回参照したChainwire配信の文書も、運営側が発信したプレスリリースであり、第三者が収益性を検証した調査とは性格が異なります。

4月6日のプレイベントは登録不要の投票体験

4月6日の発表は、マーケットプレイスの本格展開に先立つゲームを案内したものです。イベント用サイトで日々のアート作品を表示し、右へスワイプまたはクリックすると「Like」、左へ進めると次の作品へ移る操作を紹介していました。このプレイベントについて、ログインや登録は不要と説明しています。

報酬として挙げられていたのはHNXです。ただし、作品の応援やプレミアム機能などへの利用は、マーケットプレイスの開始後に使えるようにするという説明でした。投票画面を体験できることと、将来予定されていた全機能をその場で使えることは同じではありません。

また、コミュニティの好みに合致する投票を多く積み重ねた利用者には、アプリのベータ体験へ参加する機会があるとされていました。「投票すれば誰でも無条件で本番サービスに入れる」と書かれていたわけではありません。元記事に混在していた「Vote to Win」という呼び方も、参照した発表の名称に合わせ、本記事ではVote-to-Earnに統一しています。

発表にはUniswapでHNXを取得できるとの記述もありましたが、これは2023年4月時点の運営側の案内です。現在の取引ペア、対応ネットワーク、流動性を確認した情報ではないため、本記事から購入先へ誘導する根拠にはしていません。

クローズドベータと公開ベータの変更点

2023年4月19日の発表では、アプリのクローズドベータを開始したとしています。この段階では、限られた招待コードを持つ人だけがコミュニティの会員登録を行い、投票に参加できると説明されました。4月6日のイベントサイトの「登録不要」という条件を、そのままアプリへ当てはめることはできません。

クローズドベータではNFTの取引機能を開放しないことも明記されています。HNXの用途として挙げたBoost-to-Earn、レベルアップ、アプリ内機能の購入は、当時は将来の利用先として紹介されていました。NFTマーケットプレイスという事業の名称と、テスト中に使える機能の範囲を分ける必要があります。

その後、6月12日の発表では、Ethereumのレイヤー2ネットワークであるzkSync Era上に展開し、アプリの公開ベータを開始したと説明しています。新たな機能として、取引に関わるCollectorと投票に関わるConnoisseurのレベル、作品を応援するBoost-to-Earn、作品の元の姿を見せる投票表示、投票結果のSNS共有が挙げられました。

この発表からは、プレイベントで構想を示した後、ベータ版の機能を増やしていった経緯を確認できます。ただし、本記事では各アプリの当時の画面や報酬受取を再現していません。発表された機能と、利用者全員について動作を検証した結果は区別しています。

HNXとHTXは同じ報酬ではない

現在閲覧できる「HeartX Whitepaper V0.9.2」は、HNXをサービス内で使うユーティリティトークン、HTXをガバナンストークンとして説明しています。HNXは投票への報酬として得る設計で、アカウントのレベルアップや作品のBoostなどで消費する用途が示されています。

HNXの供給量については上限なしと記載され、投票報酬プールや調整係数でインフレと価格変動へ対処する設計が説明されています。これは設計意図であって、価格が安定したという実績ではありません。また、同ページでは旧Ethereum上のコントラクト情報が取り消し線で示され、zkSync側の情報が掲載されています。古いリリースの銘柄名だけから、扱うトークンやネットワークを特定することはできません。

一方、HTXはコミュニティの権利やガバナンスに用いる設計で、資料上の総供給量は10億枚です。HNXをBurnして作品をBoostすることで、HTXを得る流れも説明されています。ここでのBurnはトークンを消費する処理であり、HNXを持ったまま無条件に別の報酬が増えるという話ではありません。

この資料のHTXはHeartX内のトークン名です。同じ文字列を使う取引所や別プロジェクトの資産と同一視できません。さらに、ホワイトペーパーのHTXコントラクト欄は「0x…」という未確定の表記のままでした。資料の供給計画を、実際の発行済み数量や現在売買できる資産の証拠に置き換えることは避けています。

作品への投票と市場価格は分けて考える

HeartXの特徴は、投票結果を集めて作品の評価や報酬へつなげようとした点にあります。公開ベータの発表では、作品をBoostした際のHTX報酬は、その作品のHeartX Indexに応じると説明しています。利用者の反応を指標にする仕組みと、NFTが実際に売買される価格は、別のものとして読む必要があります。

例えば、多くの人が作品を好きだと表明したとしても、その全員が同じ価格で購入するとは限りません。投票を通じて認知が広がること、NFTの取引が成立すること、保有者が売却益を得ることは、それぞれ違う結果です。今回の発表資料だけで、その間の因果関係や収益額までは確認できません。

報酬がある投票では、作品の好みと、報酬条件への対応が同じ行動に重なることも考えられます。したがって、プラットフォーム内の順位を、美術市場全体による評価や専門家の鑑定と同じものとして紹介することはできません。投票参加者の範囲、集計の方法、どの期間の指標かを確認して読むべき情報です。

トークンを受け取れる設計も、現金収入を保証しません。受取条件、消費用途、取引市場の有無が確認されて初めて、その時点で何に使えるかが分かります。「早く参加すれば利益が大きい」といった勧誘へ、当時の報酬説明を広げないことが大切です。

2026年に確認できた資料と未確認の運用状況

公式ホワイトペーパーは2026年9月27日に閲覧できました。そこには公開ベータ段階のため内容が今後変わる可能性があるとの注記があり、旧クローズドベータの説明や開発予定の表現も残っています。文書が公開されていることだけで、その内容がすべて現在の運用条件だとは判断できません。

一方、公式トップページからは現行の運営状況を判断できる本文を取得できませんでした。これを理由にサービス終了とは断定していませんが、現在の新規登録、投票、NFT売買、HNXやHTXの報酬受取が可能だという確認もできていません。日本からの利用条件や、現行アプリの配信状況についても、本記事で保証するものではありません。

このため、旧イベントURLを現在も有効な参加窓口として案内することは控えています。HeartXの2023年の取り組みは、アート鑑賞への参加とトークン設計を組み合わせた事例として記録できます。現在利用できるサービスとして評価するには、ホワイトペーパーの構想に加え、更新された利用条件と実際の提供状況が必要です。

よくある質問

Q. HeartXは登録せずに利用できるサービスですか。

A. 登録不要とされたのは2023年4月6日のプレイベントです。4月19日のアプリのクローズドベータでは招待コードと会員登録が必要とされており、現在の利用条件は確認できていません。

Q. HNXとHTXは何が違いますか。

A. HeartXの資料ではHNXは投票報酬や機能利用に関わるトークン、HTXはガバナンスに関わるトークンです。用途が異なり、別事業者が使う同名の記号とも区別が必要です。

Q. 現在も投票すれば利益を得られますか。

A. 現行の投票や報酬受取は確認できていません。2023年の発表も現金利益を保証するものではなく、トークンの受取と売却益は別です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。