Pantosのトークン作成ツールとは?2023年の発表とVSN統合

Pantosは2023年5月、複数のブロックチェーンに対応するトークンを設定・展開するWebアプリ「Multichain Token Creator」を発表しました。開発者が基本となるトークンを作り、必要に応じてコードを取得して独自機能を加えるためのツールです。

当時紹介された7チェーン対応はテストネットでの対応でした。また、関連トークンのPANは、その後BESTとともにVision(VSN)への統合対象になっています。2026年9月27日に確認した公開資料を基に、開発ツールの歴史と、現在のトークンに関する案内を分けて説明します。

Multichain Token Creatorが提供しようとしたもの

2023年5月17日付のPantosの発行者リリースは、Multichain Token Creatorの一般公開を案内しています。基盤となるのはPantos Digital Asset Standard、略称PANDASです。利用者がこの規格に基づくトークンを設定し、複数のブロックチェーンへ展開する作業を分かりやすくすることを目的としていました。

具体的には、基本的なトークンの設定とデプロイに加え、コントラクトコードをダウンロードし、開発者が独自の機能を追加できると説明されました。画面上で完結する基本操作と、コードを変更して行う開発の両方を想定した発表です。ボタン操作だけで、どのような要件のトークンでも完成するという意味ではありません。

当時のプロダクトエンジニアリング担当者は、開発の時間や複雑さを減らせると説明しています。ただし、こうした利点は提供側による評価です。今回の調査では、既存の方法と作業時間を比較する実験や、生成したコードの安全性検証までは行っていません。操作の簡略化と、個別プロジェクトに必要な設計・検証を切り分けて読む必要があります。

7チェーン対応は2023年のテストネットの範囲

発表で挙げられた対応先は、Ethereum、Polygon、Avalanche、BNB、Cronos、Celo、Fantomの7チェーンです。元記事の「Ether」はチェーン名としてEthereumに修正しています。より重要なのは、発行者の資料が、この一覧をテストネットでの対応として明記している点です。

テストネットは、コードや取引の流れを試すための環境です。そこでトークンを作成・転送できることと、実際の資産を扱うメインネットで同じ機能が一般提供されていることは同じではありません。2023年の対応表から、現在もその7ネットワークで本番利用できるとは案内できません。

また、発表では今後さらにEVM系・非EVM系のチェーンへ広げる計画も述べていました。これは当時の開発方針であり、あらゆるチェーンへの対応完了を示す記述ではありません。対応する実行環境、ネットワーク、トークン規格をそろえて確認しないと、同じ名称の資産を自由に送れると誤解するおそれがあります。

例えば、一つのチェーン上にトークンのコントラクトを置く作業と、別のチェーンへ移す際に残高や供給量をどう扱うかを決める作業は別です。マルチチェーンという呼び方だけでは、転送を検証する仕組み、利用するノード、処理に必要な条件までは分かりません。

研究プロジェクトと公開コードから分かること

Pantosは2018年にBitpandaの社内研究プロジェクトとして始まったと、2023年の発表で説明されています。同資料はウィーン工科大学との協力、その後のハンブルク工科大学との協力にも言及し、複数チェーン間のトークン転送と相互運用の標準を目指していたとしています。

2026年9月に確認したPantosのGitHub組織には、Ethereum互換チェーン向けコントラクト、サービスノード、バリデーターノードなどの公開リポジトリがあります。コントラクトのREADMEでは、ビルド、テスト、カバレッジ確認、ローカルのブロックチェーン環境を起動する手順が案内されています。研究上の構想だけでなく、実装を読むための公開資料が存在することは確認できます。

ただし、コードが公開されていることは、公開サービスの稼働や外部監査の合格を意味しません。ローカルで二つのノードを動かす開発手順も、メインネット間の送金を実行する案内ではありません。今回の記事ではリポジトリの説明を確認した範囲にとどめ、コード全体を監査した、あるいは動作テストに成功したとは扱っていません。

開発者にとっては、作成ツールの説明に加えて、依存ライブラリ、テスト、運用に使うノードの構成などを確認する資料になります。画面の使いやすさと、実装・運用の責任範囲を分けて考えることが、この発表を技術情報として読む際の要点です。

EDCONでの紹介は発表時点では予定だった

2023年5月17日のリリースでは、同月19〜23日にモンテネグロで開催されるEDCONでToken Creatorを紹介すると予告していました。会議全体の期間とは別に、Super Demoの期間は5月19〜22日と記載されています。ツールに加えてPANDASも紹介する計画でした。

この資料が示すのは、イベントに向けた告知です。今回確認した範囲では、当日のデモの実施内容や参加者の利用結果を裏付ける開催報告までは取得していません。そのため「会場で性能を実証した」「実際の採用が広がった」といった実績へ書き換えていません。

同じ理由で、将来のチェーン追加やコミュニティ拡大への期待も、実際の導入数や利用者数とは分けています。マルチチェーン対応を開発しやすくすることが発表の主題であり、イベントへの登場や開発元の評価が、作成されるトークンの市場価値を裏付けるものではありません。

PANは2025年にVisionへの統合対象となった

後続の大きな変化はトークン統合です。Bitpandaの公式ヘルプは、Vision(VSN)がBESTとPantosのPANを統合して生まれたトークンで、2025年7月16日に正式に開始したと説明しています。同日以降、Bitpanda上ではBESTとPANの売買を行えないことも明記されています。

公式の交換比率は1 PANに対して0.89 VSN、1 BESTに対して4.91 VSNです。これは統合時の数量換算の条件であって、将来の市場価格や利益を保証する比率ではありません。PANを使った技術開発の紹介記事と、Bitpanda上の保有資産の取り扱いを混同しないことが重要です。

ヘルプには、Bitpandaに残る対象残高を2026年7月16日に自動転換するとの記述もあります。ただし、調査時点でも未来形の案内が残っており、このページだけでは各利用者の転換完了を確認できません。期限前に可能だった操作を現在も可能と案内したり、外部ウォレットのPANまで一律に自動転換済みと扱ったりすることは避けています。

本記事が確認したのは公式に示された統合と取引停止の情報です。個別口座の残高、実際に受領したVSN、外部保管分の現行手順については検証していません。過去のPAN価格を現在の購入判断へ使う記事にもしていません。

古い価格・供給量より先に確認すべき情報

元記事にはPANの総供給量を1億枚とする記述と、それを大きく上回る流通量のような数字が併記されていました。この二つを同じ時点・同じ定義の数量として読むことはできません。発行量、流通量、テスト用トークンの数量などの根拠をそろえられないため、本記事ではその数値を採用していません。

当時の価格、24時間の取引量、騰落率についても、価格の取得時刻や集計条件が十分に示されていませんでした。現在値としての再掲はもちろん、曖昧な供給量と掛け合わせた時価総額の計算にも使えません。技術ツールの機能を理解するために、そうした価格情報は必須ではありません。

現在の利用可否を調べるなら、2023年のToken Creator、PANDASの実装、PANの取り扱い、VSNのサービスを別々に確認する必要があります。トークンが統合されたという事実だけで、旧作成ツールのすべての機能がVSNへ同じ形で移ったと結論することはできません。

今回の確認では、旧Token Creatorの現行画面でのトークン作成・転送や、現在のメインネット対応までは検証できませんでした。2023年の発表は、複数チェーン向けのトークン開発を簡単にしようとした取り組みの記録です。現在使える製品の導入手順として読む際には、最新の提供範囲を改めて確認する必要があります。

よくある質問

Q. 2023年の7チェーン対応はメインネット対応ですか。

A. 発表資料が明記しているのはテストネットでの対応です。現在の本番環境で同じ機能を使えることまで確認した内容ではありません。

Q. PANは今もBitpandaで売買できますか。

A. 公式ヘルプでは2025年7月16日にPANの取引を停止し、VSNへの統合を案内しています。古いPANの購入案内は現在の条件として使えません。

Q. Token Creatorの公開で作ったトークンの安全や価値が保証されますか。

A. 保証されません。設定やコード生成を助ける機能と、独自コードの検証、運用条件、市場での価値は別に考える必要があります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。