【要約】
・AIージェント経済(AIエージェント同士によるサービスのやりとり)という新たな潮流が注目を集めている
・Layer2プロジェクトのMetisが「All in AI」構想を打ち出し、独自のAI特化チェーンHyperionを発表
・REI Networkは2025年に向けたロードマップを公開し、超高速出块やAI統合、免Gas体験などを推進
・「マーケットプレイス」型のAIージェント経済が実現すると、信頼性と報酬メカニズムを担保するために暗号資産が不可欠になるという議論が台頭
なぜ今「AIージェント経済」が注目されるのか
近年、AI技術の高度化とともに、人間が行う作業を代替・補完する「AIエージェント(AIージェント)」の登場が急速に進んでいます。これまでは人間の“目”を前提とした広告モデルなどが主流でしたが、AIージェントが自動的にサービスを探索・実行する時代になると、従来の広告依存型ビジネスは持続しにくい可能性があります。代わりに「提供されたサービスに対して直接支払いが行われる」仕組み――すなわちAIージェント経済が浮上してきました。
こうしたAIージェント同士の相互やりとりには信頼を担保する仕組みが不可欠です。膨大な数のージェントが複雑に連携する「マーケットプレイス」型の世界では、中央集権的な管理だけでは不正リスクやコストが増大する懸念があります。そこで脚光を浴びているのが暗号資産のスマートコントラクトやゼロ知識証明などの技術です。これらを駆使すれば、サービスが完了した段階で自動的に支払いを行う「原子性」が確保しやすくなり、データの正当性も暗号レベルで検証可能になります。
Metisの「All in AI」戦略とHyperionチェーン
1. Layer2の現状とMetisの狙い
「Layer2はTPS競争だけではもう限界なのではないか」という声が聞こえる中、MetisはAIージェント経済への本格シフトを表明しました。既存のAndromedaチェーンを維持しつつ、新たにAI特化のHyperionチェーンを追加することで、汎用性と専門性の両立を図るのが特徴です。
多くのLayer2プロジェクトは「手数料が安い・速度が速い」という切り口に注力するあまり、差別化が難しくなっています。一方Metisは、AIがブロックチェーン上で稼働するうえで最適な執行環境を提供し、AIージェント経済のインフラとなることをビジョンに掲げています。
2. Hyperionチェーンの要点
- MetisVM:AI推論に特化したバーチャルマシンで、並列処理を強化しEVMよりも30%高いパフォーマンスを実現
- MetisDB:内存(メモリ)マッピング型のMerkle木と高並列アクセスに対応することで、ナノ秒レベルの読み込み速度を追求
- MetisSDK:AI開発者がブロックチェーンの仕組みを意識せずにアプリを構築できるよう、モジュール化されたツールキットを提供
また、AI推論時の計算リソースやデータアクセスに応じた報酬体系をMETISトークンに組み込み、持続可能なトークノミクスを実現しようとしています。
REI Networkの2025年ロードマップ
1. 高速化とAI統合
REI Networkは、1.5秒出块を目指す高速化とAI Agentの基盤づくりを掲げています。具体的には以下のステップを明示しました。
- ネットワーク構造の最適化:低効率ノードを排除し、P2Pレイテンシを削減
- 1.5秒出块の実装:テストネットで検証後、本番ネットワークに導入
- AI基盤の整備:AI Agentを一括管理するREI MCPプロトコルやMarketplaceの提供
2. 免Gas体験とステーク報酬
REI Networkのもう一つの大きなテーマは、免Gas体験によるユーザー獲得とステーク報酬によるコミュニティ強化です。
- 免Gas Swap:一定期間、安定コインによる支払いとセットでGasを免除するキャンペーンを実施
- Stake to Earn:REIトークンをステーク(質押)することで空投やGas返還を受けられる仕組みを構築
これらはAI関連のトランザクションを含め、より多くのユーザー・開発者が参加しやすいエコシステムを生む土台となります。
「マーケットプレイス」vs「大聖堂」:AIエージェント経済における暗号通貨の必然性
1. マーケットプレイス型の利点と課題
マーケットプレイスとは、数多くの独立したAIエージェントが互いのサービスを売買し合う分散型の経済圏です。専門特化の小規模エージェントが長いバリューチェーンを形成することで、多様なニーズに応える柔軟性を持ちます。しかし、各エージェントが信頼できるかどうかを中央機関だけで管理するのは困難です。
2. 支払いと検証の原子性
そこで注目されるのが暗号資産やスマートコントラクトの活用です。AIエージェントがタスクを完了した証明を暗号技術で示した場合にのみ支払いが実行される――この「原子性」を実現することで、不特定多数が集まるマーケットプレイスでもAIエージェント経済を安全に運用できます。従来のように「事後検証」や「ブランド信頼」に依存しなくても、経済インセンティブと暗号技術でエージェント同士の協調を促せるからです。
ニュースの解説
MetisやREI Networkが示すAI路線は、単なる「TPS向上」や「低Gas」の延長ではなく、次の産業モデル=AIエージェント経済を取り込む意欲的な試みといえます。高速化・免Gas体験・AI特化VMなどのアップデートを矢継ぎ早に打ち出す背景には、これからのWeb3が「AIエージェント×分散型経済」によってどれだけスケール可能かを示す競争が激化している状況があります。
実際、多くのプロジェクトは「大聖堂」型のプラットフォームを目指して強固な独自エコシステムを構築しようとします。一方で、MetisやREI Networkはマーケットプレイス的アプローチを志向し、多様な開発者とユーザーのコラボレーションによって新たな市場を切り拓こうとしている点が特徴的です。
そして、このマーケットプレイス型モデルを支えるカギが暗号資産による「信頼と報酬の原子性」です。今後、AIージェント経済が成熟するほどに、こうしたLayer2やブロックチェーンが果たす役割はますます増していくでしょう。