2023年4月、ドナルド・トランプ氏のニューヨーク州での起訴に注目が集まるなか、同氏を描いたNFT「Trump Digital Trading Cards」の取引が増えたと報じられました。当サイトの4月7日付記事も売上や取引件数の上昇を紹介しましたが、集計の開始・終了時刻が示されていませんでした。
出来事が話題になったことと、保有するカードが継続して値上がりすることは別です。この記事では当時のニュースを記録として振り返り、売買指標の意味と、2026年9月27日の資料確認で分かった裁判の経過を整理します。過去の数値を現在の相場として案内するものではありません。
2023年4月のニュースで問われていたこと
マンハッタン地区検察の2023年4月4日発表によると、起訴の対象は第一級の業務記録虚偽記載34件でした。旧記事の「ビジネス詐欺」という大まかな表現では、どの行為が罪に問われたかが伝わりにくくなります。また、私生活上の関係そのものが34件の罪状だったわけでもありません。
検察が当時示したのは、支払いの目的を隠すため記録を偽ったという主張です。起訴は刑事手続きの段階であり、その時点で有罪が決まったという意味ではありません。事件を説明するときには、検察の主張、被告側の立場、裁判で示された判断を日付とともに区別する必要があります。
この事件の報道とNFT取引の増加が同時期だったとしても、それだけで購入者全員の動機は分かりません。支持する気持ち、収集の関心、短期売買への期待などは、取引記録の数字だけでは識別できないためです。値動きを政治的な支持率の代わりに読むこともできません。
対象は初代のデジタルトレーディングカード
販売元の公式FAQは、Series 1が2022年12月に登場し、4万5,000枚を発行、そのうち4万4,000枚を公式サイトで販売対象にしたと説明しています。「発行した数」と「一般に販売した数」は一致しません。旧記事の4万5,000枚という数字を使うなら、発行数であることを明示する必要があります。
同じ公式ページにはSeries 2やMugshot Editionなど、別の版についての案内もあります。トランプ氏を題材にしているからといって、すべてを一つのコレクションとして集計すると、供給数や取引量を取り違えます。2023年4月の初代カードの記事に、後の版の購入特典や転売条件をそのまま当てはめることはできません。
カードを見る際には、商品名だけでなくシリーズ名、利用するチェーン、公式案内が示す対象を照合します。見た目が似た画像や名前だけでは、同じ発行元の商品かどうかは判定できません。また、画像を保存できることと、NFTとして記録された保有状態を得ることは異なります。
「売上220%増」は条件が欠けた過去の記載
旧記事はCryptoSlamを出典名として、売上220%増、販売取引件数190%以上増、フロア価格0.47ETHなどを紹介していました。しかし、どの時刻の直近何時間を、その前のどの期間と比較したのかを記していません。これらは旧記事に載っていた値であり、今回、当時の同じ条件で再計算できた値ではありません。
CryptoSlamの該当コレクションの履歴ページには、売上額、取引件数、買い手、売り手などの区分があります。ただし今回取得できたページからは、旧記事の増加率に対応する履歴の実数を確認できませんでした。したがって、220%という値を検証済みの確定値として再掲したり、今も同じ勢いが続くと説明したりはしません。
一般に「220%増」は比較前の3.2倍を意味し、「220%になった」とは異なります。しかも比較元が小さければ、少数の取引でも増加率は大きくなります。率の見出しを読む際は、元の売上額と件数、集計期間が併記されているかを見ると、規模を誤解しにくくなります。
売上・件数・フロア価格は違うものを測る
売上額は、対象期間に成立した売買の金額を合計したものです。件数は取引の回数で、買い手の人数とは別の指標です。一人が複数回購入することもあるので、「取引が増えた」から「同じ割合で新しい保有者が増えた」とは言えません。高額な一件が売上額を押し上げる場合もあります。
フロア価格は、通常、対象市場に出されている売り注文のうち最も低い価格を指します。それは成立済みの平均価格でも、全保有者が直ちに売却できる価格でもありません。出品者が安い注文を取り下げただけで表示が変わる場合もあり、買い手が提示する価格や実際の成約と合わせて読む必要があります。
旧記事の「時価総額2万1,150ETH」は、0.47ETHに4万5,000枚を掛けた値と算術上は一致します。ただし、元記事には算出方法の説明がありません。この一致だけでデータ提供元の計算方法を断定はできず、全カードを売った場合の現金化可能額として読むこともできません。
ETH建てとドル建てにも違いがあります。NFTのETH価格が変わらなくても、ETH自体のドル価格が動けば換算額は変化します。旧記事の908ドルという表現には換算時刻がないため、現在のドル価格や円価格へ置き換えて過去の記録を上書きしないようにします。
裁判はその後、有罪評決と量刑へ進んだ
地区検察の2024年5月30日発表は、陪審が34件すべてについて有罪評決を出したことを報告しています。2023年の起訴と無罪主張だけを現在の記事として残すと、その後の手続きが読者に伝わりません。
さらにニューヨーク南部地区連邦地裁の2026年8月28日付文書は、2025年1月10日にunconditional dischargeの量刑が言い渡され、判決が記録されたと記載しています。同文書では、州の控訴審への控訴が係属中と説明されています。ここで確認できるのは、その文書の日付時点の経過です。
この連邦地裁文書自体の結論は、事件を連邦裁判所へ移すための再度の申立てを認めないというものです。州の有罪判決に対するあらゆる争いが終わったという判断と同一視はできません。刑事事件とは別に報じられる民事事件の判断も、混ぜずに読む必要があります。
古いニュースを現在の売買判断へ直結させない
この事例から分かるのは、有名人の大きなニュースと関連商品の取引動向が同時に注目されることがある、という点です。一方、特定の報道が価格変動の唯一の原因だったか、その後も需要が続いたかは別に検証する問いです。短い期間の増加率だけでは、長期の価値は測れません。
現在のカードを調べるなら、まず対象の版を決め、次に日付をそろえた取引額・件数・買い手数を見ます。売り注文の価格と成立価格を分け、通貨単位もそろえます。数字が大きく見えても、比較期間が違えば、別のニュース記事とそのまま順位付けすることはできません。
販売元はカードを収集して楽しむ品と位置付け、値上がりや購入額の維持を保証していません。公式サイトに残る過去の特典説明についても、別の版や終了した企画を現在利用できると解釈しないことが大切です。本記事では個別カードの現在の販売可否や特典の受け取りを実際に試してはいません。
よくある質問
Q. 売上増加は、カード価格が同じ割合で上がった意味ですか?
A. 違います。売上は期間中の取引金額の合計で、個々の成約価格や出品価格とは別です。高額取引や取引回数の増加でも変わります。
Q. 4万5,000枚が一般向けに販売されたのですか?
A. 公式FAQは、初代Series 1の発行数を4万5,000枚、公式サイトで販売対象にした数を4万4,000枚と区別しています。
Q. 2023年の裁判状況のままですか?
A. いいえ。2024年5月の有罪評決と2025年1月の量刑が確認できます。2026年8月28日付の連邦地裁資料では州控訴審への控訴が係属中とされています。
この記事の出典
- マンハッタン地区検察:2023年4月4日の起訴発表
- CollectTrumpCards:シリーズ別発行数とFAQ
- CryptoSlam:初代Trump Digital Trading Cards
- マンハッタン地区検察:2024年5月30日の評決発表
- ニューヨーク南部地区連邦地裁:2026年8月28日付判断
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




