Backpackは2023年10月31日、ドバイの仮想資産規制当局VARAから免許を取得した取引所「Backpack Exchange」の計画を発表しました。NFTウォレットやMad Ladsで知られる事業者が、資産を預かり売買を仲介する事業へ進む節目でした。
2026年9月27日に確認したVARAの公開登録でも、運営法人のTrek Labs Ltd FZEは有効な登録として掲載されています。ただし、免許がBackpackブランドの全機能や全世界の利用者を対象にするわけではありません。日本向けには借入・貸出の専用案内があり、海外取引所としての現物売買やデリバティブとは分けて確認する必要があります。
2023年の発表では現物取引からの開始を予定
当初の公式発表は、既存のBackpackとMad Ladsのコミュニティ向けに2023年11月から非公開ベータを始め、2024年第1四半期に一般公開する計画を示していました。ベータの対象は現物の暗号資産取引で、デリバティブや証拠金取引などは今後の機能拡張として記載されていました。
したがって、2023年時点で紹介された機能が、その日にすべての国で使えたという意味ではありません。同じ発表には、日本、カナダ、英国など一部の地域ではBackpack Exchangeを利用できないとの記載もありました。当時の予定を現在の口座開設案内として残すと、開始時期と地域制限の両方を誤って伝えてしまいます。
発表の主題は、NFTを扱うアプリの知名度をそのまま金融サービスの信用とすることではなく、取引所の運営主体と規制上の立場を明らかにした点にあります。旧記事にあったMad Labsという表記はMad Ladsが正しく、NFTコレクション、ウォレット、取引所という三つの対象を区別すると、この展開を理解しやすくなります。
VARAの公開登録で確認できる免許の範囲
VARAの一覧に載る法人名はTrek Labs Ltd FZE、ブランド名はBackpackです。免許番号はVL/23/07/001で、発行日は2023年10月30日と記載されています。取得を公表した10月31日と、登録に載る発行日は一日異なるため、それぞれの意味を明確にしておきます。今回の確認時点で状態はActive、認められた活動はExchange Servicesでした。
Backpackの免許説明は、UAEで提供できる内容を、即時決済を行う現物取引としています。一方、先物や証拠金取引はこのVARA免許に含まれず、UAEでは提供していないと明記しています。グローバルなサイトに商品が表示されていても、同じ法人が同じ免許で提供するとは限りません。
VARAの管轄も世界全体ではなく、ドバイのフリーゾーンなどを含む地域で、Dubai International Financial Centreは除かれます。また、同じ公開一覧でも、条件付きの予備承認であるIPAと本免許は別です。登録の有無だけを見るのではなく、法人名、活動区分、状態、日付まで照合することで、何が認められたのかが具体的になります。
Backpack WalletとExchangeでは資産の扱いが違う
Backpack Walletは利用者が鍵を管理するセルフカストディ型のウォレットとして提供されています。これに対してExchangeは、取引サービス側の残高や注文を使う仕組みです。アプリから両方にアクセスできても、資産の管理主体や、障害時に必要な手続きまで同一になるわけではありません。
2023年の発表自体も、VARA免許の対象はExchangeであり、Backpackのほかの仮想資産関連商品やサービスには及ばないと説明していました。ウォレットでNFTを保有すること、xNFTと呼ばれるアプリに結び付いた仕組みを使うこと、取引所へ資産を預けることは、それぞれ別の行為です。
たとえば、ウォレット内の資産を取引所側へ送った場合、画面では同じブランド名でも、出金条件や本人確認、利用できるネットワークが変わり得ます。逆に、取引所が免許を持つことから、接続先のすべての分散型アプリやNFT作品まで審査済みだと判断することもできません。ブランド名より、操作後に資産がどこにあり、誰との契約になるのかが判断の基準になります。
準備金証明とMPCは何を確認するための技術か
取引所の発表では、ゼロ知識証明を使う準備金証明と、資産保管のためのMPCが特徴に挙げられました。前者は利用者の残高などをむやみに公開せず、残高の集計について検証可能な証拠を示すためのものです。後者は鍵に関わる処理を複数者で分担する技術で、資産の裏付けを計算する準備金証明とは役割が異なります。
Backpackの検証に関わるOtterSecのPoRv2解説では、利用者残高の合計と取引所の負債の対応、各口座の純残高が負になっていないことなどを証明するとしています。ゼロ知識証明だけでは全利用者が集計に含まれたか保証できないため、Merkle treeによって自分の残高が対象に入っているかを確かめる仕組みも組み合わせています。
この説明から読み取れるのは、単に保有ウォレットの残高を見せるだけでは検証が完結しないという点です。対象となる資産と負債、基準時点、自分の残高の包含を確認して初めて数字の意味が分かります。公開された証明は透明性を高める材料ですが、将来の出金や事業継続を保証する保険ではありません。本記事では個人口座の残高証明や鍵の運用を実際に検査したわけではないため、仕組みの説明と安全性の認定を分けています。
日本向けの借入・貸出は取引所の全機能とは別
現在の公式ヘルプには「For Japanese Users」という借入・貸出専用の案内があります。一方、取引所の一般的なSupported Regionsページには日本を未対応とする記載も残っています。二つのページを合わせて読む必要があり、日本居住者が海外向けの現物売買や先物を一律に利用できるとの根拠にはできません。
日本向けの利用ルールで特に重要なのは、対象資産をサブアカウントへ入れた時点でBackpackへの貸付が始まり、自動貸付を任意にオフにできないことです。単に保管用の残高を置く感覚とは異なります。貸付には入金から72時間の満期があり、その間は出金と内部振替が制限されます。
さらに、同じサブアカウントへ同じ資産を追加すると、その資産全体の満期が最後の入金から72時間後へ再設定されます。担保を使って借り入れる場合は価格変動などによる清算リスクがあり、利率も固定ではありません。表示された利回りだけで判断せず、資産を貸す相手、出金できる時点、担保不足時の扱いを読んでから考えるべきサービスです。
日本の登録と海外の免許を別々に確認する
金融庁が公表する2026年9月1日現在の暗号資産交換業者一覧では、BackpackやTrek Labs Japanの名称は確認できませんでした。日本法人の公式ページは将来の国内展開について説明していますが、法人が存在することや業界団体への参加は、暗号資産交換業の登録を受けていることと同義ではありません。
この登録一覧の照合は、日本向けの借入・貸出を違法と断定するものではありません。売買、交換、貸借、ウォレット提供では取引の内容が異なるため、海外免許のニュースだけで国内のすべてのサービスを評価することはできません。日本での交換業登録の確認と、個別商品の契約・提供条件の確認を分けることが必要です。
Backpackの事例を読む際は、2023年の免許取得という出来事、現在のドバイでの許可範囲、日本向けに案内される商品という順番で整理すると混乱が減ります。規制対応や技術の説明は重要な判断材料ですが、NFTの価格上昇や預けた資産の利益を保証するものではありません。登録情報と商品条件は更新されるため、実際の利用前には該当法人と居住地域に合う最新の案内を確認してください。
よくある質問
Q. VARA免許はBackpack Walletにも適用されますか?
A. 2023年の公式発表は対象をBackpack Exchangeに限定し、ほかの商品・サービスには適用されないと説明しています。ウォレットやNFTの評価まで含む免許ではありません。
Q. ドバイの免許があれば先物も提供できますか?
A. Backpackの現行免許説明では現物取引が対象です。先物と証拠金取引はVARA免許の範囲外で、UAEでは提供しないと記載されています。
Q. 日本向けBorrow/Lendは自由に出金できる保管口座ですか?
A. 専用ルールでは対象資産の入金が自動貸付となり、72時間の満期が設定されます。同じ資産の追加入金による満期の再設定など、保管口座と異なる条件があります。
この記事の出典
- Backpack:取引所の開始計画とVARA免許取得(2023年10月31日)
- VARA:Public Register
- Backpack:VARA License Information
- OtterSec:PoRv2の技術解説
- Backpack:対応地域
- Backpack:日本向け借入・貸出の利用ルール
- Backpack:日本向け借入・貸出のリスク
- 金融庁:暗号資産交換業者登録一覧(2026年9月1日現在)
- Trek Labs Japan:会社案内
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




