Yuga LabsとMagic Edenは2023年11月、クリエイターへのロイヤリティを重視するEthereum向けNFTマーケットプレイスの計画を公表しました。当初は年内の開設を目指していましたが、実際の開始発表は2024年2月27日です。さらにMagic Edenは2026年3月9日、Ethereumを含むEVM系チェーンのマーケットプレイス対応を終了しました。
「8週間以内に立ち上げる」という当時の見出しは、現在のサービス案内には使えません。本記事では2026年9月27日を確認日として、協業の狙い、ロイヤリティの仕組み、その後の終了と旧利用者が確認すべき承認の問題をまとめます。
2023年の提携はクリエイターへの支払いが焦点
Yuga Labsが2023年11月4日に配信した発表では、Magic Edenと新しいEthereum市場を年内に立ち上げる方針が示されました。Yuga LabsはBAYC(Bored Ape Yacht Club)を生み出した企業で、NFTを継続して制作・運営する側から、二次流通時の収入を支える仕組みを求めていました。
発表の特徴は、クリエイターへのロイヤリティを尊重することを契約上の約束として位置づけた点です。これは、すべてのNFT売買に法律で同じ支払い義務が生じるという説明ではありません。発表文の「契約上の義務」を「法的に義務化された市場」とだけ訳すと、当事者間の取り決めと一般的な制度を混同してしまいます。
当時のYuga Labsは、今後の新規コレクションについて、この原則を守るマーケットプレイスとのみ協力する方針も示しました。既存のNFTがあらゆる取引先で同じ条件になるという保証ではなく、新作を展開する際の提携方針として読む必要があります。買い手にとっても、作品の価格だけでなく制作者への支払いが取引にどう組み込まれるかを意識させる発表でした。
実際の開設日は2024年2月27日
Magic Edenは2024年2月27日、Yuga Labsとの協業によるEthereumマーケットプレイスが稼働したと発表しました。2023年11月の年内開始という計画と、翌年2月の開始実績は別の出来事です。元記事にある「今後8週間」という相対的な期限を残すと、記事を読む日によって開設時期が動いて見えるため、ここでは年月日で区別しています。
開設時には、ロイヤリティを支持するプロジェクトの連携としてCreator’s Allianceも発表されました。参加者にはYuga Labs、RTFKT、Pudgy Penguins、Azukiなどが挙げられています。複数の制作側が販売先と協力し、手数料の安さだけではない市場の選び方を提示した取り組みでした。
また、当時は利用に応じたDiamondsや記念NFTの施策が案内されていました。これらは開設時のキャンペーンであり、現在も受け取れる特典として紹介するものではありません。過去の募集条件や参加実績は、2026年の利用可否や将来の金銭的価値を示しません。開始発表で説明された機能と、後の終了告知を一緒に読むことが大切です。
ロイヤリティの情報と支払いの強制は別の仕組み
NFTのロイヤリティは、対象となる売買が成立したとき、売買額に応じた金額を制作者など指定された受取先へ配分する仕組みです。ただし、ウォレット間の移動がすべて売買とは限りません。自分の別のウォレットへ移した場合や贈与した場合も含め、「所有者が変わるたび必ず収益が出る」と説明するのは不正確です。
EthereumのERC-2981は、売買価格を入力すると受取先とロイヤリティ額を取得できる共通のインターフェースを定めています。規格そのものが代金を送金したり、すべてのマーケットプレイスへ支払いを強制したりするわけではありません。規格の文書でもロイヤリティ支払いは任意とされており、実際の決済には取引システム側の対応が必要です。
したがって、NFTがロイヤリティ情報を持っていること、販売先が支払い方針を掲げていること、コントラクトが決済時に配分することは分けて確認します。制作者の収入も、売買の回数や価格、対象となる取引の範囲で変わります。支払いを重視する設計は活動を支える要素になりますが、一定額の収入を毎月保証する制度ではありません。
2026年3月にEthereumなどへの対応を終了
Magic Edenの公式ヘルプによると、2026年3月9日にEVM系チェーンとBitcoinのマーケットプレイス対応が終了しました。一方、Solana Marketplace、Solana Packs、Solana Lucky Buyは継続対象として案内されています。Ethereum市場の終了を、Magic Edenの全サービスが消滅したという意味に広げることも適切ではありません。
同ヘルプは、EVM市場の出品、入札、オファーをオフチェーンで管理していたと説明しています。3月9日以降はそれらを画面上で表示・操作できず、終了に伴って注文を手動で取り消す必要はないとしています。ただし、この説明は注文の扱いについてです。過去にウォレットから与えたオンチェーンの資産移動権限まで消えるという意味ではありません。
Bitcoin側の入札・オークション用ウォレットには、別途3月27日までの出金案内がありました。Ethereumの注文管理とBitcoinの預け入れ残高を同じ仕組みとして扱わないようにします。終了後に残高の問題がある人は、該当するチェーンとサービスを特定したうえで公式サポートの案内を確認する必要があります。
旧取引コントラクトの承認には別の確認が必要
2026年9月24日には、Magic Edenが過去に使用したLimit BreakのPayment Processorを巡る脆弱性の問題が発生しました。ウォレット承認を確認するサービスRevoke.cashは、古い承認を使ってNFTやWETHなどが移動される危険を報告しています。同サービスによると、Magic Edenは2024年10月にこの取引処理の利用をやめていましたが、利用者が与えた承認は残っていました。
ここでいう承認は、特定のコントラクトに資産の移動を許すオンチェーンの権限です。マーケットプレイスを使わなくなること、画面上の出品を消すこと、ウォレット接続を解除することだけでは、その権限の取り消しと同じにはなりません。終了したサービスを過去に使った人にも確認が必要になる理由です。
Revoke.cashは対象のPayment Processorに対する承認の取り消しを勧めています。旧利用者は同サービスの事案ページと運営側の最新案内を確認し、自分が使ったチェーン、資産、承認先を照合してください。秘密鍵やシードフレーズを他人に渡す必要はありません。承認を取り消しても、すでに移動した資産が自動的に戻るわけではなく、救済手続きとは分けて考えます。
この協業を振り返るときの三つの判断軸
今回の経緯には、制作を支える報酬設計、サービスの事業継続、資産移動を許可する技術上の権限という三つの論点があります。ロイヤリティ重視という方針だけで、市場が長く運営されることやコントラクトが安全であることまで判断できるわけではありません。逆に、市場の終了をもって、制作者への還元という目的そのものがなくなったとも言えません。
過去の記事からこの市場を知った読者は、まず開始予定ではなく現在の対応チェーンを確かめる必要があります。以前に利用した人は、注文や預け入れ残高の整理に加え、過去の承認を確認する段階へ進みます。これから別のNFT市場を調べる場合も、売買手数料とロイヤリティを分け、どのコントラクトに何を許可する取引なのかを理解してから操作することが、今回の事例を役立てる方法です。
よくある質問
Q. 当初の8週間という予定どおりに開設されましたか?
A. 2023年11月の発表では年内開設が目標でしたが、協業市場が実際に稼働したとする発表は2024年2月27日です。予定と実績を区別してください。
Q. EthereumのNFTを今もこの市場で売買できますか?
A. 公式ヘルプは2026年3月9日にEVM系チェーンへの市場対応を終了したと案内しています。Solanaの継続サービスとは対応状況が異なります。
Q. 旧市場での出品を取り消せば承認の問題も解消しますか?
A. 注文の取り消しとオンチェーンの承認取り消しは別です。Payment Processorの事案では、残った承認が問題となるため、Revoke.cashなどの最新の事案案内で対象を確認してください。
この記事の出典
- Yuga Labs:Magic Edenとの提携発表(2023年11月4日)
- Magic Eden:Ethereum市場の開始発表(2024年2月27日)
- Ethereum Improvement Proposals:ERC-2981
- Magic Eden:Marketplace Updates & Service Changes
- Revoke.cash:Magic Eden / Limit Break Hack(2026年9月)
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




