SolendのSui進出はどうなった?Suilendの開始と貸借の仕組み

SolanaでSolendを開発していたチームのSui進出は、2024年3月に「Suilend」という新しい貸借プロトコルの開始につながりました。2023年12月の予告から、実際のサービス展開へ進んだ事例です。

現在の仕組みを理解するには、チェーンの処理速度だけでなく、利息の発生源、出金に使える流動性、清算の条件、口座を表すNFTの役割を見ることが大切です。公式資料の確認日は2026年9月27日です。これらをもとに、当初の発表から変わった点と利用上の論点を整理します。

SolendのSui進出計画はSuilendとして実現

2023年12月20日に配信された発表は、Solanaの貸借プロトコルSolendを開発するチームが、Suiにも進出する計画を伝えたものでした。創設者Rooterは、Solanaでの開発を続けながら、Suiに専念する小チームを設けたと説明しています。既存のサービスをすべて別チェーンへ移す発表ではありません。

その後、Sui財団は2024年3月11日、同チームが開発したSuilendの開始を発表しました。Sui上では新しい名前のプロトコルとして登場しており、2023年の計画と2024年の稼働開始を分けて読む必要があります。Solana側の預入資産や借入が、この発表によって自動的にSuiへ移されたわけではありません。

当初の発表が掲げた利用者数、対応資産数、TVLは、その時点のSolendなどに関する説明です。Suilendの現在の利用人数や残高として転用すると、対象と時点の両方が変わってしまいます。旧記事の「DeFiの勢いが悪化する」という表現も、原文の成長を後押しする趣旨とは異なるため改めました。

Suiを選んだ理由と性能の数字の読み方

Rooterが挙げたSuiの魅力は、開発者の使いやすさとMove言語でした。2024年の開始発表でも、従来とは異なる開発環境で貸借サービスを作る意図が説明されています。これは開発チームの選択理由であり、ほかのチェーンが金融用途に適さないと証明したものではありません。

2023年の発表にある毎秒29万7,000件、確定まで約480ミリ秒という数字は、Suiのベンチマークについての記述です。Suilendのすべての操作がその速度で終わるという実測結果ではなく、預入、借入、返済の利用体験を保証する数字として紹介することはできません。混雑や使用するアプリ、ネットワークの状態など、実際の条件は別に見る必要があります。

同様に、発表はSuiのzkLoginを組み込めると説明していましたが、これは基盤側の選択肢です。Suilendの全利用者がGoogleなどのログインだけで取引できると確認されたわけではありません。基盤が持つ機能と、個々のサービスが採用している機能を区別すると、将来構想を現行の操作手順と取り違えずに済みます。

預入利息は借入需要に応じて変わる

Suilendの基本は、資産をプールへ供給する人と、担保を差し入れて借りる人をつなぐ仕組みです。公式の利息解説によると、借り手が払う利息からプロトコル側の取り分を差し引いたものが、預け手の利息になります。表示された年率がそのまま固定される預金商品ではありません。

利率に関わる重要な指標が利用率です。供給された資産のうち、どれほどが貸し出されているかを示します。借入需要が強く、利用できる資産が少なくなると利率が上がりやすく、資産が戻れば下がる仕組みと説明されています。一時的な高金利を見て、その利率が一年続くと考えるのは適切ではありません。

利用率が100%になれば、プール内に出金や追加借入に使える資産が残っていない状態になります。公式リスク文書は、この場合に出金と借入が失敗し、返済や新たな供給で利用率が下がるまで待つ必要があると明記しています。自分の供給残高が画面に表示されることと、その瞬間に全額を引き出せることは同じではありません。

担保があっても清算や貸倒れの可能性は残る

Suilendは借入額を上回る価値の担保を求める過剰担保型の貸借です。ただし、担保を入れれば損失が起きないわけではありません。担保価格が下がる場合だけでなく、借りた資産の価格が上がる場合にも、担保に対する債務の比率が悪化し得ます。

清算に関する公式文書は、口座の借入残高と供給残高をPythまたはSwitchboardの価格情報で評価すると説明しています。基準に達すると第三者の清算者が借入の一部を返済し、対応する担保と追加報酬を受け取ります。清算基準は資産ごとの設定に関わるため、過去の記事にある単一の比率だけで、すべての市場の余裕を判断することはできません。

さらに、急変時に清算が間に合わず、担保を処分しても借入を埋められなければ貸倒れが生じます。公式文書には価格情報の誤りによる清算、隔離された市場などでの損失分担にも言及があります。保険基金から補填した過去の例が記載されていても、全市場の損失を必ず補償する約束とは読めません。金利だけでなく、市場の条件と不足発生時の扱いを確認する必要があります。

口座NFTの移転は貸借ポジションの移転を意味する

SuilendのAccount NFTは、供給と借入のポジションを表す動的なNFTです。公式ガイドによると、初めて資産を預けた際にウォレットへ現れ、残高情報を更新します。記念画像として配られたNFTと同じ感覚で扱わないことが重要です。

このNFTを別のアドレスへ送ると、Suilend口座と資産の所有権も移ると説明されています。また、焼却すると口座へのアクセスを失い、移転したNFTに関してSuilend側が資産を回復することはできないとしています。ウォレットの整理で不要なNFTを消すつもりでも、口座を表すものを対象にすれば重大な結果になります。

この仕組みには、貸借を解消せず新しいウォレットへ口座を移せる利点があります。一方、移転先の確認や署名内容の理解が不可欠です。ウォレット内にNFTがあるという事実だけでは、それが展示用の作品なのか、資産管理上の権限なのかは分かりません。名称や公式説明と照合して、用途を把握する必要があります。

監査と現在の事業展開を確認するときの注意

2026年9月27日に確認したSuilendの公式監査一覧には、2024年3月のZellicとOtterSec、2026年2月のCertoraによる形式検証が掲載されています。ただし、一覧に載ることと、現在の全機能に欠陥がないことは別です。監査の対象コードや時点を確かめずに、最高の安全性を保証したと説明するのは適切ではありません。

Suilend自身のリスク文書も、スマートコントラクトの悪用による盗難や資産凍結の危険は完全に除けないと明記しています。本記事は公開文書を確認したもので、最新コードの監査や実際の預入・出金試験を実施したものではありません。安全対策がある事実と、残る危険の両方を伝える必要があります。

現在の公式文書は、Solana側の旧SolendをSaveと呼び、Sui側ではSuilendに加えてリキッドステーキングのSpringSui、交換・流動性提供のSTEAMMを紹介しています。いずれも同じ貸付商品ではなく、組み合わせれば扱う資産や依存する仕組みも増えます。

なお、SLNDからSAVEへの移行に伴うSEND報酬について、公式案内は受取条件を満たす移行期限を2025年12月12日としています。期限後もSLNDをSAVEへ変換できると説明されていますが、従来のSEND報酬は付かないとされています。過去の進出記事や特典記事から取引へ進む場合は、古い名称だけでなく、チェーン、対象商品、期限を照合することが欠かせません。

よくある質問

Q. SolendがそのままSuiへ移転したのですか?

A. Sui側ではSuilendという別名のプロトコルが2024年3月に開始されました。Solana側の残高や借入が自動的に移る発表ではありません。

Q. 預入残高があればいつでも全額出金できますか?

A. 公式文書は、利用率100%でプール内の資産がすべて貸し出されている場合、返済や新規供給があるまで出金が失敗すると説明しています。

Q. Account NFTは不要なら焼却してよいですか?

A. 口座のポジションを表すNFTです。公式ガイドは焼却すると口座へアクセスできなくなると説明しており、単なる記念品と同じ扱いはできません。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。