YSL BeautyのNFT「Golden Block」とは|無料配布1万点とその後の展開

2022年6月、化粧品ブランドのイヴ・サンローラン・ボーテ(YSL Beauty)は、広告会社Wunderman Thompsonと組んで、初のNFT「Golden Block」を発表しました。誰でも無料で受け取れるNFTで、ブランドが用意する体験への「入場券」の役割を持たせたものです。

旧版の記事は、このNFTを「約1,000本」と紹介し、バーチャルメイクのNFTブースの計画にも触れていましたが、配布数など一部の内容は公表された情報と異なっていました。この記事では、発表の中身を確かめ直し、2023年に始まった購入特典型のNFTまでの展開を追いながら、ブランドが無料のNFTを配る狙いと、受け取る側が知っておくべき点を整理します。

何が行われたか:無料のNFT「Golden Block」1万点

YSL Beautyは2022年6月15日、Golden Blockの最初の配布として、無料のNFTを1万点用意すると発表しました。旧版の記事は「約1,000本」と書いていましたが、公表された数は1万点です。

受け取れるのは、パリで開かれたテクノロジー見本市VivaTechnologyの来場者や、YSL BeautyのInstagramとTwitter(現X)のフォロワーなど、希望した人です。NFTはPolygonのブロックチェーンで発行され、ブランドが用意した「YSL Beauty Wallet」というスマートフォンのアプリで受け取って保管する仕組みでした。このウォレットは、ブランド向けのNFT基盤を提供するフランスのArianeeの技術で作られています。

暗号資産を持っていない人でもアプリだけで受け取れるようにした点は、化粧品の顧客層を意識した工夫だったと言えます。

当時、NFTを受け取るには、MetaMaskなどのウォレットを自分で用意し、復元用のフレーズを管理するのが一般的でした。この手間は、NFTに詳しくない人にとって大きな壁になっていました。ブランドが専用のアプリを用意し、普段のスマートフォンの操作に近い形で受け取れるようにする方法は、その後、多くの企業のNFT施策で採用されていきます。ただし、こうしたアプリではブランド側が仕組みを管理する部分も大きく、完全に自分だけで管理するウォレットとは性格が異なる点も知っておく必要があります。

Golden Blockで何ができたのか

Golden Blockは、それ自体を売買して楽しむというより、YSL BeautyのWeb3の取り組みへの参加証として位置づけられていました。保有者は、今後の配布や限定の体験に参加できるとされました。

その最初の体験として、ブランドはクリエイター向けのトークン発行サービスP00LSと組み、アーティストのファントークンを用意しました。対象は、YSL Beautyの社会貢献プログラム「Abuse Is Not Love」に協力する音楽家のアガト・ムージャン氏とバンドのKittensで、6月21日から保有者向けに提供される予定と発表されています。

その後、第2弾として「Pride Blocks」が配布され、最初のGolden Blockの保有者は無料で受け取れました。報道によると、これらの配布を通じて約2万4,000人のNFT保有者のコミュニティができたとされています。

その後どうなったか:購入特典型のNFTへ

2023年1月30日、YSL Beautyは香水「ブラック オピウム」を題材にしたNFTシリーズ「The Night is Ours」を始めました。フランス、米国、英国、オーストラリアのブランド公式オンラインストアで香水を買った人が、YSL Beauty Walletで受け取れる仕組みです。

第1章として、2,000点の「Night Block」と、香水や特別なキットが付く14点の希少版が用意されました。保有者には、第2章の非公開販売への参加権、公式オンラインストアの割引券、調香師による限定コンテンツなどが提供され、NFTの販売による収益は「Abuse Is Not Love」の協力団体に寄付されるとされました。

無料で配って関心を集める段階から、商品の購入とNFTを結びつけ、購入後の体験を広げる段階へと進んだことになります。旧版の記事が触れた「バーチャルメイクのNFTブース」については、その後の実施を確認できませんでした。

ブランドが無料のNFTを配る狙い

YSL Beautyのように、ブランドが無料でNFTを配る狙いは、主に次の3つに整理できます。

  • 顧客とのつながりを記録する:NFTを持つ人を「イベントに参加した人」「商品を買った人」として識別し、次の特典を届けられます。
  • 話題づくり:新しい技術に取り組むブランドとしての印象を与え、若い世代の関心を集めます。
  • 社会貢献との結びつけ:YSL Beautyの場合は、NFTの取り組みを暴力防止のプログラムと結びつけ、ブランドの姿勢を示す場にもしていました。

一方で、NFTを受け取った人の多くにとっては、専用アプリをインストールする手間があり、特典の内容が具体的でなければ関心は続きません。ブランドのNFTが定着するかどうかは、受け取った後に何ができるかにかかっています。

受け取る側が確認したいこと

  1. 公式の配布か:有名ブランドの名前を使った偽の配布ページは珍しくありません。ブランドの公式サイトや公式SNSの告知から受け取ってください。
  2. 何が記録されるのか:ウォレットアプリの登録で提供する個人情報や、購入履歴との結びつきをプライバシーポリシーで確認します。
  3. 特典はいつまで続くのか:キャンペーンが終わると、アプリやNFTの使い道がなくなる場合があります。
  4. 対象の国:YSL Beautyの2023年のキャンペーンは4か国の公式オンラインストアでの購入が対象で、日本は含まれていませんでした。

無料のNFTを受け取るときの一般的な注意点はNFTを無料で手に入れる方法と注意点で詳しく扱っています。

化粧品・ファッション業界とNFTの現在地

2022年には、YSL Beautyのほかにも多くの化粧品やファッションのブランドがNFTを発行しました。その後NFT市場が冷え込むと、限定アートとしての販売は減り、購入特典や会員証、製品の真贋証明など、実際の商品や顧客サービスと結びついた使い方が中心になっていきました。

YSL Beautyの取り組みも、無料配布による話題づくりから、商品の購入と結びついた特典へと移っています。ブランドにとってNFTは、それ自体で売上を生む商品というより、顧客との関係を長く続けるための道具として使われるようになったと言えます。

2026年時点のYSL Beauty Walletの提供状況や、Golden Blockの特典が続いているかどうかについては、公式な情報を確認できませんでした。

日本の読者が押さえておきたいこと

日本では、企業が商品の購入者などにNFTを特典として配る場合、その内容によっては景品表示法の景品規制が関係することがあります。受け取る側としては、特典の条件や提供期間が明示されているかを確認するとよいでしょう。

また、無料で受け取ったNFTであっても、暗号資産と交換できるものを企業から受け取った場合は、時価によっては一時所得として課税の対象になる可能性があります。通常のキャンペーンで配られるNFTは時価の算定が難しいことが多いものの、売却して利益が出た場合は申告が必要になる点を覚えておきましょう。

よくある質問

Q. YSL BeautyのGolden Blockは何点配られましたか?

A. 最初の配布では1万点が用意され、無料で受け取れました。旧版の記事の「約1,000本」は誤りです。

Q. Golden Blockはどこで受け取るのですか?

A. ブランドが用意したスマートフォンのアプリ「YSL Beauty Wallet」で受け取りました。NFTはPolygonのブロックチェーンで発行されています。

Q. その後、YSL BeautyのNFTはどうなりましたか?

A. 2023年1月から、香水ブラック オピウムを買った人が受け取れる購入特典型のNFTを始めました。対象はフランス、米国、英国、オーストラリアの公式オンラインストアでの購入です。

Q. 日本でもYSL BeautyのNFTを受け取れましたか?

A. 2023年の購入特典型のNFTは、日本の購入者は対象外でした。2022年の無料配布はSNSのフォロワーなども対象でしたが、2026年時点の提供状況は確認できませんでした。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。