Yeti Yacht Club(イエティ・ヨット・クラブ、略称YYC)は、2022年6月に発表されたNFTプロジェクトです。イエティ(雪男)をモチーフにしたNFTを会員証とし、保有者は大型帆船でのクルーズや私有島でのイベントに参加でき、提携スタジオが開発するゲームでも遊べる、という構想を掲げていました。その後、名称は「Yeti Secret Society(YSS)」に変わっています。
旧版の記事はこのプロジェクトを「良い投資先になるはず」と紹介していましたが、根拠のない見通しであり、翻訳の誤りも含まれていました。この記事では、発表当時の報道で確認できる内容を整理し直したうえで、2026年時点で確認できた状況と、現実の特典を約束するNFTプロジェクトを見るときの確認ポイントをまとめます。
2022年6月に発表されたYeti Yacht Clubの概要
Yeti Yacht Clubは、2022年6月中旬に複数の暗号資産メディアで紹介されました。U.Todayは6月17日付の記事で、イーサリアム上で合計1万点のNFTを発行する計画であること、ホワイトリスト(優先購入枠)の参加者は1人最大25点まで購入できることを伝えています。同じ時期にCoinspeakerやTechBullionにも紹介記事が掲載されました。
プロジェクト側は、ブロックチェーン、ゲームファイ(GameFi)、NFTの分野で経験のあるメンバーが身元を明かして運営していると説明していました。ただ、当時の記事にはメンバーの具体的な名前は載っておらず、発行価格や販売日も明記されていませんでした。紹介記事の多くは、プロジェクト側の説明をそのまま伝える宣伝色の強いものだった点にも注意が必要です。
名前やコンセプトからわかるとおり、先行して人気を得ていたBAYC(Bored Ape Yacht Club)への対抗を打ち出した企画で、報道の見出しにも「BAYCに挑む」といった表現が使われていました。
約束されていた特典:帆船クルーズ、私有島、MMOゲーム
当時の説明によると、NFTの保有者向けの特典は主に次のようなものでした。
- クルーズイベント:最初のイベントは、仏クラブメッドが運航する5本マストの大型帆船「Club Med 2」で開き、モナコへの航海を予定している。
- 私有島での滞在:会員が島を丸ごと借りて休暇やパーティーを楽しめるようにする。
- 年次の集まり:著名人を招いたパーティーを毎年開き、会員が交流できるようにする。
- ゲームとメタバース:モバイル向けMMOを手がけるSapphire Studiosと組み、遊んで報酬を得る「Play-to-Earn(P2E)」型のMMOゲームとメタバースを開発する。
U.Todayの記事では、MMOとメタバースは2022年中にも公開される予定とされ、NFTはOpenSeaやLooksRareなどのマーケットプレイスで扱われる見込みとされていました。一方でCoinspeakerの記事は、イーサリアムに加えてPolygonやSolana、Avalancheでも扱うと書いており、発表時点から媒体によって説明に食い違いがありました。
こうした特典はいずれも「これから実施する」という予定であり、発表の時点で実現していたものではありません。この点が、あとで述べる確認ポイントにもつながります。
旧版記事の誤りと訂正
旧版の記事には、機械翻訳に由来するとみられる誤りがいくつかありました。主なものを訂正します。
- 旧版は「遠くからでも見える5種類のガーデンポール」と書いていましたが、正しくは船の特徴である5本のマストのことです。Club Med 2は5本マストの帆船として知られています。
- 旧版は「600名収容のヨット」と書いていました。プロジェクト側の説明も「最大600人」でしたが、船の定員は乗客が約386人、乗組員が約214人で、600人は両者を合わせた規模にあたります。乗客として600人が乗れるわけではありません。
- 旧版にあった「船内にはフランス語を話す人が多く、参加者は彼らと交流できる」という記述は、当時の報道では確認できませんでした。クラブメッドがフランスで生まれた企業であることと混同したものとみられます。
- 旧版の「Bored Apeの人気からすると人気が出そう」「良い投資先になるはず」という結びは、根拠のない見通しのため削除しました。
なお、Club Med 2はクラブメッドが運航する船で、夏は地中海、冬はカリブ海を中心に航海しています。プロジェクトが船を貸し切る予約をしたと説明されていましたが、クラブメッド側の発表は今回確認できませんでした。
その後どうなったか(2026年時点)
プロジェクトは2022年夏ごろ、名称を「Yeti Secret Society(YSS)」に変えたとみられます。TechBullionの紹介記事は2022年8月に更新されており、現在の見出しはYeti Secret Societyになっています。YSSの告知では、発行数をイーサリアム上の1万5千点としており、当初報道の1万点から変わっています。抽選による優先購入の募集ページも作られていました。
一方、その後に販売(ミント)が予定どおり行われたのか、予告されていたクルーズや私有島のイベント、MMOゲームが実現したのかについては、公式発表や主要報道で確認できませんでした。当初の公式サイトとして案内されていたドメインは、2026年9月に確認したところ無関係のサイトへ転送されており、YSSのドメインも売却を案内するページに切り替わっていました。
サイトが見られなくなったことだけで、プロジェクトの経緯を断定することはできません。ただ、公式サイトやSNSの告知が追えなくなっていることは、保有者が特典の履行状況を確かめる手段がほとんど残っていないことを意味します。
背景:2022年の「クラブ型NFT」ブームとP2Eの失速
NFTブームが続いた時期には、NFTを会員証として使い、オンラインのコミュニティと現実のイベントを組み合わせる「クラブ型」のプロジェクトが数多く登場しました。先行したBAYCは保有者向けのイベントを開き、のちに現実の拠点づくりにも取り組んでいます。その様子はBAYCクラブハウスの計画を解説した記事で紹介しています。
こうした成功例の影響で、「ヨットクラブ」を名乗るコレクションや、豪華な体験を特典に掲げるプロジェクトが相次ぎました。しかし、現実のイベントを継続して開くには、NFTの販売収入とは別に、毎年の運営費をまかなう仕組みが必要です。販売が思うように進まなければ、特典の約束は守りにくくなります。
またP2E型のゲームは、2022年の市場の冷え込みとともに報酬トークンの価値が大きく下がり、多くのプロジェクトで設計の見直しが迫られました。「遊んで稼げる」という説明は、報酬の原資がどこから来るのかまで確かめないと、実態を判断できません。
実物特典をうたうNFTを確かめるポイント
クルーズやイベント参加権のように、現実の特典を約束するNFTを検討するときは、次の点を確認すると判断材料が増えます。
- 運営者と契約相手:運営チームの実名や法人名が公開されているか。船や会場の提携先が、自ら提携を発表しているか。
- 特典の条件:参加に旅費や追加料金がかかるのか、人数の上限や抽選があるのか、NFTの売却後も権利が残るのか。
- 資金の使い道:販売収入のうちどれだけをイベントや開発に充てるのかが示されているか。
- 情報源の種類:紹介記事がプロジェクト側の発信を載せただけのものか、独立した取材によるものか。
- 継続性:公式サイト、SNS、コントラクトアドレスが一貫して確認できるか。名称変更の経緯が説明されているか。
取引量や保有者数など、プロジェクトの状態を数字で見る方法は、NFTプロジェクトを分析するための5つの指標で解説しています。話題のプロジェクトに便乗した偽のミントサイトの見分け方は、NFT詐欺の4類型を整理した記事にまとめています。
日本の読者向け:制度と税金の考え方
会員証型のNFTは、日本では一般に、決済手段として使えない限り資金決済法上の暗号資産にはあたらないと整理されています。ただし、NFTの保有者に事業の利益を分配するような仕組みがあると、金融商品取引法の対象になる可能性があります。特典の中身が「体験の提供」なのか「収益の分配」なのかは、発行元の説明をよく読んで区別する必要があります。
また、海外の運営者が約束した特典が実施されなかった場合、日本の消費者保護の枠組みで救済を受けるのは簡単ではありません。現実の特典はあくまで発行元がその約束を守ることに頼っており、NFTを持っていることが履行を保証するわけではない点を理解しておくことが大切です。
NFTを売却して利益が出た場合は、所得の区分に応じて課税されます。国税庁は2023年1月にNFTの税務上の取扱いをFAQとしてまとめており、購入時の価格や手数料の記録を残しておくと申告の際に役立ちます。判断に迷うときは税務署や税理士に確認してください。
よくある質問
Q. Yeti Yacht ClubとYeti Secret Societyは同じプロジェクトですか?
A. 同じプロジェクトの旧名と新名とみられます。2022年6月にYeti Yacht Clubとして紹介され、同年夏にはYeti Secret Society(YSS)の名前で告知されていました。ただし、発行数などの説明は名称変更の前後で異なっていました。
Q. 予告されていたクルーズイベントは実施されましたか?
A. 公式発表や主要報道では、実施されたかどうかを確認できませんでした。2026年9月時点では、当初の公式サイトも確認できない状態でした。
Q. Club Med 2には600人が乗れるのですか?
A. 乗客の定員は約386人で、乗組員約214人と合わせるとおよそ600人です。旧版の記事は「600名収容のヨット」と書いていましたが、乗客として600人が乗れるわけではありません。
Q. 特典付きNFTを買う前に何を確かめればよいですか?
A. 運営者の実名や法人名、提携先が自ら提携を発表しているか、特典に追加費用や抽選があるか、販売収入の使い道、公式サイトやSNSが継続して更新されているかを確認すると判断材料になります。
この記事の出典
- U.Today: Yeti Yacht Club NFT Collection Goes Live to Challenge BAYC Supremacy
- TechBullion: Yeti Secret Society – A Project Betting on Mega-Yachts and NFTs
- Coinspeaker: Yeti Yacht Club Showcases New Comprehensive NFT Project
- Wikipedia: Club Med 2
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




