2026年7月23日と24日の米国ビットコイン現物ETFは、合わせて約4.65億ドルの純流出でした。それでも20〜24日の一週間を合計すると、小幅な純流入になります。週前半に入った資金が後半の流出を上回っており、二つの見出しは矛盾しません。
7月28日の元記事の主題は、暗号資産の材料を読む際に、集計期間と出典をそろえることでした。今回は日別表を実際に足し直し、発行体別の動きから分かる範囲を確認します。法案と取引所の開示についても、当時の出来事と後日の更新、確認済みの事実と推測を分けます。
本文は一般的な呼称に合わせて「現物ETF」と記しますが、米SECの説明上、これらの現物商品は商品信託型のETPで、1940年投資会社法に登録されたETFとは区別されます。
日別表では、週前半の流入が後半の流出を上回る
Farside Investorsの日別データを使うと、米国ビットコイン現物ETF全体の純流入額は次のようになります。単位は百万米ドルで、マイナスは純流出です。ここでは同じ提供元の表示値を合計し、別の集計サービスの数字を途中で混ぜていません。
| 米国取引日 | 純流入額(百万ドル) |
|---|---|
| 2026年7月20日 | 226.8 |
| 7月21日 | 203.2 |
| 7月22日 | 69.1 |
| 7月23日 | −225.1 |
| 7月24日 | −240.1 |
| 5営業日合計 | 33.9 |
最初の3営業日は合計499.1百万ドル、最後の2営業日は465.2百万ドルの流出です。差し引き33.9百万ドル、つまり3,390万ドルの純流入が残ります。「2日で約4億6,520万ドル流出」と「週間で3,390万ドル流入」は、同じ表から計算できます。週間のプラスだけを見れば後半の変化を見落とし、2日間だけを見れば週全体を流出と誤解します。
3,380万ドルと3,390万ドルを無理に一致させない
CoinDeskの7月27日付記事は、SoSoValueの集計として、24日までの週間純流入を33.79百万ドルと報じています。見出しなどで約33.8百万ドルと丸めると、元記事の3,380万ドルになります。一方、今回のFarsideの日別表示値の合計は33.9百万ドルです。
小さな差であっても、異なる提供元の値を同一の数字として扱わないことが大切です。表示桁、集計時点、後日の修正などは照合項目ですが、今回の差の原因を特定できたわけではありません。Farsideの表で計算した結果と、SoSoValueを引用した当時の報道を区別して示します。
Farsideの表示値では、7月6〜10日の週が197.4百万ドル、13〜17日の週が75.5百万ドルの純流入です。20〜24日の33.9百万ドルまで、3週連続のプラスという方向は確認できます。ただし、連続したという事実は、資金の流入規模が拡大していたことを意味しません。この3週間では、週ごとの純流入額は小さくなっています。
IBITへの集中は確認できても、売り手の目的は分からない
同じFarsideの表で、BlackRockのIBITは7月23日に202.5百万ドル、24日に212.2百万ドルの純流出です。2日合計は414.7百万ドルとなり、全体の465.2百万ドルに対して大きな割合を占めます。流出がどの商品に集中したかは、この内訳から確認できます。
しかし、集中していることから「市場全体の資金引き揚げではなく、特定ファンド内だけの調整だった」とまでは言えません。利用者が現物保有へ移したのか、別の商品を買ったのか、リスクを減らしたのかは、ETFの日次純流出だけでは特定できません。保有者の属性や売却理由も、この表に含まれる情報ではありません。
また、ETFの純資金フローは、取引所で売買されたETFの代金の総額とは異なります。既存の持ち分が投資家同士で売買されることと、ファンドの設定・償還に伴う純増減を分けて考えます。ETFの流出額を、そのまま暗号資産市場全体から失われた資金や時価総額の減少額として扱うこともできません。
イーサリアムとの比較も、同じ期間と単位で行う
FarsideのイーサリアムETF表では、7月20〜24日の純流入額は順に38.0、37.5、72.7、26.3、マイナス70.7百万ドルです。5日間の合計は103.8百万ドル、約1億380万ドルの純流入となります。元記事の「約1.04億ドル」という規模感とおおむね一致します。
この週の純流入額はビットコインETFの約3.1倍ですが、それだけでイーサリアムの市場需要が3倍強いとは結論づけられません。商品の規模も、保有者構成も異なります。比較するなら、ドル額に加え、各商品の純資産に対するフローの割合や、前後の期間も確認する必要があります。
イーサリアム側も24日単日は純流出でした。週次でプラスだったことと、週末に売りが出たことは両立します。なお、ETFの取引日と日本の記事公開日は別です。日本時間の朝の記事で「昨日」とだけ書くと、米国市場のどの営業日を指すか曖昧になります。対象を7月20〜24日と明記すれば、後から検算できます。
CLARITY法案は、条文の公開と採決の種類を分ける
米上院のシンシア・ルミス議員は7月22日、銀行委員会と農業委員会の作業を統合したCLARITY Actの更新条文を公表しました。これは暗号資産の市場構造を巡る法案の進展ですが、更新案の公表自体が法律の成立を意味するわけではありません。
元記事の「60票」という説明も、何の手続きに必要な票かを付ける必要があります。その後の手続きは、9月15日の上院採決記録で確認できます。H.R.3633の審議入り動議に関する討論終結の採決が行われ、賛成49、反対50、投票なし1でした。必要条件は5分の3で、この討論終結の動議は否決されています。
これは法案そのものの最終可決・否決を問う採決ではありません。手続き上の障害を示しますが、これだけを根拠に恒久的な廃案と断定することもできません。9月の結果を7月28日時点で知られていた情報として書かず、後日の確認事項と明示します。成立期待、条文の中身、議会手続きはそれぞれ別に追う必要があります。
準備資産の証明は、財務全体の監査と同じではない
元記事はBinanceのUSDT・USDCの準備率が100%を超えるとする投稿に触れていましたが、対象時点の数値と報告書を特定できていません。本稿では、その比率を確認済みの事実として再掲しません。現在の説明ページを見ただけで、過去の特定日の残高を検証したことにはならないためです。
Binanceは公式の準備資産証明の説明で、顧客残高が集計に含まれることをMerkle Treeなどで検証する仕組みと、緊急時のSAFU基金について説明しています。こうした仕組みを読む際は、残高を切り取った日時、対象の資産や口座、どこまで検証できるかを確かめます。基金の存在から、あらゆる損失が補償されると推定しないことも必要です。
米SECの投資家向け解説は、準備資産証明の報告が、財務諸表監査と同等ではない点を指摘しています。負債全体や財務状態について分かる範囲が限られるためです。暗号学的に残高の集計を確認できることと、企業全体の支払能力や将来の出金を保証することを区別します。この一般的な限界は、特定企業の資産不足を示す証拠ではありません。
清算額や建玉だけで、次の値動きを断定しない
元記事の「清算約1億ドル」は、対象の取引所、銘柄、時間帯、集計元を確かめられないため、今回の確定した市場データから外します。24時間の集計なのか、一つの急落場面なのかによっても数字の意味は変わります。出典を付けられない金額を、市場の転換点の根拠にはできません。
Coinbaseの用語解説では、建玉は未決済のデリバティブ契約の総数を指します。また、無期限先物の資金調達料はロングとショートの保有者間で支払われ、現物との価格差を調整する仕組みです。建玉の増減や資金調達率は市場の状態を読む材料ですが、それぞれ単独で売り手の目的や将来の価格を識別するものではありません。
例えば、ドル換算の建玉は価格変動でも変わるため、契約数や原資産数量と区別します。資金調達率は計算式と支払間隔をそろえて比較します。ETF、法案、準備資産、デリバティブという異なる材料を一つの強気・弱気の結論へ急いでまとめず、日付、対象、単位、確認できた範囲を付けて読むことが、この時期の記録を再利用するうえで役立ちます。
よくある質問
Q. 2日間の純流出と週間の純流入は矛盾しますか?
A. 矛盾しません。Farsideの日別表示値では7月20〜22日の499.1百万ドルの流入から、23〜24日の465.2百万ドルの流出を引くと、週全体では33.9百万ドルの流入が残ります。
Q. IBITへの流出集中から、投資家の目的も分かりますか?
A. 分かりません。商品別の純増減は確認できますが、売り手の属性、資金の移動先、売却理由は別の資料が必要です。
Q. 準備率が100%を超えていれば出金は保証されますか?
A. 比率だけで将来の出金を保証することはできません。報告の対象時点と範囲、負債の扱い、証明と監査の違いを確認する必要があります。
この記事の出典
- Farside Investors:Bitcoin ETF Flow – All Data
- Farside Investors:Ethereum ETF Flow – All Data
- CoinDesk:7月24日までのETF週間フロー(2026年7月27日)
- Lummis:CLARITY Act更新条文の公表(2026年7月22日)
- 米上院:H.R.3633の審議入り動議に関する討論終結採決(2026年9月15日)
- Binance:Proof of Reservesの仕組み
- SEC Investor.gov:財務諸表監査の代替とされる報告への注意(2023年7月27日)
- Coinbase:国際デリバティブの用語と定義
- Coinbase:国際デリバティブの資金調達率
- SEC Investor.gov:ビットコイン・イーサのETPの構造
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




