NFTの価格は大きく動きやすく、見た目の印象や話題性だけではプロジェクトの状態をつかみにくいものです。そこで役に立つのが、チームの実績、レアリティ(希少性)、取引量と流動性、売り板の厚さ、コミュニティの活発さという5つの観点です。
この記事は2022年6月に公開した記事を書き直したものです。旧版はイーサリアムのNFTを例に5つの指標を紹介していましたが、数字の誤りや、特定のプロジェクトを持ち上げる表現が含まれていました。2022年以降、ウォッシュトレード(自作自演の売買)の問題や、クリエイターへのロイヤリティの扱いの変化など、数字の読み方に影響する出来事もありました。ここでは、その後の経緯も踏まえて、各指標の意味と限界を整理します。なお、この記事は購入をすすめるものではなく、情報を読み解くための視点をまとめたものです。
指標1:プロジェクトチームの実績と説明責任
NFTは発行後も、運営チームが追加の企画や開発を続けることで価値が保たれるケースが多く、チームの経歴や実績は最初に確認したいポイントです。見るべきなのは、メンバーや運営会社が実名や法人名を公開しているか、過去に完成させたプロジェクトがあるか、ロードマップ(計画)の進み具合を定期的に報告しているか、といった点です。
旧版が例に挙げたYuga Labsは、2022年3月にa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)の暗号資産ファンドが主導する4億5,000万ドルの資金調達を行い、企業価値は40億ドルと評価されました。同月には、CryptoPunksとMeebitsの権利をLarva Labsから取得しています。ただし、その後Yuga Labsは2025年5月にCryptoPunksの知的財産を非営利団体のInfinite Node Foundationに譲渡しました。資金力のあるチームでも、方針が数年で大きく変わることがある例です。
実績あるチームでも判断を誤ることはあります。Azukiを手がけるChiru Labsが2023年6月に発行した「Azuki Elementals」は、既存のAzukiと似すぎているという批判を受け、関連コレクションのフロア価格が急落しました。チームを見るときは、経歴の華やかさよりも、問題が起きたときの説明や対応の姿勢に注目すると実態をつかみやすくなります。
指標2:レアリティ(希少性)の2つの意味
NFTの希少性には、コレクション全体の発行数と、コレクションの中での個々のNFTの特徴(属性)の珍しさという2つの意味があります。発行数については、CryptoPunksが1万点、Meebitsが2万点というように、コレクションごとに大きく異なります。発行数が少なければ一つひとつの希少性は高まりますが、少ないこと自体が需要を生むわけではありません。
個々のNFTの希少性は、背景や服装、アクセサリーといった属性の組み合わせがどれだけ珍しいかで測られ、マーケットプレイスや専用サイトでは「レアリティランク」として表示されます。ただし、ランクの算出方法はサイトによって異なり、同じNFTでも順位が大きくずれることがあります。ランクはあくまで一つの目安として扱うのが無難です。
旧版の記事は「1シリーズ約8,500本の供給は非常に少ない」「ミービッツの基本価格はクリプトパンクスの15倍」と書いていましたが、前者に明確な基準はなく、後者は向きが逆でした。当時フロア価格が高かったのはクリプトパンクスのほうです。また旧版はPunksの総数を9,999としていましたが、正しくは1万点です。
指標3:取引量と流動性、そしてウォッシュトレード
取引量は、そのNFTがどれだけ活発に売買されているかを示す指標です。取引が多いコレクションは、売りたいときに買い手が見つかりやすく、流動性が高いといえます。反対に、取引がほとんどないコレクションは、表示されている価格で売れる保証がありません。旧版が紹介したように、2022年時点でも累計取引額の大きいコレクションはごく一部に集中していました。
ただし、取引量の数字はそのまま信じられないことがあります。売り手と買い手が同じ人物、あるいは協力関係にある人物で、見かけの取引を積み上げる「ウォッシュトレード」があるためです。CoinGeckoの調査では、主要6マーケットプレイスの取引高に占めるウォッシュトレードの割合は2022年初めに67.1%、2023年2月でも23.4%と推計されています。取引量に応じて報酬を配る仕組みが導入されたマーケットプレイスでは、こうした売買が増えやすいことも指摘されました。
取引量を見るときは、総額だけでなく、売買に関わったウォレットの数、同じウォレット同士の往復取引がないか、手数料の安いマーケットプレイスに偏っていないかも合わせて確認すると、実際の需要に近い姿がつかめます。
指標4:売り板の厚さ(プライスウォール)
旧版で「プライスウォール」と呼んでいたのは、マーケットプレイスに出品されているNFTの価格の分布のことです。最安値(フロア価格)の近くにどれだけの出品が並んでいるか、どの価格帯に出品が集中しているかを見ると、売り圧力の強さや、次にどの価格帯で売買が成立しやすいかの手がかりになります。
フロア付近に大量の出品がある場合、少しの売りで価格が下がりやすい状態です。一方、出品数が発行数に比べて少なく、高い価格帯にまばらに並んでいる場合は、保有者が手放したがっていないと読めます。あわせて、買い手側の提示価格(オファーやコレクション全体への入札)も確認すると、売り手と買い手の感覚の差がわかります。
注意したいのは、極端に高い価格での出品は判断材料になりにくいことです。旧版が例に挙げた「最高9,999ETH」のような出品は、売る気のない価格設定であることが多く、需要の強さを示すものではありません。また、フロア価格は少数の安い出品で簡単に動くため、1日の変化だけで判断しないことも大切です。
指標5:コミュニティの活発さと、数字の水増し
NFTはコミュニティの熱量に支えられる面が大きく、SNSやDiscordでの活動は重要な判断材料です。フォロワー数だけでなく、投稿への反応の質、運営と保有者のやりとりの頻度、保有者が自発的に作品や企画を生み出しているかを見ると、コミュニティの実態が見えてきます。
一方で、フォロワー数や反応数は、プレゼント企画や報酬目当ての参加で水増しされやすい数字です。旧版はOthersideとGoblintownのフォロワー数を比べて人気の差を論じていましたが、フォロワー数の大小だけでは、実際に保有している人の熱量まではわかりません。
オンチェーンのデータでは、保有者数(ユニークホルダー数)と、一人あたりの保有数の分布が参考になります。発行数に対して保有者が少なく、少数のウォレットに大量のNFTが集中している場合は、そのウォレットの売買だけで価格が大きく動くおそれがあります。人気コレクションに取引が集中する傾向については、NFT市場の二極化を扱った記事も参考になります。
2022年以降に変わった前提:ロイヤリティと市場構造
5つの指標を読むうえで、2022年以降に変わった前提も押さえておく必要があります。一つは、二次流通の売買で作り手に支払われるロイヤリティ(クリエイター手数料)の扱いです。OpenSeaは2023年8月、新しいコレクションのクリエイター手数料を任意とし、手数料の支払いを強制する仕組みの提供を終えると発表しました。
ロイヤリティは、運営チームが発行後も開発やイベントを続けるための重要な収入源でした。これが任意になったことで、発行時の販売収入や、別の事業で運営費をまかなえるかどうかが、プロジェクトの継続性を左右するようになっています。チームの指標を見るときは、どのように収益を得ているのかも確認しておきたいところです。
もう一つは、取引の場の分散です。複数のマーケットプレイスやチェーンで売買されるようになり、一つのサイトの数字だけでは全体像をつかめなくなりました。データを見るときは、複数のマーケットプレイスをまとめて集計するサービスや、ブロックチェーンのデータを直接確認できるツールを併用すると安心です。
指標を使うときの注意点と、日本の制度
5つの指標は、いずれも過去から現在までの状態を示すもので、将来の価格を約束するものではありません。旧版の記事はNFTを「代替投資先」として持ち上げる書き方をしていましたが、実際には、多くのコレクションが2022年以降に取引をほとんど失っています。指標は「買う理由」を探すためではなく、「見落としている危険がないか」を確かめるために使うのが適切です。
計画だけが先行して実態を確かめにくいプロジェクトの例としては、クルーズ特典を掲げたYeti Yacht Clubの記事でその後の経緯をまとめています。公式サイトやSNSが途絶えていないかも、チームの指標の一部として確認するとよいでしょう。
日本でNFTの売却益が出たときは、所得の区分に応じた課税を受けます。考え方は、国税庁が令和5年(2023年)1月に公表したNFTの税務FAQで確認できます。購入や売却の日時、金額、手数料の記録を残しておくと、申告のときに困りません。また、NFTの購入に使う暗号資産は、金融庁に登録された国内の交換業者で入手するのが基本です。
よくある質問
Q. 5つの指標のうち、最初に確認すべきものはどれですか?
A. まずはチームの情報と、取引量や保有者数などのオンチェーンデータを確認するのがおすすめです。チームの説明責任と実際の取引の状態は、見た目の印象に左右されにくい判断材料になります。
Q. 取引量が多ければ人気があると考えてよいですか?
A. そうとは限りません。同じ人物や協力者同士の売買で取引量を水増しするウォッシュトレードがあるため、売買に関わったウォレットの数や、取引の偏りもあわせて確認する必要があります。
Q. レアリティランクはどのサイトの数字を信じればよいですか?
A. 算出方法がサイトによって異なるため、どれか一つが正しいとはいえません。複数のサイトの順位を見比べ、大きくずれている場合は属性の数え方の違いを確認してください。
Q. 指標が良ければ価格は上がりますか?
A. 上がるとは限りません。指標は現在までの状態を示すもので、将来の価格を示すものではありません。市場全体の動きや運営方針の変更で、状況は短期間で変わることがあります。
この記事の出典
- Business Wire: Yuga Labs Closes $450 Million Seed Round of Funding, Valuing the Company at $4 Billion
- The Block: Yuga Labs sells CryptoPunks IP to nonprofit Infinite Node Foundation
- The Block: Azuki: 'We missed the mark' on Elementals NFT mint
- CoinGecko: Total NFT Wash Trading, 2022-2023
- Cointelegraph: NFT marketplace OpenSea to disable royalty enforcement tool
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




