音楽NFTは音楽業界を変えたか|3LAUの1,160万ドルから2026年までの検証

2021年2月、米国のDJ・プロデューサーの3LAU(ブラウ)は、アルバム『Ultraviolet』の発売3周年を記念したNFTのオークションで、約1,160万ドルを集めました。翌月にはロックバンドのキングス・オブ・レオンがアルバムをNFTとしても発売し、「NFTが音楽業界を変える」という期待が一気に高まりました。

旧版の記事は、音楽NFTが楽曲の価値を高め、中間業者を減らし、著作権を守ると紹介していました。しかし、その後の4年あまりで、期待どおりにならなかった点も多く見えてきました。この記事では、代表的な事例とその後を確かめ、音楽NFTに何ができて何ができないのかを整理します。

何が起きたか:2021年の音楽NFTブーム

3LAUのオークションは2021年2月25日から28日にかけて行われ、33点のNFTが出品されました。落札者は、特別仕様のアナログ盤や未発表曲、本人と一緒に新曲を作る権利などを受け取れる仕組みで、最上位の1点は約360万ドルで落札されています。旧版の記事は開催を「昨年2月」、会場を「Dshop」と書いていましたが、これは暗号資産の決済基盤Origin Protocolの販売サイトのことです。

2021年3月には、キングス・オブ・レオンが新作アルバム『When You See Yourself』を、NFTの販売サイトYellowHeartでも発売しました。1点50ドルのトークンには、デジタル音源や限定アナログ盤などが付き、最前列の席を生涯使える特別なNFTも用意されました。売上は約200万ドルと報じられています。

こうした成功例が続いたことで、多くのアーティストや新興企業が音楽NFTに参入しました。

ただ、この時期の高額落札は、2021年のNFTブームそのものに支えられていた面が大きいことも見逃せません。3LAUのオークションの落札者の多くは、音楽ファンであると同時に暗号資産の保有者で、当時は暗号資産の値上がりで手元の資金が膨らんでいました。旧版の記事は、ストリーミングで音楽が「ファストフード的」に消費されていることへの反動として音楽NFTを位置づけていましたが、実際の購買層は、音楽の聴き方を変えたいファンよりも、新しいデジタル資産に関心のある人が中心だったと考えられます。

楽曲の収益を分け合う試み:Royalの登場と撤退

3LAUは2021年、ファンが楽曲の収益の一部を受け取れる権利をNFTとして販売するサービス「Royal」を共同で立ち上げ、同年8月には1,600万ドルの資金を調達しました。ラッパーのNasなど有名アーティストの楽曲が販売され、ファンが「楽曲の共同オーナー」になれる新しい仕組みとして注目されました。

しかし、NFTの転売市場が冷え込むと、こうした権利の売買も低調になりました。Royalは2024年に、マーケットプレイスを終了してAIによる音楽生成をめぐる課題に取り組む方向へ転換すると発表しています。

楽曲の収益を受け取れる権利は、実質的に投資商品に近い性格を持つため、国によっては証券規制の対象になるかどうかが問題になります。多くのファンが気軽に買える形で広げることの難しさも、撤退の背景にあったと考えられます。

旧版の記述で確認が必要な点

旧版の記事には、裏付けを確認できない記述や、誤解を招く表現がいくつかありました。

  • 「音楽NFTは市場全体で圧倒的に多いカテゴリー」:取引額ではアートやコレクション、ゲームの方が大きく、音楽が最大の分野だったという根拠は確認できませんでした。
  • 「昨年は50近くの音楽NFT取引プラットフォームが立ち上がった」:この数字の出典は確認できませんでした。
  • 「MUSIC-INFINITY」や特定の音楽家に関する記述:サービスの内容や発言を一次情報で確認できませんでした。

音楽NFTに限らず、ブームの最中の記事には、宣伝的な情報が検証されないまま含まれることがあります。数字や固有名詞は、公式発表や主要な報道で確かめることが大切です。

NFTは音楽の著作権を守るのか

旧版の記事は、NFTの分散性や改ざんの難しさによって「音楽著作権をよりよく保護できる」と書いていました。しかし、NFTは曲のファイルのコピーを防ぐ仕組みではありません。NFTが記録するのはトークンの持ち主で、音源そのものは再生できる形で公開されていれば誰でも複製できます。

また、NFTを買っても、その曲の著作権が買い手に移るわけではありません。曲を使う権利の範囲は販売時の条件で決まり、多くの場合は個人で楽しむ範囲に限られます。

違法な複製や配信への対策は、これまでどおり著作権法に基づく削除要請や、配信サービスの権利保護の仕組みが中心です。NFTは、誰が正規に購入したかを示す記録として使える一方で、著作権の保護を代わりに担うものではないと理解しておく必要があります。

2026年時点で音楽NFTはどう使われているか

2021年のような高額取引はほとんど見られなくなりましたが、音楽NFTの使い方が消えたわけではありません。ファンクラブの会員証、ライブの記念品や入場の証明、限定音源の購入者向けの特典など、ファンとの関係づくりの道具として使われる例が中心になっています。

こうした使い方では、NFTを転売して利益を得ることよりも、アーティストを応援した証しを持つことや、特典を受け取ることに価値が置かれます。旧版の記事が挙げた「中間マージンの削減」についても、販売サイトの手数料や宣伝の費用は依然としてかかるため、「中間業者がいなくなる」というより「アーティストが直接販売する選択肢が増えた」と捉えるのが実態に近いでしょう。

一方で、音楽の聴き方の中心は今も定額制の配信サービスです。音楽NFTは配信を置き換えるものではなく、熱心なファン向けの追加の選択肢という位置づけになっています。

ファンとして音楽NFTを買う前に

  1. 何が手に入るのか:音源のダウンロード、特典、イベントへの参加権など、具体的な内容を確かめます。
  2. 特典はいつまで続くのか:運営が終了すると特典も受けられなくなる場合があります。
  3. 公式の販売か:アーティストの公式サイトやSNSで告知されたものかを確認します。有名アーティストの名前を使った偽物の販売もあります。
  4. 収益を分配するとうたう商品:「楽曲の収益が受け取れる」という商品は投資に近い性格を持ち、元本の保証はありません。

NFTを購入するときのウォレットの扱いはウォレットの安全対策の記事を参考にしてください。

日本で音楽NFTを扱う際の注意点

日本で楽曲をNFTとして販売する場合、権利関係の確認が欠かせません。1つの楽曲には、作詞・作曲をした人の著作権のほか、歌手や演奏者の権利、録音した音源を作った人(多くはレコード会社)の権利が関わります。アーティスト本人であっても、レコード会社や著作権管理団体との契約によっては、自由にNFTにできない場合があります。

購入者の立場では、楽曲の収益を分配するような商品は、その仕組みによっては金融商品取引法の規制対象になり得ます。国内で販売されているものは、販売事業者がどのような法的な整理をしているかを確認すると安心です。音楽NFTを売って利益が出た場合の課税や、暗号資産で支払ったときの損益の扱いにも注意が必要です。

よくある質問

Q. 3LAUのNFTはいくらで売れたのですか?

A. 2021年2月25〜28日のオークションで、33点のNFTが合計約1,160万ドルで落札されました。最上位の1点は約360万ドルでした。

Q. 音楽NFTを買うとその曲の著作権も手に入りますか?

A. 原則として手に入りません。使える範囲は販売時の条件で決まり、多くは個人で楽しむ範囲に限られます。

Q. 楽曲の収益を受け取れるNFTはどうなりましたか?

A. 代表的なサービスだったRoyalは、2024年にマーケットプレイスの終了を発表しました。収益分配型の商品は投資に近い性格を持ち、規制上の扱いも課題になります。

Q. 音楽NFTは今も販売されていますか?

A. 販売されていますが、高額取引は少なくなりました。会員証や記念品、限定特典など、ファンとの関係づくりの道具として使われる例が中心です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。