【要約】
・CoinbaseがS&P500に加わり、暗号資産市場のマイルストーンに
・米中関係の好転や米国の規制利好が追い風となり、暗号資産市場が反発
・RWA(現実資産のトークン化)をめぐる香港の大企業や金融機関の動きが活発化
・米国ではETFなどを通じた機関投資家の暗号資産参入が進み、香港は合規性重視でRWAを加速
・機関投資家が「FOMO(乗り遅れたくない)」の姿勢を見せ始め、グローバル規模での資金流入が期待される
Coinbase躍進S&P500が示す新時代
Coinbase躍進S&P500
2025年5月13日、米国最大手の暗号資産取引所であるCoinbase Globalが、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの発表によりS&P500に編入されることが明らかになりました。これは既存のDiscover Financial Servicesが買収に伴い除外される形で、5月19日の取引開始前から正式に入れ替えが行われます。暗号資産業界の企業がS&P500に加わるのは初めてであり、業界にとって大きな里程標(マイルストーン)となりました。
マクロ環境と暗号資産市場
時を同じくして、米中両国が日内瓦で行った交渉で関税休戦協定を結び、互いの輸入品に課していた関税を一時的に下げる方針が示されました。これを受け、S&P500の先物やナスダック指数は大幅上昇。暗号資産市場も全体的に上向き、特にイーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)などのアルトコインに注目が集まっています。
暗号資産企業への評価
Coinbaseは2012年に設立され、合規性を重視した運営方針により米国最大の暗号資産取引所へと成長してきました。2021年にはNASDAQへ上場し、当日は株価が一時429.54ドルまで急騰したことでも話題を呼びました。こうした基盤を持つCoinbaseがS&P500に加わることは、暗号資産がメインストリームの金融市場でより認知され、評価され始めた証と言えます。短期的に直接の価格上昇効果があるかは未知数ですが、長期的には機関投資家による追従や、他の暗号資産企業のIPO(新規株式公開)にも影響を与えるでしょう。
米国と香港のRWA戦略、企業動向が活発化
米国機関投資家の動き
米国では、新任のSEC(証券取引委員会)委員長が暗号資産市場の規制枠組み整備を主要課題とする方針を示したほか、大手投資ファンドのベライド(BlackRock)などがETHステーキング関連でSECと協議しているなど、肯定的な話題が続いています。特にETFを通じた機関投資家の参入は、ビットコインやイーサリアムなどの主要トークンの需要増に直結すると見られており、実際に複数の企業が積極的に暗号資産を購入・保有しています。
香港で進むRWA(現実資産のトークン化)
これに対し、香港は規制要件が厳密な一方で、合規を前提にRWAの利用を推進する姿勢を見せています。RWAとは、太陽光発電などの実物資産や証券などをブロックチェーン上でトークン化し、24時間グローバルに取引できる形態に変換する取り組みです。香港金融管理局(HKMA)が進めるEnsembleプロジェクトを軸に、デジタル資産の試験運用や法整備が行われ、企業が実用化に動き出しています。
大手企業と金融機関が示すRWAへの意欲
京東(JD.com)の事例
Eコマース大手の京東(JD.com)傘下には、港元連動の安定コイン(JD-HKD)を発行する構想があり、香港金管局のサンドボックスでテストを進めています。さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギー分野でRWAを検討しており、複数の関連ポジションの採用を進めるなど、本格的に動き出しているのが特徴です。
蚂蚁数科(Ant Group)の事例
モバイル決済サービスのAlipayを展開する蚂蚁数科(Ant Group)は、すでに光伏(太陽光)資産のRWAプロジェクトを成功させたほか、ConfluxやSuiといったブロックチェーンプロジェクトとも連携し、グリーンエネルギー関連のRWA事例を積み重ねています。技術基盤の「二本柱」として、企業向けに提供するブロックチェーンプラットフォームやzk技術を活用した性能向上策を打ち出し、香港や海外におけるRWA拡大を目指しています。
金融機関の取り組み
国泰君安国際やHashKey Chain、中国碳中和などの金融関連企業も、香港証券監督管理委員会(SFC)のガイドラインに沿った形で代替資産のトークン化を進めています。例えば、HashKey Chainは大手保険資産運用会社と協力してデジタル化されたMMF(貨幣市場ファンド)を開発。すでに1億ドル規模の申込があったことが話題となりました。また国泰君安国際は、構造的に複雑な金融商品を含む証券類のトークン化を扱う計画を進め、香港での承認を得ています。
米国のETFと香港のRWA、それぞれのアプローチ
米国:市場牽引型の暗号資産導入
米国は資本市場が巨大で、明確な合規のもとETFや上場企業の暗号資産保有を通じて資金が流入しやすい特徴があります。ベライド、高盛、J.P.モルガンなどがRWAや暗号資産関連商品を立ち上げる中、CoinbaseやStrategyといった企業は上場企業として株式市場でも注目を集めています。こうした背景から機関投資家による「FOMO(機会を逃す恐怖)」が強まり、より大量の資金が暗号資産領域に流れ込む可能性が高まっています。
香港:合規とサンドボックスによる慎重な拡大
香港は金融センターでありながら、規制遵守と投資家保護を重視するために、RWAの導入プロセスは段階的に進められています。ETFも徐々に整備が進んではいますが、米国に比べると投資家からの資金流入はやや小規模です。その代わり、再生可能エネルギーなど実体経済に直結する資産をトークン化し、グローバル市場との懸け橋になる動きが台頭しています。今後、香港を拠点とする大手企業が合規の枠組み内でプロジェクトを本格始動させれば、新たな資金流入の可能性が期待されます。
ニュースの解説
CoinbaseがS&P500に編入されたことは、暗号資産業界が伝統的な金融市場で本格的に評価を受けるターニングポイントとなりました。さらに、香港でのRWA推進や米国企業によるETF・現物保有など、地域ごとに異なるアプローチが展開され、機関投資家の「FOMO」が加速する見通しです。今後は、合規性のハードルをクリアしつつ、ブロックチェーン技術による効率化や新たな金融スキームの創出がいっそう注目を集めるでしょう。暗号資産市場は世界的に成熟度を高めつつあり、今まさに拡大局面の入り口に立っていると言えます。