米商品先物取引委員会(CFTC)は2023年3月27日、Binanceを運営する3法人と創業者Changpeng Zhao氏らを相手に、米国の連邦裁判所へ民事訴訟を起こしました。米国顧客への暗号資産デリバティブの提供と、登録・本人確認などの規制を避けたとする主張が中心でした。
この事件は提訴時点で止まっていません。同年11月に和解案が公表され、12月には裁判所が同意命令を出したとCFTCが発表しています。当初の訴状の主張、Binance側の反論、その後の処理を分けて振り返ります。
提訴日は2023年3月27日、CFTCによる民事事件
CFTCの発表によると、提訴先はイリノイ州北部地区連邦地方裁判所です。対象の法人はBinance Holdings Limited、Binance Holdings (IE) Limited、Binance (Services) Holdings Limitedの3社。Zhao氏に加え、元最高コンプライアンス責任者のSamuel Lim氏も訴状の対象となりました。
ここでの「提訴」は、商品取引所法とCFTC規則の違反をめぐる民事の執行手続きです。訴状が提出された時点で、記載されたすべての行為について刑事有罪が確定したという意味ではありません。後に司法省が公表した刑事事件とは、当局も法的な手続きも分けて考える必要があります。
旧記事にあった3月28日という日付ではなく、CFTCが公表した米国での提訴日である3月27日を基準にします。また、当時CEOだったZhao氏の肩書を、現在も変わらない役職として扱うことも避けます。
この事件で問題とされたのは、暗号資産そのものが新しい技術であることではなく、米国顧客にどのような取引を提供し、その際に必要な規制対応を行っていたかという点です。NFT一般の発行や、あらゆる暗号資産取引を一律に扱う判断ではありません。
主な争点は登録義務と、米国顧客へのアクセス制限
提訴時のCFTCの説明は、Binanceが米国の顧客に商品デリバティブ取引を提供しながら、必要な登録を行わず、本人確認などの管理も十分に実施していなかったというものでした。デリバティブは、資産の価格などに基づく先物やスワップ等の取引を指し、現物をそのまま売買する取引とは区別されます。
CFTCは特に、取引額の大きな米国顧客を維持するため、制限を迂回する方法を案内したと主張しました。VPNや海外法人名義の口座などに関する記述は、その規制回避の主張の一部です。本記事は、当局がどの行為を問題にしたかを説明するもので、制限を避ける手順を案内するものではありません。
また、自動的にメッセージが削除される通信手段を使い、米国顧客への対応の記録を残さないようにした、という主張もありました。メッセージアプリを使ったという事実だけで違反となるのではなく、何のために、どの業務で使ったと当局が主張しているかが論点です。
訴状に出てくる個別の会話や顧客に関する指摘を読む際は、発言者、時期、前後の文脈を確認する必要があります。規制当局の主張を紹介する段階と、後の命令で認定された内容を説明する段階を混ぜないことが、事件を理解する基本になります。
Binance側は同日、本人確認と米国ユーザー制限を説明
Zhao氏は2023年3月27日の公式ブログで、訴状の事実の示し方が不完全であり、多くの問題の捉え方に同意しないと反論しました。米国ユーザーの利用を制限する方法として、本人確認で得る国籍、IPアドレス、携帯電話事業者、端末情報、入出金に関する情報などを挙げています。
その説明には、一般的に使われる米国外のVPN接続先もIP制限に含めると記されています。したがって、単にIPアドレスだけで判定していた、あるいはVPNなら制限を必ず回避できた、と同社の反論を要約するのは正確ではありません。
同ブログは、従業員の短期売買や未公開情報に関する社内ルールも説明しました。ただし、これは提訴時点の当事者の見解です。対策があるという説明と、その対策が対象期間に実際に十分機能していたかは、別に検討すべき問題です。
この反論を残すことは、後の裁判所命令を否定することではありません。3月には何が争われ、11月以降にどのような解決へ進んだのかを時系列で読むための資料です。過去の反論だけをもって、CFTCの事件が根拠なく取り下げられたと理解することもできません。
11月の和解案を経て、12月に裁判所命令が公表された
2023年11月21日、CFTCはBinanceとZhao氏が同意命令案に合意したと発表しました。この段階では裁判所の承認が必要な案でした。その後、12月18日の発表で、裁判所が和解を承認し、差止めや金銭的措置を含む同意命令を出したと説明しています。
CFTCによる命令の説明では、BinanceとZhao氏による商品取引所法・CFTC規則の違反が認定されています。米国顧客の勧誘や、本人確認の対象とされないサブアカウントを通じた取引などについても言及があります。このため、提訴当初の「疑惑はまだ解決していない」という説明だけを現在も残すのは不適切です。
金額は法人と個人で分ける必要があります。Binanceには不当に得た取引手数料13億5,000万ドルの返還と、13億5,000万ドルの民事制裁金、合わせて27億ドルが命じられました。Zhao氏本人への民事制裁金は1億5,000万ドルです。
また、Lim氏には別の命令で150万ドルの民事制裁金が課されたと公表されています。法人とZhao氏の合計28億5,000万ドルという見出しに、Lim氏の分まで含まれているわけではありません。これらは命令・合意の金額であり、本記事が全額の納付を確認したという意味でもありません。
司法省の刑事事件と43億ドル超の金額は単純に足さない
同じ2023年11月21日、米司法省は別の刑事手続きについて発表しました。Binance Holdings Limitedは銀行秘密法、送金事業の未登録、制裁関連の違反について有罪を認め、Zhao氏も有効な資金洗浄対策を維持しなかったことについて有罪を認めてCEOを辞任した、と説明されています。
司法省が示した法人の合意額は、没収と刑事罰金を合わせて約43億1,613万ドルでした。CFTC、FinCEN、OFACとの解決も調整されており、司法省は他当局との支払いに約18億ドルを充当する旨を説明しています。
このため、CFTCの27億ドルと司法省の約43億ドルを、そのまま別々の追加負担として足すと、調整された支払額を重複して数えるおそれがあります。記事の数字を比べる際には、どの法人・個人に対する、どの種類の支払いなのかを確認する必要があります。
刑事事件での有罪答弁と、CFTCの民事事件における同意命令も別の出来事です。両方に共通する背景があっても、一方の手続きの内容をそのまま他方の判断として記述しないことが重要です。ここではCFTC事件の理解に必要な範囲を説明し、関連する全事件の経過を網羅するものではありません。
金銭的措置だけでなく、口座管理と統治の是正も論点
CFTCの12月発表は、違反の再発を禁じるとともに、改善した管理体制についての確認・証明を求めたことも説明しています。本人確認は主口座だけの問題ではなく、サブアカウントにも適用され、不適格な口座を排除する対応が含まれます。
さらに、独立したメンバーを含む取締役会、コンプライアンス委員会、監査委員会などの統治体制に関する対応も示されました。支払額が大きいという点に加えて、誰が取引を監督し、制限の抜け道をどう防ぐかまで対象にした事件と読めます。
ただし、命令に是正が書かれていることと、現在のすべての業務に問題がないと第三者が確認したことは同じではありません。本記事では、2026年9月時点の全口座や内部統制を監査していません。過去の処分を、現在の安全性を一律に保証する情報にも、すべてのサービスを一律に評価する情報にも置き換えません。
この事件を調べる際は、まず提訴時の主張を読み、当事者の反論を確認し、その後の和解と裁判所命令へ進むと経過を追えます。古い見出しだけで判断せず、発表日と手続きの段階、対象法人、命じられた措置をそろえることが、誤解を減らす読み方です。
よくある質問
Q. CFTCによる提訴日はいつですか。
A. CFTCの公式発表は2023年3月27日です。イリノイ州北部地区連邦地方裁判所に民事の執行訴訟を起こしました。
Q. CFTCの事件は提訴されたままですか。
A. いいえ。2023年11月の和解案を経て、同年12月18日にCFTCは裁判所が同意命令を出したと公表しています。提訴時の主張と、その後の命令を分けて確認する必要があります。
Q. 27億ドルと43億ドルを足せば支払総額になりますか。
A. 単純には足せません。CFTCと司法省などの解決には支払額の調整があり、法人と個人の負担も異なります。また、命令額の公表と完納の確認は別です。
この記事の出典
- CFTC:2023年3月27日の提訴発表
- Binance:Zhao氏による提訴当日の反論
- CFTC:2023年11月21日の和解案公表
- CFTC:2023年12月18日の裁判所命令に関する発表
- 米司法省:2023年11月21日の刑事事件の解決
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




