8月17日 仮想通貨ニュース要点

▽ 要約

マクロ:FRBが特別監督を撤廃し通常監督へ回帰。
イーサリアム:BitMineが6億ドル追加、TVL950億超。
ETF:現物はBTC・ETHとも資金流出が継続。
IPO:GeminiはGEMIでNasdaq上場を目指す。

規制やフローが大きく動いた8月17日仮想通貨ニュースを一次情報ベースで総括し、FRBの監督撤廃、BitMineのETH買い増し、ETF資金動向、GeminiのIPO計画までを日次で解説する。

マクロ・規制の主要トピック

FRBが銀行の暗号資産活動に対する特別監督を撤廃したため、銀行の暗号事業は通常監督に回帰し規制不確実性がやや後退した。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、暗号資産やフィンテック等の新興活動を対象にした2023年の特別監督プログラムを取り下げ、従来のリスク管理の枠組みに統合するとした。これにより、銀行は個別の“特管”ではなく既存の監督当局との定常対話に戻る。一方で、AML/CFTやオペリスク基準などの実務要求はむしろ厳格化が続く見込みだ。

また、SEC関係者は議会の新法を待たずにブロックチェーン規則整備に踏み込めると発言し、規制当局の裁量幅が引き続き市場の不確実性要因であることを示した。さらに、DCGは破綻処理を終えた子会社Genesisに対し1.05億ドル超の支払いを求めて提訴し、グループ内の精算問題が継続している。

FRBの監督撤廃が意味するもの

特別監督の撤回で“暗号=特異リスク”というレッテルが後退したため、銀行は通常の審査線表で暗号関連ビジネスを扱える余地が広がる。
これにより、保管、決済、トークン化預金、検証サービスなどの領域で、案件ごとに通常の審査・是正サイクルが適用される。もっとも、新規事業審査やモデルリスク管理の実務は厳格で、直ちに業務拡大が進むわけではない。

SECの姿勢とDOGE関連ETFの申請

SECはガイダンスやルール改定で即応できるとしたため、個別銘柄や商品ごとの審査が加速しうる。
暗号資産に関する拘束力あるルール形成が行政裁量で進む可能性がある一方、上場商品(例:DOGEのETF提案“GDOG”)は市場監視協定や投機性評価など個別審査が鍵になる。

DCG vs Genesisの余波

グループ内債権の清算を巡る争いが続くため、破綻処理後の資産配分と利払いの行方がなお不透明だ。
DCGは3AC由来の穴埋めに関する本票等を根拠にGenesisへ支払いを求める一方、Genesisは別件でDCG側を提訴済みで、相互請求の整理が長期化する可能性がある。

関連:暗号資産ETFの世界動向:資金流入と拡大

企業・資金調達の動き

上場・拡張・大型調達が重なったため、暗号×AI×市場インフラの再編が加速している。
取引所GeminiはNasdaq上場を目指しティッカー「GEMI」を申請、2025年上期は純損失2.825億ドル、調整後EBITDAは▲1.135億ドルと開示した。事業再編としてフロリダの“Moonbase”体制への移管計画や、RippleのRLUSD建ての最大7,500万ドル相当の与信枠も示された。
一方、Galaxy DigitalはテキサスのHelios施設をAI/HPC拠点へ拡張するためプロジェクト・ファイナンス総額14億ドルを確保し、CoreWeaveと最大800MW相当の長期利用契約で収益確度を高めた。
さらに、Google陣営はビットコインマイナーTeraWulfとAI計算資源で連携しつつ、アプリ配信では暗号アプリのコンプライアンス要件を明確化するなど、基盤からアプリ層までの関与を広げている。

GeminiのIPO計画

上場で資本市場アクセスを得るため、財務赤字を抱えつつも事業の透明性を高める意図がうかがえる。
収益性は依然課題だが、米国での暗号取引所上場はCoinbase、Bullishに続く三例目となる見通しで、競争と比較指標の明確化が進む。

GalaxyのAIデータセンター戦略

AI/HPC需要の急増を受け、マイニング設備の転用で高粗利の計算リース収益化を急ぐ動きが鮮明だ。
電力確保・液冷対応・長期契約という“3点セット”を押さえ、暗号とAIの収益ポートフォリオ分散を図る。

GoogleとTeraWulf、アプリ政策

計算資源の確保とアプリ審査の明確化が並行したため、Web3の実務とユーザー接点の双方で整序が進んだ。
非保管型ウォレットの扱いなど開発・配信の要件が更新され、エコシステム全体の信頼性向上が期待される。

市場データと資金フロー

ETHの基盤指標が改善する一方で、現物ETFは資金流出基調で相場の上値は重くなった。
DeFiLlama計測でETHのTVLは950億ドルを突破し2022年以来の高水準へ回復。機関フローでは、BTC・ETHの現物ETFが連日で純流出となる一方、ブラックロック(IBIT/ETHA)のみ純流入を確保した。加えて、BitMineは過去10時間で約6億ドルのETHを追加取得し、累計保有は約129.7万ETH(評価額約57.7億ドル)に達した。

ETHのオンチェーン基盤

手数料の平常化とL2拡大で利用環境が整い、TVL回復が価格の底堅さを支えた。
過去ピーク(約1,087億ドル)には届かないが、2024年後半以降の回復トレンドが継続している。

ETFフローの分岐

マクロ要因でリスク資産に調整圧力がかかったため、グロスでは流出、ただし大手の一部商品は流入を確保した。
投資家は商品間でコスト・流動性・貸株収益などを比較し乗り換えを行っている。

大口ポジションと現物買い

クジラの分散的な買いとレバレッジ増加が併存したため、短期ボラティリティの上振れ余地も残る。
個別には、12.5万ドルからの“浮盈ロール”で6.6万ETH相当まで積み上げたアドレス事例が観測され、高レバ戦略のリスクも改めて浮き彫りになった。

地域トレンド—韓国の過熱と構造

個人の高リスク志向と政策転換が重なったため、韓国市場は取引高と話題性で再浮上した。
韓国ではUpbitなど主要取引所の出来高が増加し、ETHやBMNR(BitMine株)、XRPの人気が継続。若年失業や資産形成期待が背景にあり、新政権の現物ETF容認や年金組入れ、KRWステーブル構想がセンチメントを押し上げている。

個人トレーダーの象徴的事例

超高レバの成功・失敗が拡散したため、短期志向の模倣行動が増えやすい環境にある。
NamseokheeやOhtanishoheiの事例は話題だが、同時に急落局面で大きなドローダウンも生じている。

銘柄選好とBMNRの位置付け

ETH連動ストーリーが強いため、BMNRは“レバ付きETH”のように見なされ個人資金を集めた。
ただし個別株は企業行動・開示リスクを内包するため、単純な代替にはならない点に注意が要る。

プロジェクト&リスク動向

新規上場や検証実験が進む一方で、ネットワーク安定性や商品リスクへの備えが求められた。
Binance関連ではRICEのTGE実施予定とUSELESSの先物上場、AlphaでDAMやMLKの取扱いが案内された。QubicはMoneroでの51%攻撃実験を公表し、短時間でのブロック再編・孤立が生じたと報告。JupiterはJLPから最大5.8億ドル相当のSOLをネイティブステーキングに回す方針を示し、WLFIの大口移動やWorld Liberty Finance関連ウォレットのETH/WBTC購入も観測された。著名投資家の高レバ新規ポジション再開も話題となった。

▽ FAQ

Q. FRBの監督撤廃で銀行の暗号ビジネスは増える?
A. 2025年8月の撤廃で通常監督へ回帰。ただしAML等の審査は厳格で拡大は段階的。

Q. BitMineはどの程度ETHを持っている?
A. 8月16日時点で約129.7万ETH、評価57.7億ドル。直近10時間で6億ドル追加。

Q. Geminiの上場コードと業績は?
A. NasdaqのGEMI。2025年上期は純損失2.825億ドル、調整後EBITDA▲1.135億ドル。

Q. ETHのTVLが伸びた背景は?
A. 2025年8月に950億ドル超。L2普及と手数料平常化で資産定着が進んだため。

■ ニュース解説

FRBの特別監督撤廃で制度面の過度な萎縮が和らいだ一方で、ETF資金は流出が続き需給は中立からやや弱含みとなった。
投資家の視点:規制面は“特管解除・実務厳格”の両面を織り込み、(1)ETFフローの継続性、(2)ETHのTVLと手数料動向、(3)大口アドレスのオンチェーン残高変化、(4)韓国市場のフロー過熱指標(乖離・出来高・プレミアム)をモニターしたい。分散とレバレッジ管理、発行体・取引所の信用リスク点検を優先。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:PANews,深潮TechFlow