2022年5月、「Goblintown.wtf」という名前のNFTコレクションが突然話題になりました。汚れた顔のゴブリンを描いた、あえて醜く作られた約1万点のNFTで、発行時の代金は無料でした。それが数日のうちに1点数ETHで取引されるようになり、6月初めにはOpenSeaの取引の大きな割合を占めるほどになります。
旧版の記事は、この人気を新型コロナによる引きこもり生活への共感と結びつけて解釈し、「制作者は匿名なので今後も分からないだろう」と書いていました。しかし制作者はその後すぐに明らかになっています。この記事では、何が起きたのかを報道で確かめ直し、なぜ人気が出たのか、その後どうなったのかを整理します。
何が起きたか:無料ミントから数日で急騰
Goblintownは2022年5月19日ごろ、イーサリアム上で公開されました。発行予定は1万点で、そのうち9,999点を誰でも無料でミント(発行)できる形でした。参加者が負担したのは、イーサリアムへの書き込みにかかるネットワーク手数料だけでした。
公開当初はほとんど注目されませんでしたが、SNSで話題が広がると取引が急増しました。報道によると、最低価格は5月21日の約0.038ETHから、6月初めには6ETHを超え、一時は8ETH台に達しています。6月2日には、Goblintownとそれをまねた派生コレクションが、OpenSeaの全取引件数の43.7%、ETH建て取引額の32%を占めたと伝えられました。
旧版の記事は価格を「3.9ETHから8.95ETH、およそ16600円」と書いていましたが、当時の8ETHは約1万5,000ドル、日本円で200万円前後にあたり、円換算は誤りでした。
なぜ人気が出たのか:「何もしない」ことのおかしさ
当時の多くのNFTプロジェクトは、将来の計画を示す「ロードマップ」を掲げ、コミュニティ用のDiscordを運営し、保有者への特典を約束していました。Goblintownはこれと正反対で、ロードマップもなく、公式サイトには意味の分からない言葉と落書きのような絵が並ぶだけでした。
2022年5月は、暗号資産の急落で多くのNFTの価格が下がり、華やかな約束をしたプロジェクトへの失望が広がっていた時期です。何も約束せず、下品で醜いことを隠さない姿勢が、市場を皮肉るジョークとして受け止められ、かえって注目を集めたと解説されています。無料で手に入るため参加しやすく、最初に受け取った人が値上がりで利益を得た話が拡散したことも、人気に拍車をかけました。
旧版は人気の理由を、コロナ禍で「怠惰な生活を送る人」が増えたことへの共感だと解釈していましたが、これは筆者の推測で、裏付けとなる資料は確認できませんでした。
匿名の制作者の正体:Truth Labs
公開当初、Goblintownの制作者は名乗っていませんでした。しかし約1か月後の2022年6月14日、NFTコレクション「Illuminati Collective」などを手がけてきた米国のスタジオTruth Labsが、自分たちが制作者だと公表しました。
旧版の記事は「匿名であるがゆえに今後も分かることはないでしょう」と書いていましたが、実際には1か月ほどで明らかになったことになります。制作者の公表後、最低価格は一時下がったと報じられました。匿名だからこそ成り立っていた「正体不明の面白さ」が薄れたことや、既存のスタジオが仕掛けた企画だと分かったことへの受け止めが分かれたためとみられます。
匿名のプロジェクトは珍しくありませんが、制作者が分からないまま購入するのは、運営の継続性や責任の所在が分からないリスクを抱えることでもあります。Goblintownの場合は既存のスタジオが関わっていましたが、匿名の制作者が資金を集めたあとに姿を消す「ラグプル」の事例もあるため注意が必要です。
派生コレクションとブームの広がり
Goblintownの人気が出ると、似た名前や絵柄の派生コレクションが大量に作られました。6月初めには、OpenSeaの取引額ランキングの上位を、本家とこうした派生作品が占める状態になりました。
派生コレクションの中には、本家と関係があるように見せかけたものも含まれていました。似た名前のNFTを間違えて買ってしまう例もあり、購入する際はコレクションの公式アカウントや、コントラクトアドレスが正しいかを確かめることが欠かせません。本家の人気が偽物を生む構図は、その後のNFTブームでも繰り返されています。
派生作品の多くは、本家の勢いが落ちると同時に取引がほぼ止まりました。ブームの最中には本家と派生の区別がつきにくく、取引額のランキングだけを見て「人気のコレクション」と判断すると、実態のない作品を高値でつかむおそれがあります。
Goblintownが示したNFT市場の教訓
Goblintownの急騰と下落からは、NFT市場の性質についていくつかの教訓が読み取れます。
第一に、NFTの価格は作品の見た目や約束された実用性よりも、そのときの話題性やコミュニティの熱量で大きく動くということです。醜さそのものが売りになったGoblintownは、その極端な例でした。
第二に、話題性で付いた価格は長続きしにくいということです。最初期に無料で受け取り、高値のうちに売った人は利益を得ましたが、話題の頂点で買った人の多くは大きな損失を抱えました。価格の上昇だけを見て後から参加するのは、最も損をしやすい立場です。
第三に、ブームが去った後も続くプロジェクトは、キャラクターやコミュニティを別の形で生かしているということです。Goblintownはゲームなどへの展開でブランドを保とうとしています。NFTを評価するときは、価格の推移だけでなく、運営が何を作り続けているかを見ることが大切です。
その後どうなったか:価格の下落と新しい展開
ブームの後、Goblintownの価格は大きく下がりました。データサイトによると、最低価格は2025年時点で数百ドル程度の水準で、ピーク時の8ETH台からは大きく離れています。
一方でプロジェクト自体は続いています。2023年には第2弾の配布を行い、取引で損をした「最も下手なトレーダー」を優先するという、Goblintownらしい皮肉の効いた条件を付けて話題になりました。2025年には、ブロックチェーンを使わない一般向けのゲーム「Goblintown: Really Hard Driving Game」をSteamなどで出す計画を発表しています。また、Goblintownにちなんだミームコインも登場しました(ゴブリンタウンのミームコイン$GOBの記事)。
NFTのブームが去った後、キャラクターの知名度を暗号資産の外の世界でも生かそうとする動きは、ほかの人気コレクションにも見られます。
無料ミントのNFTに参加する前に知っておきたいこと
- 無料でもガス代がかかる:Goblintownでも、ミントした人はネットワーク手数料を払っていました。混雑時は高くなります。
- 偽のミントサイトに注意:話題のコレクションほど、偽サイトでウォレットを接続させる詐欺が増えます。公式の告知元を確認してください。
- 値上がりは例外:無料ミントのNFTの多くは、価格が付かないまま終わります。Goblintownのような急騰はまれな例です。
- 税金:日本の居住者がNFTを売って利益を得た場合、所得税の対象になり得ます。
NFTを無料で受け取る方法と注意点はNFTを無料で手に入れる方法で詳しく解説しています。
よくある質問
Q. Goblintownとは何ですか?
A. 2022年5月にイーサリアム上で公開された、醜いゴブリンを描いたNFTコレクションです。約1万点のうち9,999点を無料でミントできる形で配布されました。
Q. Goblintownの制作者は誰ですか?
A. 公開当初は匿名でしたが、2022年6月14日に米国のスタジオTruth Labsが制作者だと公表しました。
Q. Goblintownの価格は今どうなっていますか?
A. 2022年6月初めには最低価格が8ETH台に達しましたが、その後大きく下がり、2025年時点では数百ドル程度の水準と報じられています。
Q. 無料ミントのNFTは必ず値上がりしますか?
A. しません。多くは価格が付かないまま終わります。Goblintownのような急騰は例外で、ミントにはガス代もかかります。
この記事の出典
- nft now:Goblintown WTF? Meet the World's Strangest NFT Project
- nft now:Goblintown Derivatives Have Taken Over OpenSea's Volume Chart
- FXStreet:Goblintown NFTs are selling like hotcakes, nearing 9 ETH floor price
- NFT Plazas:Goblintown NFT Founders Get Doxxed, Floor Price Fall Follows
- CoinDesk:NFT Collection Goblintown Will Prioritize the 'Worst' Traders in Second Season Mint
- The NFT Buzz:Goblintown: Really Hard Driving Game Gears Up for a Wild PC Launch in 2025
- CoinGecko:goblintown.wtf NFT Floor Price Chart
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




