2025年1月10日暗号資産動向|DeFAIとHyperliquidの論点

2025年1月10日昼の暗号資産市場では、米政府のBTC処分を巡る報道と、AIをDeFiに組み込むDeFAIへの関心が重なっていた。Hyperliquidの運営体制やKavaのAI構想も話題となったが、評価額、開発計画、実際の稼働状況は異なる情報である。当時の資料から、見出しだけでは分かりにくい条件と時系列を確認する。

政府保有BTCのニュースは、売却済みという意味ではない

シルクロード関連の約6万9,370BTCについては、米連邦地裁が2024年12月30日に出した命令が報道の根拠となった。文書の対象は判決執行の停止を求める申立てであり、裁判所は別件の情報公開訴訟の結果を受け、その申立てを却下している。

売却を妨げる手続き上の問題が解消されたという説明と、政府がすべてのBTCを売ったという説明には大きな隔たりがある。当時報じられた約65億ドルは資産の評価額で、現金化して受け取った代金ではない。命令には、何日の何時に、どの取引先へ、どの価格で売るかは書かれていない。

この判断を、就任前のトランプ氏が掲げていた保有方針を裁判所が否定したものと捉えるのも正確ではない。裁判所が扱った申立ての対象と、次の政権が検討する資産管理政策は別である。政策上の期待に反するように見えることと、その政策を裁判で退けたことを混同しないようにしたい。

また、売却には必ず数カ月かかる、場外取引になるので相場への影響は小さい、といった見方も、この命令だけでは裏付けられない。実施状況を確認するには、その後の処分に関する公表資料が必要になる。単に政府関連とされるウォレットが動いたという情報だけで、売買完了までは判定できない。

DeFAIの平均上昇率は、市場全体を表す指標ではない

1月9日のPANewsの記事は、DeFAIに分類した13プロジェクトを選び、平均上昇率を445.6%と紹介した。Hive、HotKeySwap、Bankr、Hey Anonなどの大きな上昇が注目された一方、同じ一覧には値下がりした銘柄も含まれていた。すべてのDeFAI銘柄が同程度に上がったわけではない。

この集計を読む際には、何を比較対象にしたかが重要になる。本文では多くの銘柄を直近7日間で比較しているが、HiveのBUZZは1月3日の登場以降の変化として記載されている。開始時点が完全にはそろっていないため、厳密な同期間の投資成績としてそのまま扱うことはできない。

平均は少数の大幅上昇に引っ張られる。仮に3銘柄の変化率がプラス900%、マイナス20%、マイナス30%なら、単純平均は大幅なプラスになるが、3つのうち2つは値下がりしている。平均だけでなく、分布や中央値、選ばれなかった銘柄の扱いも確かめると、数字の意味をつかみやすい。

さらに、この数値は紹介対象となったトークンの価格変化であり、AIが資産を運用して得た利回りではない。利用者数、預かり資産、手数料収入の伸びを示すものでもない。サービスの成長と、関連する銘柄の売買の活発さを分けて評価する必要がある。

DeFAIでは、会話の回答と取引の実行を分けて見る

DeFAIは、自然な文章での指示やAIによる情報整理を、DeFiの操作につなげる取り組みを指す。例えばDWF Labsの1月6日付HeyAnon提携発表では、会話形式のインターフェース、複数段階の処理、調査機能が紹介されていた。どの機能も同じ権限で動くわけではない。

相場情報を要約して表示するだけなら、直接資金を動かす操作とは異なる。一方、交換や預け入れを実行する機能では、対象の資産、数量、手数料、接続先の条件が結果に関わる。画面上で分かりやすく答えられることと、希望どおりの取引が成立することは別々に確認したい。

自動化によって手順を短くできても、取引先の契約や資産の価格変動まで消えるわけではない。途中で処理が失敗した場合にどの状態で止まるのか、再実行すると重複した取引にならないかなども、使いやすさを左右する。利用者が何を許可したかを後から確認できる記録も重要になる。

プロジェクトが将来の高度な運用を紹介していても、その段階で誰もが全機能を利用できるとは限らない。招待制、試験運用、正式提供の違いを確かめ、トークン購入をサービス利用の実績や収益保証と取り違えないようにしたい。

Hyperliquidの議論は、参加条件と検証可能性が焦点

The Blockは1月8日、Hyperliquidのバリデーター体制に対する批判と、Hyper Foundation側の説明を報じた。同報道は当時のバリデーター数を16とし、参加枠を買えるのではないかという疑いに対して、運営側がテストネットでの実績に基づく選定だとして否定したと伝えている。

また、ノードのコードが非公開である点についても、運営側は当時の状態を認めたうえで、安全に公開できる段階でオープンソース化する方針を示したと報じられた。これは2025年1月の説明であり、現在のノード数や公開状況をそのまま表す情報ではない。

分散性を考える際には、ノードの台数だけでなく、運営主体が独立しているか、意思決定に関わる持分が偏っていないか、新しい参加者がどの条件で加われるかを見る必要がある。参加者が増えても、実質的に同じ主体が管理していれば、台数ほど独立性が高まらない場合もある。

コードの公開は外部から仕組みを調べるための材料になるが、公開されただけで安全性が証明されるわけではない。逆に、取引画面が高速で使いやすいという評価だけでも、合意形成や運営権限の分散を確認したことにはならない。運営側の説明と、外部から実際に検証できる情報を並べて見ることが大切だ。

1月10日昼の時点では、米雇用統計はまだ発表前

米労働統計局の公表予定では、2024年12月分の雇用統計は2025年1月10日午前8時30分、米東部時間に発表される日程だった。日本時間では同日22時30分であり、この記事の当初公開時刻である日本時間12時ごろには、まだ結果が出ていない。

一方、11月分の求人・離職動向調査、JOLTSは1月7日に公表されていた。同じ雇用関連でも、求人の数を扱う調査と、雇用者数や失業率を扱う雇用統計は異なる。発表済みの指標と、これから公表される指標を一括して「好調な雇用統計」とすると、何に市場が反応したのかが分からなくなる。

BTCの下落を説明する場合にも、時刻の確認が先に必要となる。日本の朝に観測された値動きを、その日の米国朝に初めて公表された数字の結果で説明することはできない。発表前の予想が取引に影響する可能性と、公表された結果への反応は区別しなければならない。

大口投資家が買い増したという情報も、集計対象のアドレス、観測期間、取引所内部の移動を含むかによって意味が変わる。大口保有量が増えたことだけで底値を確定したり、下落が短期で終わると結論付けたりすることはできない。価格目標を評価するときには、その前提が何かまで確認したい。

KavaのDeAI構想は、発表予定と製品紹介を時系列で整理

TradingViewに掲載されたCoindarの記事は、Kavaの1月9日付投稿を引用し、同月中にDeAIの説明資料、2025年のAIロードマップ、アプリへAIを組み込む製品を発表する予定だと紹介している。ここで示されていたのは今後の展開であり、発表項目がすべてその日に完成していたという意味ではない。

【後日の公式発表による補足】Kavaは1月17日、DeAIエージェントOrosの紹介記事を公開した。自然言語による操作を通じて、ステーキングやチェーン間の移動、資産管理を扱う構想を示している。この記事は1月10日より後に出たもので、当初のニュース時点に遡って実装済みとすることはできない。

DeAIは分散型AIを指す呼び方として使われ、AIと金融機能を組み合わせるDeFAIと重なる部分はあるものの、常に同じ範囲を意味するわけではない。基盤となる計算資源の話なのか、利用者が触る操作画面の話なのか、資産運用の処理なのかを確かめると、発表内容を比較しやすくなる。

AIへの進出を宣言するプロジェクトを評価するなら、名称変更や方針表明だけでなく、試せる機能、対応範囲、実行結果を確認したい。この日の各ニュースも、話題の大きさより、何が観測され、何が決定され、どこまで利用できたのかを分けることで理解が深まる。

よくある質問

Q. DeFAIの平均445.6%上昇は、AI運用の利回りですか?

A. 違います。PANewsが選んだ13プロジェクトのトークン価格について紹介した数値です。比較開始時点が一部異なり、市場全体の統一された指数や利用者の運用実績ではありません。

Q. 1月10日昼には米雇用統計の結果が出ていましたか?

A. 日本時間の昼には発表前です。12月分の雇用統計は日本時間1月10日22時30分の公表予定でした。1月7日に公表されたJOLTSとは別の調査です。

Q. Hyperliquidのバリデーターが16というのは現在の数字ですか?

A. 本文では2025年1月8日の報道に記載された当時の数字として扱っています。現在のネットワーク構成を示すものではありません。

Q. KavaのOrosは1月10日までに公式紹介されていましたか?

A. ここで参照したOrosの公式紹介記事は1月17日付です。1月9日の計画告知と、後日の製品紹介を分けています。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。