2025年3月14日の暗号資産ニュースでは、政治に絡む出資報道と、投資商品の資金動向、Ethereumの技術更新が並んだ。ただし出資の協議報道は成約ではなく、ETFの資産残高は新規流入額ではない。Pectraもメインネット導入に向けた検証段階にあった。当日までの資料をもとに、それぞれの到達点を整理する。
Binance.USへの出資報道と、CZが否定した範囲
3月13日のDecryptは、ウォール・ストリート・ジャーナルの報道として、トランプ大統領の家族側がBinanceの米国事業への出資について協議していると伝えた。対象として挙げられているのはBinance.USであり、Binance全体への出資が決定したという発表ではない。
同記事は、創業者のチャオ・チャンポン氏(CZ)がXで報道に反論し、自分はBinance.USの取引について誰とも協議していないと述べたことも紹介している。CZはこの時点でBinanceの元CEOである。発言の主体と役職を正しく示したうえで、報道された内容と本人が否定した内容を分ける必要がある。
本人が交渉への関与を否定することと、関係するすべての人の間で一切の協議がなかったと確認されることは同義ではない。反対に、匿名の関係者に基づく報道だけで出資が成立したともいえない。赦免を巡る話についても、交渉や見返りが確定した事実として扱う段階ではなかった。
政治に関係する企業取引では、契約の当事者、対象法人、取引段階が重要になる。3月14日時点の記事としては、出資報道と反論が存在したことを記録し、未公表の契約や将来の判断を推測で埋めないことが適切だ。
ETFの保有資産と、直近の資金流入は別の数字
CoinSharesの3月10日付週報は、集計対象のデジタル資産投資商品から前週に8億7,600万ドルが純流出したと報告した。ビットコイン関連商品の流出は7億5,600万ドルで、全体としては4週連続の流出だった。少なくともこの集計は、足元で一方向に資金流入が拡大していたという説明とは合わない。
この週報は米国の現物ビットコインETFだけを集計したものではない。対象範囲を保ったまま使う必要があり、世界の投資商品全体の数値を特定市場のETFの数値へ置き換えることはできない。同様に、運用資産総額と累積の純流入額も区別する必要がある。
運用資産には保有する資産の値上がりや値下がりが影響する。新規の資金が入らなくても価格が上がれば残高は増え、反対に資金が入った日でも価格下落で残高が減る場合がある。「大きな資産残高がある」という事実だけでは、その日に買いが優勢だったかは分からない。
ETFを通じてBTCに投資する経路があることは、すべての投資家がアルトコインから移ったことを意味しない。資金の出所や投資目的を確認せずに、ETFの規模だけから他の銘柄への需要が消えたと結論付けるのは早い。
ETH/BTCの弱さは、ETHのドル価格とは区別する
ETH/BTCは、ETHの価値をBTCに対して表した比率である。この比率が下がる場合、ETHがドル建てで下がっているとは限らない。ETHも値上がりしているがBTCの上昇率がさらに大きい場合にも、比率は低下する。逆に、両方が値下がりしていてもETHの下落が小さければ比率は上がる。
例えばETHがドル建てで5%上がり、BTCが10%上がる場合、比率の変化は1.05÷1.10となり、約4.5%低下する。これは計算の仕組みを示す仮の例であり、当日の実際の騰落率ではない。相対的な弱さと、保有資産のドル建て損益を混ぜないことが大切だ。
ビットコインの市場占有率も、分母に含める銘柄やステーブルコインの扱いで数字が変わる。ある指標が上がったことだけで、すべてのアルトコインの資金がBTCへ移ったとは判断できない。銘柄ごとの価格変化や新規供給も比率に影響するからだ。
そのため「アルトコインの時代が終わった」という結論を、単一の比率から出すのは難しい。技術開発、利用状況、流動性は銘柄ごとに異なる。Pectraのような技術変更も、ETHの相対価格とは別に、実際に何が変わるのかを見る必要がある。
PectraはHoodiでのテストを経て日程を決める段階
3月13日のEthereum開発会議ACDE第207回の記録では、新しい長期運用テストネットHoodiを3月17日に立ち上げ、3月26日にPectraを適用する方針が示された。Holeskyでは退出待ちの状況がテストを妨げており、検証者の退出処理を確認する新たな環境が必要とされた。
会議記録は、Hoodiでの適用が成功し、クライアント開発チームがテスト状況に十分な確信を持ってから、メインネットの日時を選ぶとしている。さらにHoodiの更新から少なくとも30日後という条件も示された。3月14日時点で「3月中旬にメインネットで始まる」と説明できる状況ではなかった。
テストネットの更新は、価値のある資産が動くメインネットでの更新に先立つ検証である。そこで新機能が動いても、一般利用者が使う環境へ同時に導入されたわけではない。テストで不具合や運用上の課題を見つけ、修正と再確認を行うために段階が分かれている。
日程の遅れだけを技術の失敗と決め付けることも、テスト開始だけを完成と呼ぶことも適切ではない。当時の到達点は、新しいテスト環境と確認手順が具体化した段階であり、最終日程の確定とは区別して追うべきだった。
アカウントとステーキングの改善は、仕組みごとに異なる
EIP-7702は、通常の外部所有アカウントが指定したコードの機能を利用できるようにする変更だ。複数の操作をまとめる処理や、別の主体による手数料の負担などを実装する土台になる。すべてのウォレットが自動的に新機能を提供するという意味ではなく、利用するソフトウェアや委任先の実装に依存する。
コードへ権限を委ねる以上、どの処理を許可するのかも重要になる。使いやすさが増すことと、不適切な委任先を選ぶ危険がなくなることは別である。技術仕様が提供する能力と、利用者が実際に受ける機能を分けて理解したい。
EIP-7251で変わるのは、検証者ごとに報酬計算などで使う有効残高の上限である。従来の32ETHに対し、新たな上限は2,048ETHとなる。最低の参加残高32ETHは維持されるため、参加に2,048ETHが必要になるわけではない。大規模運営者の検証者統合だけでなく、小規模運営者が報酬を有効残高へ組み込む用途も想定されている。
EIP-6110は、実行レイヤー側の入金情報をコンセンサスレイヤーで処理する仕組みを改めるものだ。入金が処理されるまでの遅延を短縮するが、検証者として稼働を始めるまでの待ち行列がすべて消えるという意味ではない。入金の認識と、参加資格を得て稼働する段階を一つの待ち時間として説明しないことが大切になる。
blobの拡張は、全取引の処理速度を50%上げる変更ではない
EIP-7691は、主にL2がEthereumへデータを載せるために使うblobの処理量を増やす変更である。1ブロック当たりの目標は3個から6個へ、上限は6個から9個へ変わる。目標は2倍、上限は50%増であり、何を比較するかによって増加率の説明が異なる。
これは、Ethereumのすべての取引が一律に50%速くなるという意味ではない。データを掲載できる量と、個々のアプリの処理時間や利用者が払う手数料には、それぞれ別の条件がある。容量拡大は混雑を緩和する材料になるが、実際の料金は需要やL2側の設計にも左右される。
2月14日の公式発表が挙げた11件のEIPは、2537、2935、6110、7002、7251、7549、7623、7685、7691、7702、7840である。例えば7549はアテステーションの構造、7685は実行レイヤーからの要求を扱う変更であり、それぞれを単にガス代調整やガバナンス改革と呼ぶと内容が伝わらない。
政策日程にも同様の区別が必要だ。2025年の予定として事前に公表された3月のFOMCは18〜19日の開催で、声明は会合最終日の米東部時間午後2時に公表する予定だった。3月18日を結果発表日とするのは1日早い。3月14日時点では、その後の決定内容もまだ分からない。政策も技術も、予定、検証、実施の段階をそろえて確認することが、市場ニュースを正確に読む基本になる。
よくある質問
Q. Pectraは2025年3月中旬にメインネットへ導入予定でしたか?
A. 3月13日の開発会議では、Hoodiでのテスト成功後に日程を選ぶ方針でした。3月中旬の導入が確定していたわけではありません。
Q. EIP-7251でステーキングの最低額は2,048ETHになりますか?
A. 最低額32ETHは維持されます。2,048ETHは変更後の最大有効残高です。
Q. ETFの資産残高が大きければ、資金流入も続いていますか?
A. 残高には価格変動が含まれます。直近の資金流入・流出を判断するには、対象商品と期間をそろえたフローデータが必要です。
この記事の出典
- Decrypt:Binance.USへの出資報道とCZの反論(3月13日)
- CoinShares:3月10日付資金フロー週報
- ACDE第207回:3月13日の会議記録
- Ethereum Foundation:Pectraテストネット発表
- EIP-7702:EOAのコード設定
- EIP-7251:最大有効残高の変更
- EIP-6110:検証者入金の処理
- EIP-7691:blob処理量の拡大
- FRB:2025年と2026年のFOMC予定
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




