香港のWeb3計画とMaker提案|2月21日の暗号資産ニュース

2025年2月21日前後、香港では金融機関とWeb3企業の協業が進み、米国ではドル入出金の再開や財政の還元構想が話題になった。一方、ナイジェリアの訴訟とSkyの予定外ガバナンス提案は、企業やプロトコルの責任を考える材料となった。当時の発表をたどり、金額や参加企業、実施段階を整理する。

香港ではステーブルコインの発行に向けた合弁計画が進んだ

2025年2月17日、Standard Chartered Bank(Hong Kong)、Animoca Brands、HKTは、香港ドルを裏付けとするステーブルコインの発行を目指し、合弁会社を設ける契約を結んだと発表した。香港金融管理局(HKMA)の新たな制度の下で免許申請を行う意向を示したもので、発表時点で発行の許可を取得したという内容ではない。

この計画に名前が挙がったのは銀行、Web3企業、通信事業者の3社だ。元記事に記載されていたCircleは、この合弁についての公式発表では参加企業に含まれていない。同じステーブルコイン分野の企業でも、別の協業案件と混ぜると発行責任や事業の構造を取り違える。

また、香港ドルとの連動を目指すことは、価格がどんな状況でも固定されるという約束とは違う。実際の利用を考える際には、準備資産の管理、額面で払い戻せる条件、発行者が果たす義務が重要になる。ブランドの知名度だけでは、利用者が持つ権利の範囲は分からない。

合弁の計画、制度に基づく申請、審査、発行、決済での普及には、それぞれ確認すべき進捗がある。2月のニュースを読む段階では、将来の利用構想を、すでに広く使われている送金手段の実績へ置き換えないことが大切だ。

Consensusで語られたRWAと香港の制度整備

Consensus Hong Kong 2025では、金融とブロックチェーンの接点が主要な話題となった。2月19日のPaul Chan財政長官の演説は、実世界資産のトークン化、AIとブロックチェーン、DeFiなどを挙げた。香港政府が2023年にトークン化グリーン債を発行し、2024年には複数通貨での発行へ進んだことも紹介している。

RWAのトークン化とは、債券など実在する資産に関する権利を、ブロックチェーン上の仕組みで扱う取り組みだ。ただし、トークンを発行すれば、その資産の信用リスクまでなくなるわけではない。権利を行使できる相手、利払いや償還の条件、移転の制限は引き続き重要になる。

香港の取引所制度については、SFCの2023年5月31日付通達が、新しい中央集権型の仮想資産取引プラットフォーム制度の施行日を同年6月1日と示している。「2024年以降に制度が始まった」とする説明では、開始時点とその後の移行措置を混同してしまう。

さらにSFCは2025年2月19日、ASPIReと呼ぶ5つの柱と12の施策からなるロードマップを公表した。これは制度の今後の方向を示す資料であり、含まれる構想がすべて同日に適用されたという意味ではない。政策の発表日と各制度の施行日は個別に追う必要がある。

Binance.USのドル再開は対象者へ順次提供

Binance.USは2月19日、米ドルサービスの提供を段階的に再開すると発表した。対象の顧客が銀行口座を連携し、ACHによって米ドルを入出金できるようにする内容で、今後数日で利用できる顧客を広げるとしていた。

公式案内には、ACHでの入出金の処理手数料を無料とすること、ドル建て取引ペアや定期購入を利用できることが含まれている。一方、利用できるのは条件を満たした顧客だ。「再開」という見出しを、すべての国・地域の利用者が同時に使えるという意味には読めない。

無料の範囲にも注意したい。入出金にかかる処理手数料がゼロという説明から、暗号資産を売買する際のすべての費用までゼロとは結論できない。取引手数料、交換時の価格差、注文の条件は、利用する機能に応じて別に確かめる項目となる。

また、Binance.USの銀行サービスに関する発表を、他地域のBinance利用者向けサービスの変更と混ぜないことも必要だ。同じブランドを含むニュースであっても、契約先の法人と適用される地域によって、利用できる機能は変わる。

ナイジェリアの訴訟は請求額と確定債務を分けて読む

Reutersは2月19日、確認した裁判資料に基づき、ナイジェリアがBinanceに対して795億ドルの経済的損失の補償と、2年分の税として20億ドルを求める訴訟を起こしたと報じた。両者の合計が815億ドルである。815億ドルにさらに20億ドルを足すと、税額を二度数えてしまう。

これらは訴えた側が求めている金額で、裁判所が支払いを命じた確定額として報じられたものではない。同様に、経済への損害を訴えていることと、どの行為がどの程度の損害を生んだかが司法判断で認められたことは区別しなければならない。

通貨の下落には複数の要因が関わり得る。訴訟のニュースを根拠に、一つの取引所の活動だけで為替の動きを説明するのは飛躍がある。ここで確認できるのは請求の内容であり、因果関係や責任の結論ではない。

米国でのサービス再開とナイジェリアでの請求が同時期に伝えられたことは、国ごとに事業環境が異なる例でもある。一方の国で使える機能が増えたからといって、別の国の係争まで解消したと判断することはできない。

Makerの予定外提案は担保条件と実行待ち時間を変更する内容

Makerから続くSkyのガバナンスでは、2月18日付で予定外の執行提案が掲載された。対象の一つはMKRを担保とするLSE-MKR-Aで、最大債務上限を2,000万USDSから4,500万USDSへ、清算比率を200%から125%へ変更する内容だった。安定化手数料は12%から20%へ引き上げるとしていた。

同じ提案には、GSM Pause Delayを30時間から18時間へ短縮する変更も含まれる。提案文は潜在的なガバナンス攻撃への予防を理由に挙げている。ただし、この説明があることだけで、具体的な攻撃が起きたと認定できるわけではない。

数値の意味も一方向ではない。清算比率を下げることは、同じ債務に求められる担保価値の最低水準を下げる変更だ。一方、手数料を上げることは借入を維持する負担に関わる。借りられる枠が拡大したという一点だけで、利用者にとってすべて有利になったとはいえない。

本記事で確認したのは提案の本文であり、掲載された変更案と、投票を経て実際に執行された状態は分けて扱う。元記事にあった反対者の発言制限についても、具体的な措置を確認できる記録を欠いたまま断定しない。透明性を評価するなら、提案理由、投票、実行までの時間、異論への対応をそれぞれ調べる必要がある。

DOGE配当はDogecoinの配布を決めた話ではない

2月19日、当時の現職大統領Donald Trump氏は、政府効率化を掲げるDOGEの支出削減による節約分の一部を国民に還元する考えに言及した。APは、20%を国民へ、別の20%を国の債務返済へ振り向ける構想を検討していると伝えた。

これは暗号資産Dogecoinを給付する決定ではない。政府組織の略称とトークンの名称が似ていても、財政上の還元構想と暗号資産の発行・配布は異なる。原文の「トランプ前大統領」「現政権はトランプ氏ではない」という記述も、この時点の状況と一致しない。

構想が話題になった段階では、対象世帯、金額、実施日まで確定した給付制度として扱えない。削減できると見込んだ額と、実際に予算上使える資金にも隔たりがあり得る。見出しに金額が示されても、そのまま受給できる権利が生じたわけではない。

価格を説明する物語には売却の証拠が必要

BTCの価格が上がりにくい理由を、破綻企業による「人為的な抑制」だけで説明する主張には注意が必要だ。売却の実績を論じるには、資産の種類、数量、時期、売却価格を裏付ける資料が要る。債権額を計算する基準価格を、実際の売却単価として扱うことはできない。

同様に、資金の移動を見ただけでは、その瞬間に市場で売られたかは分からない。送金の記録と売買の成立は異なる情報である。FTXの分配日程から、BTCが一定価格で売却され続けていると逆算することもできない。

Web3事業者の発信も、沈黙していれば成功するという法則では評価できない。根拠のない宣伝を控えることと、利用者に必要な変更や事故の情報まで伏せることは別だ。今回の各ニュースでは、発表者、対象、日付、実施条件が示されているかを確かめることが、強い言葉に左右されず内容を理解する助けになる。

よくある質問

Q. 香港のステーブルコイン合弁にCircleは参加していますか?

A. 2月17日の公式発表で挙げられた参加企業はStandard Chartered Bank(Hong Kong)、Animoca Brands、HKTです。

Q. Binanceへの815億ドルは裁判所が命じた支払額ですか?

A. ここで取り上げたReuters報道は訴訟の請求内容です。経済損失795億ドルと税20億ドルの合計で、確定判決による支払いとは区別されます。

Q. DOGE配当とはDogecoinのエアドロップですか?

A. 政府の支出削減で生じる節約分を還元する構想で、Dogecoinを配布する制度が決まったという意味ではありません。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。