2025年2月25日、BTCは9万ドルを割り込み、暗号資産市場の警戒感が強まった。Bybitの事件だけでなく、米国の関税や景気をめぐる不安も重なっていた。2月26日前後の情報をもとに、価格の観測、事業者の対応、投資家の予想、規制上の手続きを分けて整理する。
BTCは9万ドルを割り込み、複数の不安が重なった
2025年2月25日、ビットコインは9万ドルを下回った。Reutersが同日報じた時点では約87,170ドルで、ETHは約2,414ドルだった。いずれも一日の終値を確定した数字ではなく、配信時の市場価格である。取引所や観測時刻が違えば、記事に現れる価格にも差が出る。
同報道は、米国の関税政策や景気への不安に、Bybitの不正流出とミームコインをめぐる混乱が重なったと整理している。価格が下がったという観測と、何がどの程度の売りを生んだかという説明は別だ。一つのニュースだけで下落全体を説明できたわけではない。
原文にはDeepSeekの台頭や利上げへの警戒なども挙げられていたが、その日の暗号資産の売りに与えた寄与は確認できない。AI関連株への不安と暗号資産の下落が同時に見られたとしても、それだけで直接の因果関係が証明されるものではない。
市場ニュースでは、同じ時間帯の株価、金利、暗号資産を比較することが出発点になる。ただし、似た動きをしたというだけで同じ資金が移動したと推定せず、価格の事実と取材先による相場観を区別する方が状況を理解しやすい。
Bybitの流出と不足資産の補填は別の資金移動
Bybitでは2月21日、ETHとステーキング関連トークンが不正流出した。その後に同社がまとめた時系列では、24日にブリッジローン、大口の入金、相対取引による購入を通じてETHの不足を埋めた経緯が記されている。調達手段が複数あった点を踏まえる必要がある。
このため、「Bybitが市場で全量を買い戻す」という期待と、実際の資産調達を同一視することはできない。借入なら返済義務があり、顧客の入金なら顧客に対する債務も増える。ウォレットの残高が増えたことだけでは、会社が取引所の注文板でどれだけ買ったかは分からない。
一方、攻撃者が盗んだ資産を他の暗号資産へ交換する動きと、Bybit側が顧客への支払い能力を確保する動きも別である。ETHからBTCやステーブルコインへ交換した場合、それを直ちに銀行口座への現金化と呼ぶのは正確ではない。
元記事の「10万ETHを換金済み」「39.9万ETHを保有」という数字は、観測時刻と対象アドレスを照合できる原資料を確認できないため、本記事では確定値として掲載しない。保有量を著名人や財団と比べるより、どの資産がいつ移動し、何が未確認なのかを示す方が事件の理解につながる。
ETHの下落とレバレッジ解消をどう読むか
ETHの価格低下では、特定の水準を下回ったことが注目された。ただし、サポートと呼ばれる価格帯は、誰かが必ず買い支えることを約束した線ではない。チャートの期間や分析手法によっても水準が変わり、割り込んだ後の下落幅が自動的に決まるわけではない。
借入や証拠金を使う取引では、相場が逆方向へ動くと追加の証拠金やポジションの整理が必要になる。清算が重なれば値動きを増幅することはあるが、ある日の下落が特定の思惑で作られたロングの清算だけで起きたと判断するには、その取引を裏付ける資料が必要だ。
未決済建玉、出来高、清算額もそれぞれ異なる指標である。未決済建玉の減少は残っている契約が減ることを表すが、誰がどの理由で閉じたかまで直接示さない。出来高が増えたことから、新しい買い資金だけが流入したともいえない。
Bybitの購入期待が外れたためにETHが下がった、という原文の説明は、参加者全体の取引動機として断定しない。事件による警戒、全体相場、デリバティブの調整を分け、確認できた数字の範囲で評価する必要がある。
著名投資家の弱気予想は条件と期間が重要
2月25日のCoinspeakerは、Arthur Hayes氏が、ETFと先物を組み合わせた取引の解消によってBTCが7万ドルへ向かう可能性を述べたと報じた。これは同氏の見立てであり、7万ドルまで下がることが市場データで確定したという意味ではない。
一般に、現物側を保有し、先物側を売る取引では、両者の価格差が収益の源になる。価格差の縮小などで継続する魅力が薄れれば、現物側を売って先物の売りを買い戻す場合がある。ただし、ETF保有者がすべてこの取引をしているわけではなく、ETFの流出額だけから取引戦略の内訳は確定できない。
Quinn Thompson氏の見通しにも、期間の取り違えがあった。CoinDeskの2月24日付記事は、新高値を付けない確率について、3カ月なら80%、12カ月なら51%という同氏の見方を紹介している。元記事の「6〜12カ月で80%」とは異なる。
こうした確率は、本人が示した将来への評価として読むもので、同じ条件の試行から得た客観的な当選確率ではない。価格目標、対象期間、予想を変える条件が分からないまま数字だけを抜き出すと、発言の強さを誇張してしまう。
CardanoのETFは申請手続きで、承認ではない
米SECの2月24日付通知34-102475は、NYSE Arcaが提出したADAを対象とするGrayscale Cardano Trustの上場・取引の規則変更案を扱っている。取引所による提出は2月10日で、通知には修正案についての記載もある。
この段階で公表されたのは、提案について意見を求める手続きだ。投資商品が承認され、取引を開始したことを知らせる文書ではない。「SECが受理」と短く書く場合でも、申請の何が進んだのかを補わなければ、読者は承認と誤解しやすい。
また、ETFの申請が進むことと、その日のADAの売買需要が増えることには距離がある。将来の取扱窓口が広がる期待はあっても、承認前の段階で実際の運用資金が流入したとはいえない。市場全体が下落する日に申請ニュースが出ても、両者は矛盾する出来事ではない。
Upbitの3カ月制限は新規顧客の外部入出庫が対象
韓国金融委員会が2月25日に公表した資料によると、FIUはUpbit運営会社Dunamuに、3月7日から6月6日まで3カ月の営業一部停止を通知した。対象は停止期間中に新規登録する顧客の暗号資産の外部への入出庫で、2月26日時点では将来の期間に対する措置だった。
公式資料は、既存顧客は制限なく取引でき、新規顧客も暗号資産の売買・交換、ウォンの入出金は利用できると説明している。すべての利用者の売買を止める、あるいは新規顧客の口座機能をすべて止める内容ではない。
当局は、未届の海外事業者との取引禁止義務や、本人確認などの義務違反を挙げた。制度の変更として韓国の暗号資産取引を全面的に禁じたわけではなく、検査結果に基づく特定事業者への措置である。
この処分がどれほど市場全体の売りにつながったかは、告知だけでは分からない。対象顧客の範囲を確認せずに取引所全体の流動性が失われたと説明すると、処分の規模も相場への影響も過大に表してしまう。
手数料収益とトークンの値上がりを同じにしない
投機的な話題に加え、プロジェクトがどのように収益を得るかを見ることには意味がある。ただし、Hyperliquidの「手数料を全額買い戻しに充てる」という元記事の説明は採用しない。手数料の総額と、特定の基金へ配分されてHYPEの取得に使われる額を分ける必要があるためだ。
仕組みの補足として、参照した公式の手数料ドキュメントは、HLP、Assistance Fundなどへの配分を説明している。この資料は更新されるため、現在記載されている細かな配分や焼却の扱いを、2025年2月にそのまま実施されていた条件としては扱わない。
収益を評価する際には、取引量に手数料率を掛けた概算だけでなく、割引や還元、配分先を確認する必要がある。さらに、買い戻しがあっても、他の保有者の売りや供給の増加、需要の変化によって価格は下がり得る。利用実績があることは価格保証ではない。
AI関連や著名人の名前を冠したトークンについても、全銘柄を一つの下落率で表すことはできない。比較する銘柄と期間を決め、使われ方、収益、供給の条件を個別に見ることが、流行という括りだけで評価するより有用になる。
よくある質問
Q. Upbitはすべての顧客の取引を停止すると発表されたのですか?
A. 2月25日の通知は、対象期間に登録する新規顧客の暗号資産の外部入出庫を制限する内容です。既存顧客の取引や、新規顧客の売買・ウォン入出金は別の扱いでした。
Q. CardanoのETFは2月24日に承認されたのですか?
A. SECの通知は上場・取引に関する規則変更案の意見募集手続きです。商品の承認や取引開始を知らせる通知ではありません。
Q. 買い戻しの仕組みがあればトークン価格は下がりませんか?
A. 買い戻し以外の売買や供給変化も価格に影響します。手数料の総額、配分先、買い戻しに使われる額を確認し、価格保証とは分けて評価する必要があります。
この記事の出典
- Reuters:2月25日の市場下落
- Bybit:事件と対応の時系列(後日公表)
- Coinspeaker:Hayes氏の相場見通し
- CoinDesk:2月24日の市場記事
- SEC:Grayscale Cardano Trustの規則変更案通知
- 韓国金融委員会:Dunamuへの措置通知
- Hyperliquid:手数料の公式ドキュメント
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




