2025年1月の大統領就任を前に、TRUMPとMELANIAが相次いで登場した。短期間の値動きに加え、保有の集中、解除日程、送金の遅れも話題になった。ここでは1月21日前後の状況を振り返り、後日の検証や障害報告は日付を明示して補う。価格の評価額と現金収入、個人の提案と政府の決定を分けて見ていこう。
TRUMPとMELANIAは、就任前に相次いで登場した
トランプ氏がTRUMPを発表したのは米国時間2025年1月17日、日本では18日だった。続いてメラニア氏が米国時間19日、日本では20日にMELANIAを紹介した。The Blockの19日付報道は、同氏がTruth SocialとXで公式サイトとトークンのアドレスを案内したと伝えている。どちらも20日の大統領就任より前の出来事である。
著名人本人による発表は、発行元を確かめる材料にはなる。しかし、本人が紹介したトークンと米国政府の通貨は別だ。政治家の名前が付いていても、国が買い戻す約束や元本を保証する仕組みが生まれるわけではない。
TRUMPの公式説明では、初日に利用可能な数量が2億枚、3年間で総供給が10億枚となる設計で、関連する2社に80%が割り当てられている。ここで注目したいのは、当初市場に出る数量と、将来の供給が大きく違う点だ。
価格に流通量を掛ける時価総額と、最大供給を掛けるFDVは区別したい。同じ価格でも使う数量によって評価額は変わり、いずれも発行体が実際に受け取った売却代金ではない。急騰時の数字だけから、本人の手元資金が同じ額だけ増えたと考えることはできない。
大口アドレスの分析は、購入者全員の成績ではない
PANewsは1月20日、TRUMPの保有上位1,000アドレスについて、初回購入や売却を分析した。同記事は主要取引所のアドレスを除く集計で、対象アドレスが流通量のおよそ39%を保有していたと報告している。これは特定時点のチェーン上の観測であり、保有者全員への調査ではない。
アドレスの数をそのまま投資家の人数と読むこともできない。一人が複数のウォレットを使う場合も、一つの保管アドレスに多数の利用者の資産が集まる場合もある。保有が集中して見えることと、同じ人数の個人が市場を支配していることは同義ではない。
特に、保有量が大きいアドレスを後から選ぶ分析には標本の偏りがある。早く売って保有が減った参加者や、少額で取引した人は対象から外れ得る。上位層の購入額を、通常の参加者に必要な資金や平均的な利益へ置き換えるのは無理がある。
購入直後に大きな含み益が出た例も、売却して確定した利益とは異なる。板やプールの厚み、実際の売却量、手数料まで追う必要がある。また、発行直後の購入が速かったという事実だけでは、内部情報を使った取引と断定できない。
MELANIAの30日ロックは、全量の解除日を意味しない
当初のMELANIAの配分について、1月20日のOdailyは公式サイトを引用し、チーム35%、財務枠20%、コミュニティ20%、公開配布15%、流動性10%と報じた。The Blockも19日の報道で、チーム35%と財務枠20%を紹介している。ここで扱うのは発行時の説明である。
解除条件は、チーム分を最初の30日間はロックし、その後に一部を解除、残りを段階的に解除する計画と報じられた。The Blockによれば、チーム分の解除期間は13カ月で、毎月の解除を想定していた。30日という数字を、全供給が一斉に売却可能になる日として読むべきではない。
ロックの説明を比較する際は、総供給に対する割合なのか、チームへの割当分に対する割合なのかを確かめたい。例えば「チーム分の10%」と「総供給の10%」では、市場へ出る可能性のある数量が違う。
解除予定は、必ず売却が起きる予告でもない。売却可能な数量が増えることと、実際に売り注文が出ることを分ける必要がある。一方、解除日程だけを見ても価格の下支えは保証されない。需要や市場の厚みが変われば、解除前でも大幅に値下がりし得る。
取引の遅延とSolana全体の停止を混同しない
MELANIAの発表に前後してTRUMPの価格も大きく動いた。The Blockは19日、TRUMPが73ドルから38ドルへ下落し、その後52ドルまで戻した局面を報じている。これは同記事の観測時点の値動きで、全取引所に共通する確定終値ではない。
値下がりと新しい銘柄の登場が重なっても、下落した評価額の全額が新銘柄へ移ったとは限らない。価格は限られた売買でも変わるため、時価総額の減少を、そのまま現金の流出額として足し合わせることはできない。
【1月24日の事後報告】Coinbaseは、17日から20日にSolana関連の送受信負荷が同社の通常水準の最大30倍となり、処理基盤が追いつかなかったと説明した。ブロックの読み取りや残高処理の遅れが、利用者の入出金待ちにつながったという。
同社は21日22時37分PSTに解決済みと判定したとしている。日本時間では22日15時37分で、この記事の日付より後の経過に当たる。この説明はCoinbase側の処理についてのものであり、Solana全体が停止していたことの証拠ではない。送金の問題では、取引所内の処理待ちとチェーン上の取引状況を別々に確認する必要がある。
POWERを巡る誤情報は、発表元の取り違えだった
【1月22日の検証による補足】Radio Free AsiaのAsia Fact Check Labは、「トランプ氏がPOWERを公式に発行した」という情報を誤りと判定した。検証記事によると、PANewsが21日に引用したXアカウントは、トランプ氏本人の公式アカウントではなくファンアカウントだった。
そのアカウントは、自己紹介で本人の公式アカウントとは関係がないことを示していたという。したがって、確認された問題は発表元の取り違えである。「POWERという名前のトークンは一切存在しない」という意味ではない。
表示名、顔写真、投稿の見た目だけでは発行元を判別できない。公式サイトから案内されるアカウントと一致するか、投稿から誘導されたサイトのドメインは何か、同じ名称の別トークンではないか、と順に確かめたい。
第三者が共有したスクリーンショットは、文脈や投稿元の説明が切り落とされていることがある。また、公式を名乗る配布案内で秘密鍵やシードフレーズを求められても、入力してはいけない。トークンを受け取ることと、ウォレットを操作する秘密情報を他人に渡すことは別である。
Balaji氏の配布案は、政府の決定や法的解決ではない
1月20日にChainCatcherが紹介したBalaji Srinivasan氏の見解には、TRUMPを米国の市民や支持者に配るという案が含まれていた。例として、7,700万人に100ドル相当のロック付きトークンを渡す試算を示し、政治家と市民の経済的な利害を近づける発想を述べている。
この人数と金額を掛ければ77億ドル相当になる。ただし、当時の価格を前提とする評価額であり、政府が77億ドルの現金給付を決めたという話ではない。実施主体、対象者の確認方法、配布条件が確定した制度でもなかった。
同氏の説明には、配布によって利益相反への批判を解消できるという見方も含まれる。しかし、それは提案者の意見であり、裁判所や規制当局による法的判断ではない。配布対象が広がることだけで、公務と個人の資産保有を巡る論点が自動的に解決するとはいえない。
また、額面上100ドル相当とされるトークンを受け取っても、解除後に同じ金額で売れる保証はない。配布の話題を読む際には、提案、公式な募集、実際の配布を区別することが、偽の受取サイトへ誘導されるのを避けるうえでも大切になる。
DOGE訴訟では、当事者の主張と組織再編を分ける
1月20日、Public Citizen、State Democracy Defenders Fund、米国政府職員連盟は、トランプ氏と行政管理予算局を相手に連邦地裁へ提訴した。訴状はDOGEに連邦諮問委員会法(FACA)が適用されると主張し、構成員の見解の均衡、会議や記録への公開アクセスなどを求めている。
これは原告が裁判所に判断を求めた文書である。訴状が提出された段階で、DOGEの違法性が確定したわけではない。暗号化メッセージアプリの利用についても、訴状中の報道に基づく主張と、裁判で認定された事実を分ける必要がある。
一方、同日付の大統領令は、United States Digital ServiceをUnited States DOGE Serviceへ改称し、大統領府内に置くと定めた。政府外から助言する従来の構想を前提にした問題提起と、大統領令による組織の位置付けを、一つの説明で済ませることはできない。
この行政組織のDOGEと、暗号資産のDogecoinは別である。名前の連想や政治的な話題だけから、特定トークンに権利や収益が生まれるわけではない。就任期のニュースでは、私的なトークン事業、政策への提案、行政の決定、訴訟上の主張を分けると、何が実行され、何が未確定なのかを読み取りやすくなる。
よくある質問
Q. MELANIAは30日後に全部解除される計画でしたか?
A. 当時の報道は、チーム分のロック後に一部を解除し、残りを段階的に解除する計画を伝えています。総供給が30日後に全量解除されるという意味ではありません。
Q. POWERはトランプ氏の公式トークンですか?
A. RFAの1月22日の検証は、公式発行という主張を誤りと判定しました。引用された発表元はファンアカウントでした。
Q. Coinbaseの送金遅延はSolana全体の停止ですか?
A. 同社の事後報告は、送受信負荷の増加に自社の処理基盤が追いつかなかったと説明しています。チェーン全体の停止とは区別されます。
Q. TRUMPを市民に配る案は実施が決まっていましたか?
A. 紹介した内容はBalaji氏の提案です。政府の給付決定や公式の受取募集ではありません。
この記事の出典
- TRUMP公式:供給と配分
- The Block:MELANIA発表と当初の解除計画
- PANews:TRUMP上位保有アドレスの分析
- Odaily:1月20日のMELANIA配分報道
- Coinbase:1月24日のSolana送受信障害報告
- RFA:1月22日のPOWER誤情報検証
- ChainCatcher:Balaji氏の配布案紹介
- Public Citizenほか:1月20日提出のDOGE訴状
- ホワイトハウス:1月20日のDOGE大統領令
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




