2024年8月31日|決済トークン化と企業・DAOの収益を検証

2024年8月31日前後には、マスターカードの決済技術、ゲーム企業NetDragonの暗号資産取引、SafeDAOの新しい収益源が話題になりました。共通する言葉は「トークン」や「収益」ですが、カード情報の保護と投資用の暗号資産は異なり、企業の売却益とDAOの将来収入も同じ指標ではありません。三つのニュースを一次資料で読み直し、当時の発表内容と、その後に確認された進展を整理します。

マスターカードがインドで始めた決済パスキー

マスターカードは2024年8月29日、Payment Passkey Serviceをインドで先行導入すると発表しました。最初はJuspay、Razorpay、PayUなどの決済事業者や、加盟店、Axis Bankといった銀行と協力する試験導入です。同日から世界中のすべてのカード取引が切り替わったという内容ではありません。

狙いは、オンライン購入時の認証を簡単にしながら安全性を高めることです。利用者は対応する端末で指紋や顔などを使って認証し、従来のパスワードやSMSで届くワンタイムパスワードの入力に頼る場面を減らせます。現在の日本語公式案内では、端末上のPINを使う場合も説明されています。

ここで生体認証を使うことは、顔や指紋の情報を買い物のたびに加盟店へ渡すという意味ではありません。公式案内は、生体認証データが端末の外へ送信されず、マスターカードや販売業者とも共有されないと説明しています。本人の端末上で認証する仕組みと、決済に必要な情報の送受信は区別して理解する必要があります。

決済用トークンは、新しい投資銘柄ではない

この発表にあるトークン化は、実際のカード番号をそのまま扱う代わりに、代替の識別情報を用いる決済技術です。ブロックチェーン上で新しいコインを発行したり、利用者に値上がりを期待させる資産を配ったりする話ではありません。「トークン経済」という表現だけを取り出して、暗号資産市場への資金流入と結び付けるのは適切ではありません。

後日の進展として、同社は2026年6月1日、欧州の同社電子商取引の5分の3がトークン化されていると発表しました。2030年までの全面的なトークン化を目標とし、Click to Payや決済パスキーの展開も進めるとしています。この数値はマスターカードによる欧州での説明であり、世界の全カード決済の普及率ではありません。また、将来の目標を達成済みと読み替えることもできません。

日本語の決済パスキー紹介ページが存在する一方、実際に利用できるかはカード、加盟店、端末などの対応に左右されます。利用者にとっての確認点は、新しい投資機会を探すことではなく、自分の決済画面でどの認証方法が使われ、機種変更や端末紛失のときにどう復旧するかという点です。認証を簡略化する機能があっても、購入先そのものの信頼性を確認する必要は残ります。

NetDragonの5,100万元は暗号資産の売却益

NetDragonは2024年8月29日に中間決算を発表しました。後に公開された2024年中間報告書の注記では、上半期に暗号資産の売却益5,100万人民元を計上したことを確認できます。原記事にあった「約71億円」という換算は根拠を確認できないため使用せず、公式開示の通貨と金額にそろえます。

重要なのは、同じ注記に載っている2億9,000万元との違いです。こちらは売却した暗号資産の合計帳簿価額であり、売却益でも売却代金そのものでもありません。帳簿価額は会計上記録された資産の金額で、売却によって生じた利益とは分けて読む必要があります。米ドル表示の4,100万ドルも同じ帳簿価額の換算です。

さらに、同期間の暗号資産取得には約2億3,400万元、米ドル換算で約3,300万ドルを支払ったと記されています。取得と売却の両方があったことは分かりますが、この集計だけから購入日、売却日、個々の保有銘柄や全取引の利回りを確定することはできません。売却益を新たな取得費で単純に割り、年間の運用成績とするような計算は避けるべきです。

企業の暗号資産取引は、本業の利益と分けて見る

同社の2024年上半期の売上高は約33億元、会社所有者に帰属する利益は約4億元でした。暗号資産の売却益は、その中で生じた個別の会計項目です。ゲームや教育事業の利用者が増えた結果なのか、保有資産を売却した結果なのかを分けなければ、会社の収益力を読み違えるおそれがあります。

また、同社が示す非GAAP指標への調整には、無形資産の売却益を除く項目があります。開示された利益の合計と、特定項目を調整した指標では、何を含めるかが異なります。暗号資産で利益が出たという一つの事実から、会社全体の業績が改善したと断定したり、将来も同じ利益が続くと予測したりすることはできません。

今回確認した5,100万元は、2024年1月から6月までの期間に関する数値です。2026年現在の保有額や、会社の暗号資産取引の累計成績を表してはいません。その後の状況を知るには、最新の決算と注記を別途照合する必要があります。古い記事の金額を現在の評価額として扱わないことが、このニュースを読み返す際の基本になります。

後に公開された2024年年次報告書でも、暗号資産は取得原価から累積減損損失を差し引いて測定すると説明されています。同年には200万元の減損戻し入れが認識されました。これは上半期の売却益とは別の会計項目であり、売却益と評価の調整を区別して見る必要があることが分かります。

SafeDAOの提案は、Native Swaps収益の受け入れが出発点

Safeのコミュニティでは2024年8月29日付で、SafeDAOの初めての収益源を作るための提案が用意されました。対象は、Safe Walletに組み込まれたNative Swapsの収益です。Safe Ecosystem Foundationが商標のライセンスを使う仕組みを整え、そこから生じる収入をDAOの財務資産として受け入れるか、コミュニティで承認する内容でした。

したがって、Safe Walletを使う全員に一律の利用料を課すという説明では範囲が広すぎます。最初の対象は特定の交換機能の統合であり、Safe関連のすべてのサービスや、資産を保管するだけの操作をまとめて有料化する提案ではありません。元記事の「統合されたプロトコルにライセンス料」という短い説明だけでは、どの収入を誰が管理するのかが伝わりにくくなります。

提案は、交換手数料を受け入れ可能な資産で集め、その収益で市場からSAFEトークンを買い、承認後にコミュニティ管理の下へ置く流れを説明していました。これはDAOの資産形成に関する仕組みであり、SAFEを保有する個人全員へ現金を配当するという約束ではありません。収入が発生すること、DAOが管理すること、個人へ分配することはそれぞれ別の段階です。

Safeの提案は9月に承認、想定収入と実績は別

その後、SEP 44として投票段階へ進んだ提案について、公式フォーラムには2024年9月30日付で批准されたとの報告が掲載され、承認済みの表示も付いています。8月末の段階では提案だったものが、そのまま未決の状態で残ったわけではありません。ただし、承認を確認したことと、以後の全収入や送金を監査したことは同じではありません。

提案には、最初の月の収入をもとにした年換算で約250万ドルという試算もありました。これは一定の状態が続くと仮定した見積もりです。1年間で実際にその額を稼いだという決算数値ではないため、収益実績として掲載することはできません。出来高、対応ネットワーク、利用率、手数料条件が変われば、受け取る収入も変わります。

現在のSafe公式ヘルプでは、Native Swapsの手数料が取引規模やトークンの組み合わせによって異なることが説明されています。一般のペアとステーブルコイン同士の交換では区分が異なり、対象ネットワークの条件もあります。過去の提案の料率をそのまま現在の交換コストとせず、実行する取引に示された条件を確認する必要があります。

この日の三つの話題では、技術の名称、金額の単位、収益の帰属を具体的に確認すると意味が明確になります。決済用トークンを投資資産とせず、売却益を売上や現金残高とせず、DAOの収入を個人への配当としないことが、過去の記事から誤解なく情報を得るための要点です。

よくある質問

Q. マスターカードのトークン化は暗号資産の発行ですか?

A. この発表ではカード番号などの決済情報を代替の識別情報で扱う技術を指します。投資用の暗号資産やNFTを発行するニュースではありません。

Q. NetDragonの2億9,000万元は売却益ですか?

A. いいえ。中間報告書では売却した暗号資産の合計帳簿価額です。売却益は別途5,100万元と開示されています。

Q. SafeDAOの収入はSAFE保有者へ配当されますか?

A. 確認した提案はDAOの財務資産として収入を受け入れ、ガバナンスに従って配分するものです。個人保有者への一律の配当を約束した内容ではありません。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。