Solana圧縮NFTの1,560万点発行とは?費用と現在の仕様

Solanaの圧縮NFTは、2023年8月に月間1,560万点超が発行されたと報じられた。これは売上高や購入者数の記録ではなく、大量のNFTを低い費用で発行する技術が使われ始めた時期のデータだ。当時の集計には現在再検証できない部分もある。発行数と費用の意味を確かめたうえで、2026年9月時点の公式資料から仕組みと仕様の変化を整理する。

2023年8月の1,560万点は月間の発行数

Wu Blockchainが2023年9月3日に掲載した記事は、分析者fknmarquのダッシュボードを引用し、8月のSolana圧縮NFTの発行数が1,560万点を超えたと伝えた。同記事が示した約7,800万点は、その時点の累計数である。前者は一カ月の新規発行、後者は蓄積された数であり、同じ期間の数字ではない。

発行に伴う手数料として82 SOL、Solana上のNFT総数に占める圧縮NFTの割合として55.62%も報じられた。ただし、これは当時の記事が参照した集計の値だ。今回、参照先のFlipsideのURLは別サイトへ転送され、元の計算式や対象取引を再現できなかった。現在の総数や、すべての集計方法で成立する記録としては扱わない。

元記事には月間販売の取引量に占める割合として21.5%という記述もある。しかし、元ダッシュボードを確認できないため、取引金額と件数のどちらを集計したかを確定できなかった。「SolanaのNFT売上高の21.5%」と断定する説明は採らない。少なくとも、発行数が増えたことと、購入代金が増えたことは別の指標である。

圧縮するのは画像の画質ではなく記録の持ち方

Solana Foundationは2023年4月6日、state compressionというデータの保存方法を紹介した。圧縮NFT、通称cNFTはその初期の利用例だ。ここでいう圧縮は、画像の解像度を下げたり、複数の作品を一つの商品にまとめたりする処理ではない。NFTの状態を管理するために必要な、チェーン上の保存領域を小さくする工夫である。

中心にあるのはMerkle tree(マークル木)という構造だ。NFTの情報からハッシュという値を作り、それらを木構造でまとめる。あるNFTがその木に含まれているかは、proofと呼ぶ検証用データを使って確かめる。個々のNFTについて専用のアカウントに情報一式を保持する方法と比べ、必要な保存領域を抑えられる。

元の情報を単に消しているわけでもない。Metaplexの資料によると、作成や変更に関する情報は取引履歴に記録され、検索用に整理される。画像ファイルそのものが必ずSolana内に保存されるという意味ではないため、作品の表示先や関連データの保管方法は、発行元ごとに別途確認する必要がある。

82 SOLを現在の制作費の見積もりに使えない理由

2023年の報道にある82 SOLは、記事が紹介した発行処理に関する手数料であり、NFT事業に必要な総費用と同義ではない。画像や動画の制作、アプリ開発、データ取得サービス、運営スタッフの費用まで含むと確認された数字ではない。旧記事のドル換算額も当時のSOL価格に依存し、現在の見積もりには使えない。

公式の費用例にも日付がある。Solana Foundationは2023年12月21日の記事で、同月20日時点の100万点発行の費用を247.80ドルと紹介し、同年4月の初期試算113.42ドルと比較した。これらは低コスト化の規模を説明する当時の参考値で、いつでも同じ金額で発行できる料金保証ではない。

実際の計画では、最初に用意する木の容量と初期費用、発行や移転の処理費、適用されるプロトコル手数料、データ取得のサービス費を分けると判断しやすい。Metaplexの現行資料も、木の大きさで費用が変わることや、一部操作に手数料があることを説明している。用意した容量をどれだけ使うかによっても、一点当たりの初期費用は変わる。

大量配布で使われた一方、発行数は購入者数ではない

2023年末のSolana Foundationの報告には、実際の用途が紹介されている。無料コレクティブルを配布するDRiPは、同年11月14日時点で累計6,800万点を発行したとされた。メッセージアプリDialectのステッカーや、Heliumの無線ホットスポット管理にも圧縮技術が使われていたと説明されている。

このような用途では、一点を高い価格で売ることだけが目的ではない。作品を広く配る、アプリ内で小さなデジタルアイテムを使う、多数の設備を識別するといった場面では、発行単価を抑えることに意味がある。低コスト化によって、売買市場の出来高では捉えにくい使い方が広がったと読むことができる。

そのため、1,560万点という月間発行数を、そのまま1,560万人の利用や同数の有料購入に置き換えてはいけない。一つのウォレットが複数の作品を受け取る場合もある。利用の広がりを見るなら、発行数に加え、受取ウォレット、実際に操作したウォレット、売買の件数や金額を別々に追う必要がある。安く配布できる仕組みは、不要な配布物が増える問題も伴う。

現在のBubblegum V2は2023年版と同じ仕様ではない

2026年9月に確認したMetaplexの公式文書は、圧縮NFTを作成・管理するBubblegum V2を案内している。V2では凍結と解除、移転できないNFT、MPL-Coreコレクションとの連携などが加わった。一方、旧版のBubblegum V1もlegacyとして資料が残り、サポートが継続されると説明されている。

重要なのは、V2の木とV1のデータをそのまま混在させられない点だ。V2は新しい形式の木を必要とし、コレクションも旧版のToken MetadataではなくMPL-Coreを使う。また、公式FAQは、圧縮状態から通常のNFTへ戻すdecompressionはV1でのみ利用でき、V2にはないと説明する。古い操作手順を新しいNFTに適用できるとは限らない。

ウォレットや市場への対応にも差がある。V1の圧縮NFTを表示できるサービスが、V2の表示・移転・売買まで対応しているとは限らないと公式資料は注意している。発行前には、採用するバージョンと受取側の操作を組み合わせて確認したい。本記事では各ウォレットでの送受信や売買を実機検証していない。

データ取得の仕組みと規制の話を分けて理解する

圧縮NFTをアプリで一覧表示する際には、取引履歴から情報を整理するインデックスが重要になる。MetaplexのDAS APIは、その情報を取得するための仕組みだ。すべてのRPCサービスが対応しているわけではなく、DAS API自体はSolanaのプロトコルとは別の検索層である。チェーン上に記録があることと、利用するアプリがすぐ表示できることは同じではない。

また、旧記事が関連付けた米SECの措置は、圧縮NFTの発行増加とは分けて考える必要がある。SECが2023年8月28日に公表したのは、Impact TheoryのFounder’s Keysの募集・販売を対象にした措置だった。同社はSECの認定を認めも否定もせず命令に同意しており、Solanaの圧縮技術全体を違法と判断した発表ではない。

この措置が8月のcNFT発行を増やしたとする因果関係は、確認した資料では示されていない。2023年の数字から読み取れるのは、大量発行を可能にする技術が利用されていたという当時の記録だ。現在の導入判断には、保存費用だけでなく、データの取得先、対応サービス、NFTに付ける権限や利用条件まで含めた確認が欠かせない。

よくある質問

Q. 圧縮NFTは画像が劣化するNFTですか?

A. 画像の品質ではなく、NFTの状態をチェーン上で管理する方法を工夫したものです。画像ファイルの形式や保管先は個々の作品の設計によります。

Q. 現在も1,560万点を82 SOLで発行できますか?

A. 82 SOLは2023年の報道上の値です。現在の仕様、木の容量、処理手数料、取得サービスなどを踏まえた見積もりが必要で、同額での発行を保証する数字ではありません。

Q. Bubblegum V1向けの手順はV2でも使えますか?

A. そのまま使えるとは限りません。木やコレクションの形式が異なり、V2はdecompressionにも対応していません。対象バージョンの公式資料と受取側サービスの対応を確認してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。