「使える銘柄」から「上場できる銘柄」へ
ステーブルコインを見る軸が変わりつつあります。
これまでは、価格の安定性、流動性、発行体の信用、対応チェーン、DeFiや取引所での使いやすさが主な判断材料でした。
「使える銘柄」から「上場できる銘柄」へ
- ステーブルコインを見る軸が変わりつつあります。
- これまでは、価格の安定性、流動性、発行体の信用、対応チェーン、DeFiや取引所での使いやすさが主な判断材料でした。
- しかし欧州では、そこにもう一つ重要な軸が加わっています。
- そのステーブルコインを、規制下の取引所が上場・提供し続けられるのか。
- この変化の中心にあるのが、EUのMiCAとAMLRです。
- MiCAは、暗号資産の発行、公開募集、取引プラットフォームへの上場、暗号資産サービス提供者の認可や監督をEU域内で統一的に扱う規制です。特にステーブルコインに近いものは、資産参照トークン、電子マネートークンとして整理され、発行体の認可、ホワイトペーパー、償還、準備資産、監督の論点が前面に出ます。
- 一方のAMLRは、マネーロンダリング対策・テロ資金供与対策の観点から、匿名性、本人確認、大口現金取引、暗号資産サービス提供者の管理を強める枠組みです。Regulation (EU) 2024/1624は2027年7月10日から原則適用され、匿名の暗号資産口座や匿名化を高める仕組みを伴う口座の扱いにも踏み込みます。
- つまり、ステーブルコインは単に「使われているか」だけでは見られなくなっています。
- これから重要になるのは、発行体、上場先、利用者確認、地域ごとの規制適合性です。
- 何が変わるのか
- 今回の論点は、ステーブルコインの価格ではありません。
- 1ドル連動を維持しているか。
- 時価総額が大きいか。
- 取引量が多いか。
- 対応しているチェーンが多いか。
- もちろん、これらは今後も重要です。
- しかしMiCA以後の欧州では、それだけでは足りません。
- 取引所やカストディ業者などの暗号資産サービス提供者は、EU域内でサービスを出す以上、MiCAに沿った認可・開示・監督の枠組みを意識する必要があります。ESMAはMiCAの暫定登録簿として、暗号資産ホワイトペーパー、資産参照トークン発行体、電子マネートークン発行体、認可済みCASP、非適合事業者の情報を公表する仕組みを用意しています。
- この結果、ステーブルコインの評価軸は次のように変わります。
- 以前の見方
- 「この銘柄は市場でよく使われているか」
- 「流動性があるか」
- 「DeFiや取引所で便利か」
- これからの見方
- 「この銘柄はEUの取引所で提供できるのか」
- 「発行体はMiCA上の要件を満たしているのか」
- 「取引所はその銘柄を上場し続ける判断をするのか」
- 「匿名性や本人確認の扱いでAMLR上の問題が出ないか」
- ここで、ステーブルコインは「市場で使える銘柄」から、制度上、上場・提供できる銘柄へと再評価されます。
- MiCAが見るのは「発行体」と「上場できる状態」
- MiCAの重要な点は、暗号資産を一括りにしないことです。
- EUの整理では、ステーブルコインに近いものは大きく、資産参照トークンと電子マネートークンに分けて扱われます。電子マネートークンは単一の法定通貨に価値を安定させる暗号資産、資産参照トークンはそれ以外の資産や複数資産に価値を参照する暗号資産として整理されます。
- 資産参照トークンをEU域内で公募したり、取引プラットフォームに上場しようとする場合、原則として発行体がEUに設立され、所管当局から認可を受けるか、一定の条件を満たす信用機関である必要があります。
- 電子マネートークンについても、EU域内で公募または取引プラットフォームへの上場を行うには、発行体が信用機関または電子マネー機関として認可され、ホワイトペーパーを所管当局に通知・公表していることが求められます。
- ここで重要なのは、取引所の判断です。
- あるステーブルコインが世界的に使われていても、EUの規制下で提供する取引所にとっては、
- 「発行体は要件を満たしているか」
- 「ホワイトペーパーは整っているか」
- 「監督当局の見方はどうか」
- 「顧客保護上、提供し続けられるか」
- が問題になります。
- つまり、流動性の大きさだけでは上場継続の根拠になりません。
- AMLRが見るのは「匿名性」と「本人確認」
- MiCAが発行・上場・サービス提供の枠組みを整える規制だとすれば、AMLRはAML/CFT、つまりマネーロンダリング対策・テロ資金供与対策の観点から、利用経路を締める規制です。
- AMLRでは、信用機関、金融機関、暗号資産サービス提供者が、匿名の銀行口座、決済口座、貸金庫、匿名の暗号資産口座、または顧客や取引の匿名化・不透明化を高める口座を保持することを禁止する内容が含まれています。匿名性を高めるコインを通じた不透明化も明示的に問題視されています。
- ただし、ここは誤解しやすい部分です。
- AMLRは、すべての自己管理ウォレットそのものを一律に禁止するという読み方ではありません。条文上、ハードウェアやソフトウェアの提供者、自己管理ウォレットの提供者については、そのウォレットにアクセス権や管理権を持たない限り、この禁止の対象外とされています。
- つまり、問題は「ウォレット」という言葉だけでは判断できません。
- 見るべきなのは、
- 誰が顧客を管理しているのか。
- 誰が取引を処理しているのか。
- 誰が口座や資産にアクセスできるのか。
- その事業者が暗号資産サービス提供者として規制対象になるのか。
- この切り分けが必要です。
- またAMLRでは、大口現金取引にもEU全体の上限が導入されます。大口現金決済については1万ユーロの上限が置かれ、加盟国はより低い基準を採用することもできます。さらに、少なくとも3,000ユーロ以上の現金による一時取引では、一定の顧客確認措置が求められます。
- ステーブルコインの話に見えても、実際には「決済」「本人確認」「資金移動」「匿名性」の話になっている。
- ここがAMLRの読みどころです。
- USDTなど個別銘柄を見る時の注意点
- このテーマで最も注目されやすいのは、USDTなど既存の大型ステーブルコインの扱いです。
- ただし、ここで早合点してはいけません。
- 見るべきなのは、
- 「その銘柄が有名か」ではなく、
- 「その銘柄をEUの規制下で誰が、どのサービスとして、どの顧客に提供するのか」です。
- 同じステーブルコインでも、
- グローバル市場で使われる場合、
- EUの認可を受けた取引所が提供する場合、
- 自己管理ウォレットで保有される場合、
- DeFi上で使われる場合、
- 法定通貨との交換に使われる場合、
- では制度上の見え方が変わります。
- そのため、「EUでUSDTが使えるか」という一文では不十分です。
- より正確には、
- EUのどの取引所が、どの顧客向けに、どのペアで、どの根拠に基づいて提供するのか
- を確認する必要があります。
- ESMAは2025年1月、MiCAに適合しない資産参照トークンや電子マネートークンについて、CASPがMiCAのTitle III・IVに沿って対応する必要があるとのガイダンスを公表し、各国当局に対して非適合トークンへの対応を遅くとも2025年第1四半期末までに確保するよう求めました。
- ここから読めるのは、ステーブルコインの競争軸が変わるということです。
- 今後は、単に流通量が大きいだけでなく、
- 発行体が規制に適合しているか、
- 上場先が提供を継続できるか、
- 償還や準備資産の説明が明確か、
- 監督当局の登録・公表情報にどう載るか、
- が市場の流動性に影響します。
- 米国との違い:同じ暗号資産でも分類がずれる
- 欧州だけを見ても不十分です。
- 米国では、CLARITY Actを中心に、デジタル資産の市場構造をどう整理するかという議論が進んでいます。2025年5月に米下院金融サービス委員会のフレンチ・ヒル委員長らがDigital Asset Market Clarity Actを発表し、米国のデジタル資産に規制枠組みを設ける法案として位置づけました。
- その後、2026年5月14日には米上院銀行委員会がH.R. 3633、Digital Asset Market Clarity Act of 2025を15対9で委員会通過させ、上院本会議へ進む段階に入りました。
- ただし、これは「最終的に成立した」という意味ではありません。報道ベースでは、同法案はデジタル資産市場の連邦ルールを作ることを目的としつつ、ステーブルコインのリワードや利回り、銀行業界と暗号資産業界の対立、SEC・CFTCの管轄分担などが論点として残っています。
- 欧州はMiCAで発行体・上場・サービス提供を制度化し、AMLRで匿名性や本人確認を強く見る。
- 米国はCLARITY Actなどを通じて、デジタル資産を証券、商品、その他の資産としてどう分類し、どの監督当局が見るのかを詰めている。
- この違いが、ステーブルコインの流動性に直接効いてきます。
- 同じ銘柄でも、欧州で扱いやすいか、米国で扱いやすいか、オフショアで扱いやすいかが分かれる。
- その差が、取引所の上場判断、ペアの厚み、スプレッド、資金移動ルートに反映されます。
- 影響を受けるのは誰か
- まず影響を受けるのは取引所です。
- EU向けにサービスを提供する取引所は、ステーブルコインを単なる人気銘柄として扱うのではなく、MiCA上の発行体要件、ホワイトペーパー、認可、登録、監督当局の見方を確認する必要があります。上場継続の判断は、流動性だけでなく、制度適合性に左右されます。
- 次に発行体です。
- これからのステーブルコイン発行体は、準備資産や償還だけでなく、どの地域でどの認可を取り、どの監督下で流通させるのかを問われます。グローバルに流通していることは強みですが、規制地域ごとに適合できなければ、取引所での扱いが分かれる可能性があります。
- 利用者にも影響があります。
- ある取引所では使えるが、別の取引所では使えない。
- ある地域では入金できるが、別の地域では取引ペアが消える。
- 保有はできるが、新規購入や交換が制限される。
- こうした差が出ると、利用者は「どのステーブルコインを持つか」だけでなく、「どの取引所で、どの地域から、どの用途で使うか」を確認する必要があります。
- 投資家や市場参加者にとっては、これは流動性のテーマです。
- ステーブルコインの規制差は、価格そのものよりも、まず取引量、上場ペア、スプレッド、資金移動経路に出ます。
- 決済網としてステーブルコインが広がるほど、規制の差はそのまま流動性の差になります。
- まだ断定しない点
- このテーマで注意したいのは、強い見出しだけで結論を作らないことです。
- 「EUで特定のステーブルコインが全面禁止」
- 「匿名ウォレットがすべて禁止」
- 「米国で暗号資産分類が決着」
- こうした言い方は、現時点では粗すぎます。
- 正しく見るには、次のように分ける必要があります。
- MiCAで確認するのは、発行体、トークン分類、ホワイトペーパー、上場・提供するCASPの認可状況です。
- AMLRで確認するのは、匿名性、顧客確認、暗号資産サービス提供者の管理範囲です。
- 米国で確認するのは、CLARITY Actの最終成立状況、SEC・CFTCの管轄分担、ステーブルコイン関連条項の最終文言です。
- 特にCLARITY Actは、委員会通過や本会議進行と、法律として成立することを分けて読む必要があります。
- 制度ニュースでは、
- 「提案」
- 「委員会通過」
- 「本会議通過」
- 「大統領署名」
- 「施行」
- を混同すると、記事の信頼性が落ちます。
- 次に見るべき確認ポイント
- このテーマで次に確認すべきなのは、価格ではありません。
- まず見るべきは、ESMAのMiCA登録情報です。
- 発行体、電子マネートークン、資産参照トークン、認可済みCASP、非適合事業者がどう更新されるかを見る必要があります。ESMAの暫定MiCA登録簿は週次更新とされ、2026年7月3日時点の更新情報も掲載されています。
- 次に見るべきは、EU向け取引所の上場・入出金・取引ペアの変更です。
- ステーブルコインは「保有できるか」と「新規に買えるか」と「取引ペアとして使えるか」が別です。取引所の告知では、この違いを確認する必要があります。
- 三つ目は、米国の法案進行です。
- CLARITY Actが最終的にどの文言で成立するのか。ステーブルコインの利回り・リワード、SECとCFTCの管轄、DeFiや仲介業者の扱いがどう整理されるのか。ここは米国市場の流動性に影響します。
- 最後に見るべきは、発行体側の対応です。
- 認可取得、準備資産、償還、ホワイトペーパー、監査、地域別サービス提供方針。
- これらが揃う銘柄ほど、規制市場では扱いやすくなります。
- まとめ
- MiCAとAMLRが示しているのは、ステーブルコインの評価軸の変化です。
- これまでは、
- 「どのステーブルコインがよく使われているか」
- が中心でした。
- これからは、
- 「どのステーブルコインが、どの地域の規制下で、どの取引所に上場・提供され続けるのか」
- が重要になります。
- ステーブルコインは、単なる価格安定型トークンではありません。
- 取引所の基軸通貨であり、資金移動の手段であり、決済ネットワークであり、制度上の監督対象です。
- だからこそ、見るべきなのは価格だけではありません。
- 発行体。
- 認可。
- ホワイトペーパー。
- 上場判断。
- 本人確認。
- 匿名性。
- 地域ごとの分類。
- 米国法案の最終文言。
- この順番で確認すると、ステーブルコイン市場の変化はかなり見えやすくなります。
- MiCAとAMLRの整理は、ステーブルコインを「使える銘柄」から「上場できる銘柄」へ移しています。
- 次に動くのは、価格より先に、取引所の対応と流動性です。
- #ステーブルコイン
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本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
出典: @LaboNft のX記事



