Strategyのビットコイン保有:5年総括

トラッカー再掲|SaylorがXで示唆、買付発表の前兆
直近買付|21,021BTCを約24.6億ドルで取得
現在保有|628,791BTC、時価約7.2〜7.4兆円規模
方針明確|mNAV2.5倍未満では普通株増資を抑制

ビットコインはどこまで企業財務の主役になったのか──その問いに対し、Strategy(旧MicroStrategy)の5年は最も分かりやすい答えだ。2020年の初回採用から社名変更、Nasdaq-100入り、直近の大口買付と“トラッカー再掲”までを整理し、会計・資本政策・市場含意を一気通貫で把握できるようにまとめた。最新の数字と言説をもとに、投資家が見るべき指標と留意点を提示する。

5年の軌跡—初回採用から社名変更・指数採用まで

2020年8月の財務採用を起点に買付が継続したため、2024年の株式分割・Nasdaq-100採用、2025年の社名変更を経て、ビットコイン企業としての位置付けが制度面でも明確化した。

2020年8月11日、旧MicroStrategyは「ビットコインを主要財務資産に採用」と発表し、2.5億ドルで21,454BTCを購入した。以後、2020年12月の0.75%転換社債(2025年満期)や、2021年2月の0%転換社債(2027年満期)で資金調達しながら累積保有を増やした。2022年12月には税務最適化で704BTCを一時売却後に即買い戻し、長期保有方針を堅持した。

2024年は10対1の株式分割を実施、12月23日にNasdaq-100に採用された。2025年2月5日には社名を「Strategy」に変更し、ビットコイン中心の財務戦略を社名にも反映させた。

直近動向—“トラッカー再掲”と21,021BTCの追加取得

Xでの“トラッカー再掲”は翌営業日に買付開示が出る前兆となることが多いため、市場は短期的に注目度が上がる。

2025年8月4日、Strategyは7月28日〜8月3日にかけて21,021BTC(約24.6億ドル、平均117,256ドル/BTC)を取得し、保有は628,791BTCになったと開示した。これは2024年11月の55,500BTC(約54億ドル)以来の大型取得で、直近の評価額はビットコイン価格次第で約725〜740億ドル規模に達する。

Saylorは8月10日に「If you don’t stop buying Bitcoin, you won’t stop making money.」と投稿し、“買い姿勢継続”を改めて示唆した。BTC相場が11万8千〜12万ドル前後で推移するなか、持株のドル建て評価は「740億ドル超」の表現も現れ始めている。

評価と指標—公式ダッシュボード・BTC価格と連動

同社は「BTC」「Purchases」「History」各ページで保有量・取得履歴・時価換算の主要KPIを日次で掲示するため、保有評価やmNAV(BTCに基づく純資産価値倍率)の確認に使える。なお2025年8月時点でのBTC価格レンジはおおむね11.7万〜12万ドル。

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資本方針の明確化—mNAV連動の普通株発行ルール

mNAVが2.5倍未満では普通株のATM発行でビットコインを買わない一方、2.5〜4.0倍は機会的、4.0倍超は積極発行とする新ガイダンスにより、希薄化の規律と購入ペースの予見性が高まった。

この方針は7月末の決算で示され、翌営業日には株価が一時下落したが、8月4日の大型買付開示後に反発した。資金面では2025年7月29日に可変金利の永久優先株STRCを約25.21億ドルで新規上場・調達しており、当面は普通株より優先証券の活用が中心になる見通しだ。

大型調達の歴史—転換社債とATMの併用

2021年の0%転換社債(2027年満期)や2024年の連続的なATM活用、2024年11月の週次5.45億ドル相当×複数回の買付に見られるように、相場・需給を見極めた「負債+株式」の機動運用が同社の特色だ。

会計・規制—公正価値会計移行と税制リスク

FASBのASU 2023-08により、2025年以降は暗号資産を公正価値で評価し、含み損益を損益計上できるため、従来の減損のみ会計による見かけの赤字偏重が緩和された。一方で税制側の取扱い(CAMT等)は今後の実務に影響を与え得る。

流動性・担保の教訓—担保ローン前倒し返済

2023年3月、同社はシルバーゲート銀行からの約2.05億ドルのBTC担保ローンをディスカウントで前倒し返済し、強制清算リスクを抑えた。以降はATM・優先株・転換社債の組合せで調達多様性を確保している。

▽ FAQ

Q. Strategyの現在の保有量と評価額は?
A. 2025年8月3日で628,791BTC、取得総額460.8億ドル、時価はBTC相場次第で約725〜740億ドル。日次KPIは公式ページを参照。

Q. 初回のビットコイン購入はいつ・いくら?
A. 2020年8月11日に2.5億ドルで21,454BTCを取得し、主要財務資産として採用した事実を公表している。

Q. 直近の大口購入規模は?
A. 2025年7月28日〜8月3日に21,021BTC(約24.6億ドル、平均117,256ドル/BTC)を追加取得し、保有は628,791BTCとなった。

Q. 2024年の最大購入は?
A. 2024年11月に55,500BTC(約54億ドル、平均97,862ドル/BTC)を1週間で取得し、その後も週次で追加している。

■ ニュース解説

Saylorの“トラッカー再掲”が8月10日に確認されたため、直近の大型買付(8月4日開示)に続く動きが注目され、同社のKPIとmNAVガイダンスで発行手段の選択が左右される。
投資家の視点:短期はBTC価格とmNAV次第で需給・発行手段が変化し、長期は公正価値会計で財務が透明化する一方、優先株コストや税制の不確実性がリスク要因。

本稿は投資助言ではありません。

(出典:PANewsStrategy+1, StrategyNasdaq, Barron’s+1Strategy