▽ 要約
方針 105銘柄を金融商品と位置付け、改正案は2026年国会へ。
情報開示 発行体・技術・リスクの網羅開示を義務化へ。
不公正取引 インサイダー禁止と監視強化、課徴金導入を検討。
税制 分離課税20%要望やETF検討で投資環境整備。
市場拡大と被害相談の増加を受け、暗号資産105銘柄を金商法の規律下に移し情報開示・インサイダー規制・税制見直しを一体で進める方針だ。
国内口座は1,200万超・預り資産は5兆円規模へ拡大する一方、詐欺的勧誘等の相談が月300件超に上る現実がある。こうした状況を踏まえ、金融庁は暗号資産を金商法上の「金融商品」として扱う方針を固め、105銘柄を対象に情報開示と不公正取引規制を適用する方向だ。投資家保護の強化と市場育成の両立が狙いである。
暗号資産105銘柄の金商法適用方針
市場実態と投資家保護の必要性が高まったため、交換業者取扱い105銘柄を金商法で監督する基本方針が示された。
国内の登録交換業者が上場・提供する暗号資産を一括して金融商品の枠に取り込み、株式並みの開示・監視を適用する。改正案は2026年通常国会提出が目標で、制度詳細は金融審議会WGで詰められている。
要点
報道で方向性が示された2025-03以降、7〜11月にWGが5回開催され、11月に105銘柄への適用方針が再確認され、2026年の法案提出に向け制度設計が最終段階に入った。
この流れの中で、インサイダー禁止や開示義務の設計、無登録業者・DEX対応、銀行グループ参入の可否など個別論点が深掘りされた。
背景
口座数1,213万、預り資産5兆円超に拡大し、投資商品としての実態が強まったため、決済中心のPSAから投資家保護中心の金商法へ移行する必要性が高まった。
一方で金融庁相談室には暗号資産関連の苦情相談が月300件超寄せられ、詐欺・出金トラブル等への対処強化が急務となっている。
市場への影響
当初は交換業者の開示・内部統制・監視システム等のコスト増で淘汰や再編が進み得る一方、透明性と公正性の向上は流動性の質を高め、ETF等の新商品や機関投資家の参加を促す可能性がある。
銀行・証券グループの参入容認が進めば、流動性供給や投資家層の拡大に波及しやすい。
論点とリスク
規制が重厚だと中小事業者の負担が過大となり、国内イノベーションの萎縮を招く懸念がある一方で、公正取引の確立と明確なルールは長期的な市場の信頼を強化する。
課徴金や刑事罰の水準、分散型プロジェクトや匿名的コミュニティへの実効性、無登録・海外業者やDEXへの執行手段が設計上の鍵だ。
今後の注目点
2025年内にWG取りまとめ→2025-12の与党税調大綱→2026年通常国会提出→周知期間を経て段階的施行の公算。
情報開示・運用ルールの移行措置、課徴金制度の適用開始時期、重要事実の定義とガイドライン整備、銀行等の参入範囲が注目される。
国際比較(米・EU・韓)
米国は包括法未整備でSEC等の執行中心で不確実性が残るのに対し、日本は金商法で投資規律を明文化する立法アプローチが特徴だ。
EUはMiCAで包括規制を導入し、開示・監督と市場濫用の検知ガイドラインを整備。韓国はVAUPAで不公正取引を明確に禁止し、監督権限を強化している。
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▽ FAQ
Q. 対象の「105銘柄」はどのように決まる?
A. 金融庁登録の交換業者が2025-11時点で取り扱う全暗号資産のユニーク数で、主要アルトや国内案件も含む(105種)。
Q. インサイダー規制の重要事実は?
A. 上場・上場廃止の未公表情報、重大障害や脆弱性、破綻・方針変更など価格影響の大きい未公開情報が想定される。
Q. 税制はいつから変わる?
A. 2026年度改正要望に盛り込まれた段階。2025年末の与党税調大綱、2026年国会審議を経て具体化・施行時期が固まる。
Q. 国内のステーブルコイン状況は?
A. PSA下の電子決済手段として枠組み化。2025-03にUSDCの一般向け取扱い開始、2025-10に円建てJPYC発行が始まった。
Q. 交換業者や投資家は何が変わる?
A. 詳細開示・内部統制・監視対応が強化され、投資家は開示充実と公正性向上、将来的なETF等の商品多様化の恩恵が見込まれる。
■ ニュース解説
投資商品としての実態拡大と利用者保護需要の高まりのため、105銘柄を金商法で包括監督し、開示・インサイダー・課徴金を整備する一方で参入の門戸も広げる。
投資家の視点:ルール移行の過程で取引所の対応・開示様式・リスク表示が変わるため、上場・開示・ネットワーク変更等の重要事実の公表経路を定点観測し、税制・商品ラインアップの変化に合わせて取引先と保管・税務の運用を見直す。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
(参考:金融庁)





