米仮想通貨市場構造法案、9月成立へ

要約

管轄明確化:SECとCFTCの役割を線引き、規制の不透明さを解消
企業流出阻止:法整備で米国外流出するWeb3企業を呼び戻す狙い
二法協調:EUのMiCA、日本の資金決済法改正と並ぶ包括ルール
意識時限:委員長は「9月30日までに成立は現実的」と強調
市場影響:規制明瞭化で流動性向上と資金流入が期待される

米国は2025年9月末までに「仮想通貨市場構造法案」を成立させ、市場のルールを明確化しようとしています。
背景にはSECとCFTCの二重監督によるグレーゾーンがあり、企業や投資家は米国外へ活動拠点を移していました。本記事では、法案の要点と各国比較を整理し、投資家が得られるメリットを解説します。

法案の核心:二大規制当局の「線引き」

SECは証券性トークン、CFTCは商品性トークンを監督する二分体制で合意。
米上院銀行委員会がまとめた草案「Digital Asset Market Clarity Act of 2025」は、ビットコインなどを「デジタル商品」、証券性トークンを「デジタル資産」と定義。これにより、
①取引所はCFTCへ暫定登録、
②発行体はSECの開示義務を軽減する安全港(4年間)を活用できる。

利用者の自己管理型ウォレット権も保護される。

主要条文と義務

  • 顧客資産の分別保管
  • 年次監査・報告書提出
  • ステーブルコインの裏付け資産開示

なぜ今、法整備が急がれるのか

規制のあいまいさが米国の暗号資産エコシステムを縮小させてきた。
近年、SECの強制執行が相次ぎ、企業はシンガポールやドバイへ拠点を移転。Cato研究所は「明確な立法がなければイノベーションは海外流出する」と警鐘を鳴らした。こうした危機感が議員の超党派協力を後押ししている。

各国との比較:EU・日本・中国

米国は二重監督体制を温存しつつ透明性を高め、EUの単一ライセンス制と差別化。

地域主要ルール発効時期特徴
米国市場構造法案2025年想定SEC/CFTCの管轄明確化
EUMiCA規則2024年単一ライセンス、ステーブル縛り
日本資金決済法改正2025年6月暗号資産仲介業・カストディ規制
中国全面禁止通達2021年9月取引・マイニング禁止

業界・投資家の声

透明性向上には賛成だが、証券判定権限の集中には警戒感も。
バイナンス系メディアは「SECがトークン分類を独占すると不確実性が残る」と指摘。一方、ウォール街は「枠組みが定まれば機関投資家が参入しやすくなる」と歓迎している。

今後のロードマップ

夏休会前に草案確定、秋の臨時会で最終調整へ。

  • 6月11日 下院金融サービス委可決
  • 7月下旬 委員長案の正式公開
  • 8月 議会休会
  • 9月 上下院採決、ホワイトハウス署名目標

成立が遅れれば、2026会計年度予算審議と重なり難航する恐れがある。

FAQ

Q. 仮想通貨市場構造法案の正式名称は?
A. Digital Asset Market Clarity Act of 2025 です。

Q. SECとCFTCの役割分担は?
A. 証券性トークンはSEC、商品性トークンはCFTCが監督します。

Q. 個人ウォレットは規制される?
A. 自己管理型ウォレットでの保有やP2P取引は明示的に保護されます。

Q. EUのMiCAとの最大の違いは?
A. 米国は二重監督体制を維持し、トークン分類で柔軟性を確保します。

Q. 投資家保護策は具体的に?
A. 取引所の資産分別・監査義務、安全港による情報開示で保護を図ります。

■ニュース解説

今回の法案は、市場の混乱を招いてきた「どのトークンが証券か」という長年の論争に終止符を打ち、米国におけるWeb3産業の基盤整備を目指す。EUや日本が先行規制を整える中、米国が後れを取れば資金・人材流出が加速するとの危機感が背景にある。9月成立が実現すれば、世界最大市場のルール確定が国際規制の標準化に影響を与えるだろう。

(出典:coindesk,EU官報,日本官報,中国人民銀行通達,Cato)