【要約】
本記事では、近年暗号資産(暗号通貨)界隈で注目度を高めている「DeFAI(DeFi+AI)」という概念について解説し、実際に開発されている事例や、その背景にあるデータ、そして2025年に訪れると予想される“DeFAI Summer”の可能性を探ります。従来、DeFi は利便性の低さや複雑な操作性などから普及に課題がありましたが、AI 技術の活用がこうした障壁を大きく下げ、ユーザー層を広げる糸口になると考えられています。以下では、具体的なプロジェクト事例やカテゴリーごとの特徴を紹介しながら、DeFAI がもたらす新しい金融の姿を詳しく解説していきます。
1. はじめに:DeFiの普及率とAIブーム
2020年から2021年にかけて起きた「DeFi Summer」は、多くのトレーダーや投資家に大きな利益機会をもたらし、ブロックチェーン業界全体の盛り上がりを牽引しました。しかしその一方で、ウォレット操作やガス代、スリッページ(滑り)などの概念が難しく、新規参入者には敷居が高いままです。
実際、調査会社 Triple A によれば、2024年時点で暗号通貨を保有する世界人口は約6.9%(およそ5.62億人)と推定されていますが、DeFi の日常的ユーザーはさらに少なく、全体のわずか1.4%程度と推計されています。こうした状況を見ると、DeFi は潜在的なユーザー層を十分に取り込めていないのが現実です。
一方で、近年は人工知能(AI)に関する注目度が急上昇しています。特に、暗号資産のコミュニティでは「AI エージェント」や「AI 搭載の自動取引ボット」が次々に登場し、2020-2021年の DeFi ブームに匹敵する盛り上がりを見せています。これらの背景から、新たに誕生した合成ワード「DeFAI(DeFi+AI)」が2025年に向けてさらに注目を集めているのです。
2. DeFAI とは何か?その核心的価値
「DeFAI」とは、DeFi(分散型金融)とAI(人工知能)を掛け合わせた造語です。ポイントは、AI の力で DeFi をより使いやすく、そして自動化や高度な分析ができる環境を整備しようというところにあります。具体的には下記の3つの特徴が挙げられます。
- 操作の簡略化
従来は「ウォレット接続」「ガス代トークン準備」「流動性プールへのステーキング」など、知識が必要な手順が多く、新規ユーザーの障壁になっていました。しかし、自然言語処理を活用した AI インターフェースを用いれば、「ETHをUSDCに交換して流動性プールに入れたい」と指示するだけで、複数の操作を自動的に実行してくれます。 - 自動化による高度な取引戦略
従来、専門のトレーダーやプログラマーが組み上げていたアルゴリズム取引やアービトラージ(裁定取引)戦略を、AI エージェントが自動で実行するケースが増えています。特定の価格帯に到達したらアクションを起こす、SNS やコミュニティの言及数が一定水準を超えたらポジションを調整するなど、人手では難しい細かい判断を実行可能です。 - 膨大なデータの統合分析
Twitter、Telegram、オンチェーンデータなど、暗号通貨マーケットには多様なデータソースが存在します。AI を通じてこれらを統合分析することで、市場のトレンドやリスクを見極めることが可能になります。必要に応じて自動売買を行うことで、タイムリーな意思決定が期待できます。
3. DeFAI プロジェクトのカテゴリー別事例
3-1. ユーザーインターフェース型 DeFAI
- HeyAnon (@HeyAnonai)
DeFi 取引を自然言語で指示できるように設計されているプロトコル。プロジェクト関連の重要データを一箇所に集約し、ユーザーが複数のチェーンや DEX を意識することなく取引を行えるようになることを目指しています。また、新たに「Automate」と呼ばれる TypeScript ベースのフレームワークを開発中で、マルチチェーン・プロトコルの統合をさらに簡素化しようとしています。 - Griffain (@griffaindotcom)
Solana 上の DeFi 操作を AI エージェント化し、トークンスワップから流動性プールへの参加まで一括して自動処理することを可能にするサービスです。ユーザー体験の改善に注力しており、Solana ファンを中心に注目が集まっています。
3-2. 市場分析・予測特化型 DeFAI
- aixbt (@aixbt_agent)
SNS やオンチェーンデータから市場動向を素早く分析し、投資判断の指針を提示してくれる AI エージェント。aixbt トークンを保有すると追加機能や投票権が得られる仕組みを採用しており、コミュニティ主導のインサイト共有を促進しています。 - Rei (@unit00x0)
DeFi の資金フローを追跡し、いわゆる「スマートマネー(大口投資家の動き)」を可視化することで、ユーザーがインフォームドな意思決定を下せるよう支援するツールです。チェーンデータの高度な解析により、従来は把握しづらかったリアルタイムのトレンドをいち早く掴めるのが特徴です。
3-3. 自動化トレードエージェント型 DeFAI
- ASYM (@ASYM41b07)
特に Meme コイン領域の投資機会を狙う AI エージェントを運用しており、市場動向の変化に合わせて最適なタイミングで売買を実行する自動化機能を提供しています。Meme コインでの大幅な利益を狙う投資家には魅力的で、その利益はすべて $ASYM トークンにも還元される仕組みです。 - Kosher Capital (@KosherCapital)
AI が完全に投資判断を行うファンドを複数運用しており、たとえば「デジタルゴールドファンド」では $cbBTC を主体に運用を実施。AI エージェントが独立して意思決定を行い、必要最低限の条件以外では人間の介入を排した自律型運用が大きな話題になっています。
4. DeFAI は次のDeFi Summerを引き起こすのか?
これらの事例から見ても、DeFAI には既存の DeFi が抱えてきた“難しい・複雑”という課題を解決し得る可能性があります。AI がインターフェースを担うことでユーザー体験が向上し、さらに高度な取引戦略や分析ツールが簡単に利用できるようになるため、新規参入者を取り込みやすくなると考えられます。
さらに、Trusted Execution Environment(TEE)といったセキュリティ技術や、将来的に期待される汎用人工知能(AGI)などが加われば、より信頼性と汎用性の高い DeFAI プロダクトが誕生するでしょう。こうした要素が連鎖的に結びつくことで、2025年以降には大規模なブーム——いわゆる「DeFAI Summer」が訪れる可能性があると目されています。
5. 今後の展望
- 大衆化への期待
まだごく一部のユーザー向けとされている DeFi を、AI が一気に裾野を広げる存在として位置付ける動きが高まっています。具体的には、複雑な操作不要で資金運用が可能になるため、これまで中央集権型取引所(CEX)に依存していたユーザーにもアプローチしやすくなるでしょう。 - プロ投資家と個人投資家の融合
従来の DeFi では巨大資本を持つトレーダーが有利とされてきました。しかし、AI エージェントが自動的にアルゴリズム取引や高速なアービトラージを行うことで、小口投資家でも高度な戦略を活用できる環境が整いつつあります。これにより、投資の分散化と競争の公平性が高まる可能性があります。 - エコシステムの相互接続
DeFAI のプラットフォームは、複数のチェーンやプロトコルを横断しながらシナジーを生み出すことが期待されます。リアルタイム分析を得意とするエージェントが自動取引ボットと連携するなど、複数の AI がそれぞれの強みを掛け合わせることで、全体としての効率性が飛躍的に向上するでしょう。
6. おわりに:2025年に向けた変革期
DeFi と AI の融合である DeFAI は、単なるバズワードに留まることなく着実に実用的な事例が増え、コミュニティから大きな注目を集めています。DeFi の弱点とされてきた複雑さや敷居の高さを AI が補完し、誰でも簡単かつ安全に分散型金融を活用できる土壌が整いつつあるのは明らかです。
AI エージェントによる高度な分析と自動化により、2025年には“次の DeFi Summer”とも呼べる活気とイノベーションが訪れるかもしれません。もしこの波が大きく成功すれば、暗号資産マーケットのさらなる拡大と、大衆的な金融リテラシーの進化につながるでしょう。新たなサマーシーズンが実現するか否か、今後の動向は要注目です。