12月31日 今日のテーマ:ビットコイン年末と2026論点

▽ 要約

市況:BTCは$89,000台、24h清算は約$115M。
注目:年末終値$96,900が「サイクル例外」の線。
企業:Metaplanetが4,279 BTC追加、LITがCoinbase上場。
リスク:2025年損失$3.375B、供給網攻撃が最大。

BTCの反発と年末終値ラインが意識される一方、予測市場やセキュリティ統計など2026に向けた論点が出そろった。

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ビットコイン年末はどの水準で着地し、2026年に何を織り込むべきか。足元ではBTCが$89,000台へ戻す一方、減半年の“例外”となる境目$96,900が話題になった。ETFフロー、予測市場、セキュリティをまとめて解説します。

市況総括

BTCは$89,000台に反発したが、年末の終値水準が投資家心理を左右している。

2025-12-30時点でBTCは$89,000台まで戻し、デリバティブの清算は24時間で約$115Mと報じられた。清算内訳はショートが約$78.79M、ロングが約$36.48Mで、戻り局面での踏み上げ色が強い。

2025-12-31の年末終値が$96,900を下回る場合、減半年として初のマイナス年になり得るとの見方が拡散した。過去の「4年サイクル」を前提にした期待が剥落すると、買い手の時間軸が短期化しやすい点は警戒材料だ。

相対的にCryptoが伸び悩む背景として、株式や貴金属が強含む中で「局外人」化したとの分析も出た。現物BTC ETFの資金流出が続いたことや、取引所の現物出来高が年初から鈍いことは、センチメントが戻り切らない要因になりやすい。

マクロ面では、著名投資家Ray Dalio氏が2025年の振り返りで、制度変更が市場を動かす局面ほど原理原則と学び直しが重要だと問いかけた。金本位制からの離脱(1971-08-15)を引き合いに、変化に適応する姿勢を強調した点は、年末のポジション調整局面でも示唆的だ。

中長期の見通しでは、VCのDragonflyでパートナーを務めるHaseeb氏が「2026-12-31までにBTCが$150,000を突破する」と予測し、BTCドミナンス低下など主導権の再配分に触れた。予測は不確実だが、時間軸の異なる参加者が同居する市場ほど、想定レンジの広さを前提にした管理が要る。

ETHは三角保ち合いが臨界に近いとの見立てもあり、2026年の方向感が意識されやすい。2025-12-30に大型アドレスが112,894 ETH(約$332M)を取引所へ送金したとの観測もあり、イベント前後は急変動に備えたい。

規制・政策アップデート

米規制の論点はSEC人事と、イベント性商品の位置づけ(予測市場・ミーム)に集約した。

米SECでは企業金融部の副部長Cicely LaMothe氏が退任予定とされ、開示・募集周りの実務レイヤーの継続性が注目された。暗号資産関連では、ミーム系の位置づけや情報開示の線引きが市場の材料になりやすい。

予測市場は2024年初の月間取引額が$100M未満から、2025年末には$1B超で安定する規模に拡大した。Kalshi(CFTC枠)とPolymarket(合規再編)を軸に、実験系・高頻度化・ウォレット内蔵・コンテンツ融合へ分岐し、規制は「全面解禁」ではなく境界設定が進んだ。

足元の金利観測では、Polymarketが2025-12-31時点で「1月会合で利下げなし」確率を87%と示した。こうした確率はヘッジ需要を喚起する一方、ルール変更や流動性低下が価格形成を歪めるリスクも抱える。

政治と市場の結節点では、選挙結果をきっかけに“政治銘柄”として盛り上がったミームや関連資産が、その後に最大で約99%下落した例が紹介された。熱量だけで評価が走る局面ほど、出口の薄さがコストになりやすい。

企業・資金調達・プロジェクト動向

企業はAI×暗号と、上場・TGE・バランスシートBTCの3テーマが交差した。

MetaはAI関連企業(Manus開発元)を買収したと報じられ、エージェント競争が一段と加速した。暗号資産側でも、AIの実装はソフトウェア開発・セキュリティに寄るとの見方があり、短期の物語と中期の実装の距離感が問われる。

上場企業によるBTC保有は、MetaplanetがQ4に4,279 BTCを約$451.06Mで取得し、2025-12-30時点の保有が35,102 BTCに達したと開示した。加えて不動産投資家Grant Cardoneが「最大級の不動産×BTC企業」構想を掲げ、2026-12-31までに3,000 BTCを目標とする動きも報じられた。MicroStrategy株をショートしBTCをロングする裁定取引が話題になったように、保有企業のプレミアムは環境次第で収縮し得るため、株式側の値付けも併せて点検したい。

関連:12月30日 投機マネーの行き先とビットコインETF

RWAではトークン化株式の時価総額が$1.2Bで過去最高とされ、BlackRockのトークン化MMF「BUIDL」は累計配当が$100Mを超えたとの整理が出た。実需が積み上がる一方、規制・清算インフラの整備が投資判断の前提条件になりやすい。

Lighterの$LITは初の主要CEX現物上場としてCoinbaseの現物上場が伝わり、流動性イベントとして注目を集めた。裏側ではHyperliquidでの3倍ショートが観測されるなど、需給が先に動きやすい局面でもある。

関連して、一部ではJump Tradingが取引や流動性供給に関与したとの観測も出たが、現時点で確証は限られる。

取引所ではGateが12周年の年次書簡で、ユーザー数3,000万・上場500超、100%準備金やグローバル展開を強調した。取引基盤が整うほど、上場直後の価格形成は「深さ(板)」と「情報対称性」が優位性を分ける。

人物面では、伝統金融と暗号の往来を象徴する事例として、谭永林氏の息子が業界で注目されるなど、資本・人材の流入が続く。X(旧Twitter)では2026年にクリエイター報酬を引き上げる動きも伝わり、情報流通と収益化の設計が市場参加を左右しやすい。

セキュリティとインフラ

2025年は供給網(サプライチェーン)攻撃が最大損失要因となり、運用面の再点検が不可欠になった。

2025年のWeb3被害は総損失$3.375B、重大事件313件と整理され、最大損失はBybitの供給網攻撃$1.44Bだった。損失の52.3%はCEX(9件で約$1.765B)に集中し、Ethereumは170件で約$2.254Bと被害額首位、BNB Chainは損失が前年比+110.87%とされた。

供給網リスクは個別プロジェクトにも波及し、Trust Walletはサードパーティパッケージ由来の脆弱性を公表した。影響は新バージョン4.4.1の更新者に限定され、約1時間で修正(4.4.2)したとして、早期更新と不要なdApp接続の見直しが推奨された。

インフラ論点では、BNB ChainとBaseを「港湾都市と新都市」に例え、前者は新興国の実用需要、後者は合規と開発者文化を軸に並走すると整理された。Binance内蔵ウォレットが日次約$92.6Mで市場の約57.3%を占めた一方、Base Appは約1,100万ユーザー規模とされ、ウォレット競争はUXとセキュリティの両輪で進む。

▽ FAQ

Q. $96,900ラインが意識される理由は?
A. Bitcoin Magazineは、2025年終値が$96,900未満なら減半年で初のマイナス年と報じ、節目として意識された。

Q. 1月会合の米利下げ確率は?
A. Polymarketでは2025-12-31時点で「1月会合で利下げなし」確率が87%とされ、市場の金利感応度を映した。

Q. 2025年のWeb3被害はどれくらい?
A. Beosin系レポートは2025年の総損失$3.375B、重大事件313件、最大はBybitの$1.44Bと整理し総括した。

Q. Trust Walletの事案で何に注意?
A. Trust Walletは4.4.1更新者のみリスクとし、約1時間で修正して4.4.2配布、dApp接続見直しを推奨した。

■ ニュース解説

年末の価格水準が議論されるのは、過去の経験則が投資家の期待を形作っているためで、一方で統計や規制の枠組みが整うほど「例外」も可視化される。
そのため、価格だけでなくフロー・安全・制度を同じ時間軸で点検することが重要になる。

投資家の視点:終値ラインや予測確率はシナリオ管理に有用だが、流動性・レバレッジ・供給網リスクを前提に、想定外のギャップに備える発想が求められる。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

(参考:PANews