ベントレー初のNFT「208点」とは|2022年の発表内容とその後

英国の高級車メーカー、ベントレー・モーターズは2022年6月22日、同社として初めてのNFTを発行すると発表しました。数量は208点に限定し、発行先にはPolygon(ポリゴン)のネットワークを選び、2022年9月に一度だけ販売するという計画でした。

旧版の記事はこの発表を紹介していましたが、ランボルギーニのNFTの時期を誤っていたほか、意味の通らない訳文が含まれていました。この記事では、ベントレーの公式発表をもとに内容を整理し直し、自動車ブランドのNFTがその後どのような道をたどったのか、読者が同じようなブランドNFTを見るときに押さえておきたい点をまとめます。

何が発表されたか:208点限定のジェネシスNFT

ベントレーの報道向け発表によると、このNFTはベントレーのデザイン部門が制作したアート作品で、同社の最初のコレクションという意味で「ジェネシス(genesis)」と位置づけられていました。保有者には、コミュニティ活動への参加機会や限定の特典、今後明らかにする独自の用途(ユーティリティ)を用意するとされていました。

販売は2022年9月に一度だけ行う予定で、価格は発表の時点では公表されていませんでした。販売収入は、エンジニアリングやデザイン、製造の分野を学ぶ学生の支援や、交通の持続可能性に取り組む団体の支援に充てると説明されていました。

販売・マーケティング担当取締役のアラン・ファヴェイ氏は、ベントレーの顧客はオンラインで生活し、暗号資産で高級品を買い、メタバースで事業を営んでいると述べ、デジタルの市場に存在感を示すことが必要だという考えを示しました。今回のNFTは、そのための長期的な取り組みの第一歩と位置づけられていました。

「208」という数字の意味

発行数の208には、ベントレーにとって二つの意味が込められています。一つは、当時最速のグランドツアラーだった「コンチネンタルGTスピード」の最高速度である時速208マイルです。日本で使われる単位に直すと、時速約335キロメートルにあたります。

もう一つは、1952年に登場した「Rタイプ・コンチネンタル」の総生産台数である208台です。Rタイプ・コンチネンタルは、現代のベントレーのデザインの原点とされる名車で、コンチネンタルGTの名前もこの車に由来しています。旧版の記事では、この説明の一部がグランドツアラー全般の話のように訳されていましたが、デザインの原点とされているのはRタイプ・コンチネンタルのほうです。

このように、発行数そのものにブランドの歴史を重ねる手法は、限定品を重んじる高級ブランドがNFTを出すときによく使われました。数量が少ないことを、希少性とブランドの物語の両方で説明しようとしたわけです。

なぜPolygonだったのか:環境面の説明とその後

ベントレーは発行先にPolygonを選んだ理由として、環境への負荷の小ささを挙げていました。当時のPolygonは、排出量を相殺する取り組みによってカーボンニュートラルを達成したと発表しており、2022年末までにカーボンネガティブを目指すとしていました。ベントレーは2030年までに事業全体でのカーボンニュートラルを掲げていたため、その方針に沿う選択だと説明しています。

2022年当時は、イーサリアムがまだ大量の電力を使う仕組み(プルーフ・オブ・ワーク)で動いていたため、NFTの環境負荷が批判の的になっていました。ところが、その発表から約3か月後の2022年9月にイーサリアムは「The Merge(マージ)」と呼ばれる移行を行い、消費電力を大幅に減らす仕組みに切り替わりました。NFTの発行先を選ぶ理由としての「環境への配慮」は、その後大きな差にはならなくなっています。

なお、PolygonのネイティブトークンはMATICから「POL」への移行が進められました。当時の記事でMATICと書かれている部分は、現在ではPOLに読み替える必要がある場合があります。

旧版記事の誤りと訂正

旧版の記事には、次のような誤りや不正確な表現がありました。

  • ランボルギーニのNFTの時期:旧版は「2022年9月のランボルギーニ社独自のNFTの発売に続き」と書いていましたが、ランボルギーニ初のNFT「Space Time Memory」のオークションは2022年2月に行われました。2022年9月は、ベントレーがNFTの販売を予定していた時期です。
  • NFCの意味:旧版の「NFC(非均質チップ)」は、ベントレーの発表にある「non-fungible chips」を訳したものです。一般に使われる近距離無線通信のNFCとは別の意味で、実物の商品とデジタルの証明を結びつけるチップを指しているとみられます。
  • 「ダブルスタンダード」:旧版は、ブランドイメージの向上と販売促進を同時に狙うことを「ダブルスタンダード」と表現していましたが、これは誤用です。「一石二鳥」といった意味で書かれたものと考えられます。

また旧版の「お客様の購買意欲を刺激し」といった記述は、ベントレーの発表にはない解釈が含まれていたため、この記事では発表の内容に沿って書き直しました。

その後どうなったか(2026年時点)

ベントレーのNFTが予定どおり2022年9月に販売されたのか、販売数や価格、保有者向けの特典がどのように提供されたのかについては、今回の調査ではベントレーの公式発表や主要報道で確認できませんでした。発表時に案内されたNFTの専用サイトは、2026年9月に確認した時点では正常に表示されませんでした。

ベントレー自身の事業計画も変わっています。同社は2024年11月、事業戦略を「Beyond100+」に改め、全モデルを電気自動車にする目標を2030年から2035年に延ばしました。一方で、初の電気自動車を2026年に発表する計画も示しています。NFTの発表時に掲げていた「2030年」という目標の時期は、車両の電動化については後ろにずれたことになります。

2022年の発表時には、NFCやオンラインゲーム、メタバースへの展開も検討すると説明されていましたが、これらが具体的な事業として続いているかどうかも確認できませんでした。

自動車ブランドのNFTはどう動いたか

2022年前後には、多くの自動車ブランドがNFTを試しました。ランボルギーニは2022年2月、スイスの芸術家ファビアン・エフナー氏の作品と実物のアート作品を組み合わせたNFTを、オークションで販売しました。宇宙ステーションに送られた炭素繊維の部品を使うなど、ブランドの技術を物語に組み込んだ企画でした。

一方、ポルシェが2023年1月に販売した「911」をモチーフにしたNFTは、7,500点を1点0.911ETHで販売する計画でしたが、売れ行きが伸びず、二次流通では発行価格を下回る取引も起きました。ポルシェは販売を途中で打ち切り、発行数は2,363点にとどまりました。当時の経緯はポルシェのNFT発売を扱った記事でも紹介しています。

こうした事例からわかるのは、ブランドの知名度だけではNFTの需要は生まれないということです。数量、価格、発売前のコミュニティづくり、保有者に何を提供するのかが、結果を大きく左右しました。ベントレーが数量を208点に絞ったのは、大量発行による失敗を避ける意味でも理にかなった設計だったといえます。

ブランドNFTを見るときのポイントと日本での扱い

企業が発行するNFTを検討するときは、特典の中身が具体的に示されているか、特典を受けられる期間や条件、発行元が事業方針を変えた場合にどうなるのかを確認しておくことが大切です。ブランドNFTは記念品や会員証としての性格が強く、二次流通での価格が保たれる保証はありません。取引量や保有者の分布といったデータの見方は、NFTプロジェクトを分析するための指標の記事で解説しています。

海外ブランドのNFTは、日本から購入できない場合や、特典の対象地域が限られている場合があります。購入に暗号資産が必要なときは、金融庁に登録された国内の交換業者で入手し、送金先のネットワーク(イーサリアムかPolygonかなど)を取り違えないよう注意してください。ネットワークを誤って送ると、資産を取り戻せないことがあります。

税金については、NFTを売却して利益が出た場合や、暗号資産で購入した時点で暗号資産の値上がり益が確定する場合があります。国税庁が公表しているNFTの税務FAQを確認し、取引の日時や金額を記録しておくと安心です。

よくある質問

Q. ベントレーのNFTは何点発行される予定でしたか?

A. 208点です。コンチネンタルGTスピードの最高速度(時速208マイル)と、1952年のRタイプ・コンチネンタルの総生産台数(208台)にちなんだ数字です。

Q. どのブロックチェーンで発行される予定でしたか?

A. イーサリアムの処理を補う仕組みとして使われるPolygonです。ベントレーは、Polygonがカーボンニュートラルを達成していることを選んだ理由として挙げていました。

Q. NFTは実際に販売されましたか?

A. 2022年9月の販売予定は発表されていましたが、実際の販売数や価格、特典の提供状況は、公式発表や主要報道では確認できませんでした。

Q. ランボルギーニのNFTはいつ発売されましたか?

A. ランボルギーニ初のNFT「Space Time Memory」のオークションは2022年2月に行われました。旧版の記事は「2022年9月」と書いていましたが、誤りでした。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。