暗号資産の下落はNFTに響くか|2022年からBAYC価格で検証

2022年9月、旧版の記事は「暗号資産は氷河期に入ったが、NFTはその下落を経験していない」「NFTは感情で買われるので暗号資産より安定するかもしれない」という見方を紹介していました。

それから4年。2021年に爆発的な人気を集めた猿のアバター群、BAYCの価格と、NFT市場全体の取引高をたどると、答ははっきりしています。NFTは暗号資産の下落の影響を強く受け、しかも暗号資産が回復した局面でも一緒には戻りませんでした。この記事では、その経過を数字で確かめ、NFTの値動きを見るときに押さえたい指標をまとめます。

2022年に何が起きていたか

イーサ(ETH)の価格は2021年11月に4,878ドルの最高値を付けた後、2022年に入って急落し、6月19日には995ドルまで下がりました。暗号資産の貸し出し事業者の破綻などが続き、この時期は「クリプトの冬」と呼ばれました。

NFTも無縁ではありませんでした。BAYCのフロア価格(そのコレクションで最も安い出品価格)は、運営会社が自社メタバースの区画を売り出す直前の2022年4月29日に152ETH(当時の換算で約43万4,000ドル)の最高値を付けましたが、Decryptによると8月20日には65.68ETH(約10万7,000ドル)まで下がっています。旧版記事が書かれた時点で、BAYCはすでに高値から大きく値を下げていたことになります。旧版は派生コレクションのMAYCやMoonbirdsも同じように下がったと書いていましたが、それらの当時の具体的な数字は今回確認できていません。なお、この間ETH自体も6月の安値から8月20日には1,634ドルまで戻しており、NFTの下げはETHの値動きだけでは説明しきれない面もありました。

旧版の「NFTは暗号資産の下落を経験していない」という記述は、少なくとも代表的なコレクションについては当てはまりませんでした。

ETH建てとドル建て:下落は二重に効く

NFTの価格は多くの場合ETH建てで表示されます。そのため、NFTを円やドルで評価すると、「NFT自体のETH建て価格の変化」と「ETHの価格の変化」が掛け合わさります。

時点 BAYCフロア(ETH建て) ドル換算
2022年4月29日(最高値) 152ETH 約43万4,000ドル
2022年8月20日 65.68ETH 約10万7,000ドル
2024年4月15日 10.9ETH 約3万4,000ドル
2026年9月26日(CoinGecko) 6.40ETH 約1万7,156ドル

2022年4月から8月までの4か月弱で、ETH建ての下落は約57%でしたが、ドル建てでは約75%に広がっています。旧版記事が紹介していた「ETH建てで52%、法定通貨建てで約80%の下落」という数字も、同じ構造を指していたと考えられます。

2026年9月時点のドル換算額は、最高値から約96%低い水準です。なお、最高値の数字は集計サイトによって多少異なり、CoinGeckoは2022年5月1日の153.7ETHを記録としています。引用するときは出典を明記するのが安全です。

市場全体の取引高:2021年から2025年まで

個別のコレクションだけでなく、NFT市場全体の取引高も縮小が続きました。

年 年間取引高 集計元
2021年 約251億ドル DappRadar
2022年 約247億ドル DappRadar
2023年 約168億ドル DappRadar
2024年 約137億ドル DappRadar
2025年 約56億3,000万ドル(前年約89億ドル) CryptoSlam

2022年の年間取引高が2021年並みなのは、上半期の取引が大きかったためです。2023年以降ははっきりと減っています。2025年の数字はCryptoSlamの集計で、DappRadarとは数え方が異なるため、表の上下をそのまま比べることはできません。どちらの集計でも縮小傾向が続いている点は共通しています。2026年上半期については、信頼できる集計を確認できませんでした。

下落は連動し、回復は連動しなかった

興味深いのは、暗号資産が回復した後の動きです。ETHは2025年8月、約4年ぶりに2021年の最高値を更新しました。しかしBAYCのフロア価格はその後も10ETHを下回る水準で推移し、2026年5月には約5ETHから約10ETHへ持ち直したと報じられたものの、9月には6ETH台に戻っています。

つまり、2022年には暗号資産の下落がNFTに強く波及した一方、2025年の暗号資産の上昇はNFTの価格をほとんど押し上げませんでした。旧版記事は結びで「暗号資産とNFTは表裏一体で補完関係にある」と書いていましたが、実際の関係はもっと一方向的だったと言えます。

背景としては、投機的な資金がNFTから別の分野(ミームコインなど)へ移ったこと、クリエイターへの手数料(ロイヤリティ)の扱いが変わったこと、プロジェクトへの期待そのものが薄れたことなどが挙げられます。ただ、どの要因がどれだけ効いたかを数字で切り分けた一次資料は、今回確認できませんでした。

この4年で変わった市場のルール

価格以外にも、NFT市場の前提はいくつか変わりました。

  • ロイヤリティの任意化:大手マーケットプレイスのOpenSeaは2023年8月31日にロイヤリティ強制の仕組みを止め、クリエイターへの手数料を任意にしました(既存コレクションは2024年2月29日から)。二次流通で作り手が収入を得るというNFTの売り文句の一つが揺らぎました。
  • 米SECの調査終了:OpenSeaは2024年8月に米証券取引委員会(SEC)から警告にあたる通知を受けましたが、2025年2月に調査の終了が明らかになりました。BAYCを手がけるYuga Labsも、2025年3月に調査が告発なしで終わったと公表しています。
  • トークン発行の延期:OpenSeaは独自トークン「SEA」を2026年1〜3月期に出すと予告していましたが、2026年3月16日に市場環境を理由に延期を発表しました。その後の発行状況は確認できていません。

BAYCの過去の急成長についてはBAYCの躍進、ロイヤリティをめぐる当時の動きはOpenSeaのロイヤリティ強制ツールでも取り上げています。

NFTの値動きを見るときの指標

NFTの価格ニュースに振り回されないために、次の点を分けて見ることをおすすめします。

  1. ETH建てと円建てを両方見る:フロア価格がETH建てで横ばいでも、ETHが下がれば円での資産額は減ります。
  2. 取引件数と売り手の数:フロア価格はその時点で最も安い出品にすぎません。取引がほとんどないのに価格だけが表示されている状態は、売りたいときに売れないリスクを示します。
  3. 自己売買の除外:同じ人が売買を繰り返して取引高を大きく見せる行為(ウォッシュトレード)があるため、集計サイトが「除外後」の数字を出しているかを確認します。
  4. 集計元をそろえる:DappRadarとCryptoSlamのように、集計元によって数字は変わります。年ごとの比較は同じ集計元で行いましょう。

暗号資産とNFTの性質や法律上の違いは暗号資産とNFTの違いで整理しています。NFTを売って利益が出た場合の課税は、取得や売却の時点の円換算で計算します。この記事は特定のNFTや暗号資産の売買を勧めるものではありません。

よくある質問

Q. BAYCの価格は最高値からどれくらい下がりましたか?

A. フロア価格は2022年4月29日に152ETH(約43万4,000ドル)を付けた後、2026年9月26日時点のCoinGeckoでは6.40ETH(約1万7,156ドル)です。ドル換算で約96%低い水準です。

Q. ETHが最高値を更新したのにNFTが上がらなかったのはなぜですか?

A. 投機資金の移動やロイヤリティ制度の変化、プロジェクトへの期待の低下などが挙げられますが、どの要因がどれだけ効いたかを数字で示した一次資料は確認できませんでした。

Q. NFT市場の取引高はどのくらい減りましたか?

A. DappRadarの集計では2021年の約251億ドルから2024年の約137億ドルへ減りました。CryptoSlamの集計では2025年は約56億3,000万ドルで、前年から約37%減っています。集計元で数字が違う点に注意してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。