2024年12月2日前後の暗号資産市場では、BTCを金融サービスで活用するBTCFiや、新しいデリバティブ、ドル連動型トークンの発行計画が注目された。ただし、市場全体の時価総額はサービスへの預かり資産額ではなく、発行予定も実際の開始日とは限らない。本稿は五つの主要トピックについて、当時の資料と、実施を確認できる後日の公式発表を分けて整理する。
BTCFiの成長余地と、既に利用された資産額は異なる
BTCFiは、BTCを保有や送金にとどまらず、担保や貸借、他のネットワークの安全性を支える仕組みなどに活用しようとする取り組みを指す。旧稿は『BTCFiが2兆ドル規模に拡大』と説明していたが、BTC全体の市場評価と、個別サービスで実際に使われている資産の規模を混同していた。
時価総額は一般に価格と流通量を掛け合わせた評価額で、すべてのBTCが金融サービスへ預けられた金額ではない。一方、TVLは集計対象の仕組みにロックされた資産の評価額を表す。価格上昇だけでドル建て評価額が増える場合もあるため、利用量の変化を調べるならBTC建ての数量も見る必要がある。
具体例として、Babylon Labsは2024年8月19日、8月22日に第1段階のメインネットを開始する計画を発表した。この段階では、BTC保有者がBitcoinチェーン上の仕組みで資産をロックし、PoSネットワークがその安全性を利用する部分は将来の段階に位置づけていた。
この発表から読み取れるのは、機能を段階的に導入する設計である。将来の用途を説明した文章を、発表時点ですべての利用者に利回りが支払われていたという実績へ置き換えることはできない。また、Bitcoin自体の合意形成がPoSへ変更されたという意味でもない。
BTCFiと呼ばれるサービスでも、利用者が持つ権利、出金の条件、外部の管理者や別チェーンへの依存は同じとは限らない。旧稿のTVL比率0.14%は、同じ基準日の分母と分子を確認できなかったため、成長余地を証明する確定値としては扱わない。期待される市場の大きさより、利用する仕組みと実際の残高を確かめることが先になる。
VanEckの18万ドルは11月21日に示された価格予想
VanEckが11月21日に公表したBitcoin ChainCheckは、その市場サイクルの目標価格として1BTC当たり18万ドルという見方を維持した。12月2日に新たな価格が確定したというニュースではなく、以前に発表された運用会社の予想を取り上げたものである。
同社は、米国の選挙後の政策環境や投資家の関心、追跡する市場指標を強気の見通しの背景に挙げていた。一方、資料には過熱の兆候にも注意を払う姿勢が記されている。政策の方向に期待することと、具体的な制度が既に成立・施行したことは区別したい。
『今サイクル』という表現も、確実な満期日が決まった契約とは違う。目標価格には分析者の相場区分や前提が含まれており、読者が任意の日を期限として補ってよいものではない。予想を比較するなら、発表時期、想定期間、前提とする資金需要をそろえる必要がある。
ETFへの資金流入があっても、将来の買い需要が保証されるわけではない。流入と流出が変わる可能性もあれば、同じニュースが既に価格へ織り込まれている可能性もある。過去の上昇局面に似た指標が現れたとしても、同じ値動きが繰り返されるとは限らない。
当時の予想は、市場参加者が何に期待していたかを理解する資料になる。本稿では18万ドルを現在の推奨価格や到達済みの実績として示していない。会社名の知名度と予測の確実性を結びつけず、発表者の見解として読むことが重要だ。
RLUSDの実際の提供開始日は12月17日と発表された
旧稿はRippleのドル連動型ステーブルコインRLUSDについて、12月4日の開始予定を掲載していた。しかし、後日の公式発表で確認できる提供開始日は12月17日である。Rippleは12月16日付の発表で、翌日から取引所で利用可能になると案内した。
このため、12月2日時点の記事で『12月4日に発行される』と確定事項のように書くことは避ける。市場で伝えられた見込み、規制上の手続き、利用者が取引できる状態になる日は、それぞれ異なる。予定が報じられた日だけでは、実際の提供開始を確認したことにならない。
12月16日のRipple発表は、RLUSDの裏付けを米ドル預金、米国政府債、現金同等物と説明し、独立した第三者による準備資産の月次証明を公表する方針を示した。対応ネットワークにはXRP LedgerとEthereumを挙げている。これは後日確認できた商品設計としての補足である。
RLUSDは米ドルとの価値の連動を目指すトークンであり、XRPと同じ資産ではない。RLUSDが利用されるという発表から、XRPの価格が一定幅で上がるという関係を導くことはできない。決済や取引に使われる商品と、別のトークンの投資成果を分けて考える必要がある。
また、『世界の取引所で提供』という表現は、日本のすべての口座で同じサービスを使えることを意味しない。取扱業者、居住地、入出金ネットワークによって条件は異なる。利用を考える場合は、自分の口座の対象サービスと償還条件を確認することになる。過去の発表にある提携先一覧だけでは、現在の利用資格は判断できない。
Cboeの商品は現物ETFの指数に連動する現金決済オプション
Cboeは11月22日、12月2日から新しいBitcoin関連の指数オプションを提供する計画を発表した。対象は米国上場の現物Bitcoin ETFの組み合わせを追跡するCboe Bitcoin U.S. ETF Index、CBTXである。BTCの現物そのものを直接受け渡す商品ではない。
通常の指数オプションは現金決済で、満期に差額を現金で清算する設計となっている。権利行使は満期日に限る欧州型と説明された。標準サイズに加えて、想定元本がその10分の1となるMBTXも案内されている。
後日の実施状況については、Cboeの12月11日付年次回顧が、前週にCBTXに基づく現金決済指数オプションを開始したと記載している。11月の予定発表だけに依存せず、実際に商品が導入されたことも公式資料で確認できる。
ただし、指数オプションを買うことと、ETFの受益権やBTCを保有することは異なる。オプションには権利行使価格や期限があり、取引した契約の条件が損益へ影響する。Bitcoinの方向感だけが合っていても、それだけで取引の利益が決まるとはいえない。
小型の商品でも、価格変動の影響や契約条件を理解する必要は残る。また、同じBitcoin関連でも、個別ETFのオプションと複数ETFを対象にする指数オプションでは、参照するものが違う。ニュースを比較するときは、商品名、原資産または指数、決済方法を確認したい。新商品があること自体は、個々の利用者に適しているという判断にはならない。
Touzi CapitalへのSEC提訴は、主張と裁判の結論を区別
SECは11月29日、Touzi Capitalとその責任者Eng Taing氏に関する訴訟情報を公表した。資料が示す裁判所への提訴日は11月20日であり、発表日とは異なる。SECが未登録の証券募集などを巡って起こした民事訴訟についての告知である。
SECの説明では、暗号資産マイニング事業向けの募集により1,200人超から約9,500万ドルを調達したほか、別の債務再建事業で約2,300万ドルを集めたとされる。当局は資金の混同や流用、投資の流動性や安定性に関する誤解を招く説明があったと主張した。
ここで挙げられる金額は、SECが説明する資金募集の規模である。全額が回収不能になったという確定損害額や、裁判所が認定した賠償額とは違う。旧稿の『1.15億ドル以上の被害』という表現では、金額が示すものと認定の段階が不明確だった。
同様に、提訴されたことから直ちに被告側の責任が確定したと書くことはできない。本稿はSECが何を申し立てたかを伝えるものであり、この資料だけで最終的な裁判結果を確認したものではない。当局が求める措置も、実際に命じられた措置と区別して読む必要がある。
BTCFiや新商品への期待が広がる時期でも、投資対象がどのように利益を生み、誰が資産を管理し、いつ換金できるかという確認は欠かせない。高い収益を示す説明と、その収益を裏付ける実績や契約条件は別々に見る。12月初めのニュースは、金融機能の拡大だけでなく、その説明をどう検証するかという課題も示していた。
よくある質問
Q. BTCFiへ2兆ドルが預けられていたのですか?
A. そのように確認できた数字ではありません。BTCの時価総額と、金融サービスにロックされた資産額は別の指標です。
Q. RLUSDは2024年12月4日に提供を開始しましたか?
A. Rippleの12月16日付公式発表は、翌17日からの提供開始を案内しています。旧稿にあった4日の予定と、確認できる開始日を区別しました。
Q. SECの発表でTouzi Capitalの責任が確定したのですか?
A. この資料は民事訴訟の提起と当局の主張を伝えるものです。提訴日、発表日、判決日を同一視することはできません。
この記事の出典
- Babylon Labs企業発表:第1段階メインネット計画(2024年8月19日)
- VanEck:11月のBitcoin ChainCheck(11月21日)
- Ripple:RLUSDの12月17日提供開始を案内(12月16日)
- Cboe:Bitcoin関連指数オプションの開始予定(11月22日)
- Cboe:2024年のデリバティブ事業回顧(12月11日)
- SEC:Eng Taing・Touzi Capital訴訟の公表(11月29日)
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




