
【要約】
・米国による追加関税や対抗措置が欧州連合や中国で続々と発表され、グローバル経済に影響
・マイクロストラテジー(現Strategy)のビットコイン大量保有をめぐる財務リスクが浮上
・WLFI関連ウォレットがイーサリアムを大幅損切り売却、DeFi市場でも大口動向に注目
・ETHの急落や巨大クジラの清算対策など、市場ボラティリティが続く
・XRP価格の将来予測やAavegotchiのBase移行など、アルトコイン関連も動き活発
・米司法省は仮想通貨部門を解散、ホワイトハウスはデジタル資産規制を緩和する姿勢を示唆
世界貿易摩擦の拡大:EU・中国の対米措置
近年の暗号資産相場には、トランプ大統領の関税政策が大きく影響しています。2025年4月9日時点では、欧州連合(EU)が米国との「公平な合意」が得られれば対抗関税を一時停止できるとの意向を表明しました。一方で、米国がEUへの鉄鋼やアルミニウムに関する関税を続行する方針を変えていないことから、EUは米輸入品へ25%の追加関税を課す対抗措置を決定。さらに中国では、国務院関税税則委員会が4月10日正午以降、米国原産の全輸入品に対する追加関税率を34%から84%に引き上げると公表しています。
この一連の関税合戦は「対等関税」構想とも呼ばれ、グローバル市場に波及するリスクが顕在化しました。米大手ハイテク企業を含む世界の株式時価総額は、短期間で約10兆ドル(約1,100兆円)減少したとの試算もあり、投資家心理を冷やしています。米国は現時点で関税の即時免除を行う意向はないと伝えられ、欧州委員会は早ければ来週にも新たな報復措置の概要を提出する見通しです。
Strategy社(旧マイクロストラテジー)のBTC売却リスク
ビットコイン(BTC)を大量保有する米上場企業、Strategy(旧MicroStrategy)は、SEC(米証券取引委員会)に提出した最新の8-K書類で、財務状況によってはBTC売却を余儀なくされる可能性に言及しました。同社は約52万8,000BTCを平均取得価格67,458ドルで保有し、総額は400億ドルを超える規模です。しかし、82.2億ドルもの債務を抱えるうえ、ビットコイン価格が2024年末の10万ドル付近から7万6,400ドル前後に下落したことも重なり、資金繰りが厳しさを増しています。
実際に全保有分を売却する事態になれば、市場への潜在的な売り圧力は相当なものです。例えば1年分の利息・配当分(約1.8億ドル)の捻出だけで2,000枚以上のBTCを売る可能性がありますが、債務をまとめて返済する必要に迫られれば、数万~10万枚単位のBTC放出も考えられます。最悪の場合は大規模なフラッシュクラッシュを引き起こしかねず、BTCマーケット全体に大きな衝撃が走るでしょう。とはいえ同社は発行株式や新たな社債で資金を確保する手段を継続検討しており、即座の全面売却に至る可能性はまだ低いと見られています。
ETH相場の急落とクジラ動向:WLFI/巨額担保アドレス
3-1.WLFI関連ウォレットが大幅損切り
DeFiプロジェクト「World Liberty Financial(WLFI)」に関連するウォレットが、年初に1ETHあたり3,259ドルで購入していた約5,471ETHを、1465ドル前後で売却しました。損失は約1億2,500万ドルにのぼり、同ウォレットは依然として9,800万ドル相当の暗号資産を保有しているものの、うち1,170万ドルほどがETHと報じられています。トランプ政権による関税強化も含めたマクロ要因で、市場はリスク回避ムードとなり、ETH価格が大幅に下落する中での動きです。
3-2.イーサリアム急落と巨額清算回避
実際、ETHは一時1,400ドルを割り込み、日内8%を超える下落が観測されました。複数のレバレッジポジションを抱える“クジラ”アドレスが清算回避のため数千ETH単位の売却を繰り返し、負債返済を進める事例が報じられています。ある大口投資家は担保ETHの大半を売却してUSDTやDAIを返済し、清算ラインを1,200ドル台まで引き下げたとの追跡情報も出ています。
アルトコイン・DeFi関連の最新動向
4-1.RippleとXRP:12.50ドル予測
渣打銀行は、Ripple社のXRPが2028年までに最大12.50ドルに達するとのレポートを公表しました。SECとの訴訟リスクが後退し、今後XRPが金融機関向け送金や資金移動でシェア拡大が期待されると分析しています。ただし、開発者コミュニティの規模や価値捕捉の限界など、課題も依然存在するとの指摘です。
4-2.AavegotchiのBase移行
Polygon上で展開してきたNFTゲーム「Aavegotchi」はコミュニティ投票を経てCoinbaseのL2ネットワーク「Base」への移行を決定しました。移行期間は4~6週間程度とみられ、資産はBase上で1:1対応のNFTとして再発行する予定です。
4-3.その他アルトコイン情報
・PancakeSwapはCAKEトークンのエコノミクス3.0を提案し、今後約5年間で総供給量の20%削減を見込む方針を示しています。
・Binance Alphaは新規銘柄としてRetard Finder Coin (RFC)を追加。
・OKX(欧易)はWayfinderエコシステムの代替通貨PROMPTを上場へ。
米国規制の変化と機関投資家の動き
5-1.司法省が仮想通貨部門を解散
米司法省は2022年に発足した「国家仮想通貨執行部門(NCET)」を突然解散すると発表しました。副検事総長のトッド・ブランチ氏によれば、「デジタル資産における規制の明確化」を優先し、もはや司法省が“捜査という形での規制”を行う時代ではないと示唆しています。
5-2.ホワイトハウスの方針とSEC人事
米上院はSEC委員長候補ポール・アトキンス氏の指名承認を審議中です。トランプ大統領は関税と同様に、デジタル資産に対しても積極的な介入を当面控える姿勢を示唆しており、一部では「規制緩和路線による市場活性化」を期待する声もあります。
5-3.機関投資家の参入や買収
Tetherはビットコインマイニング企業Bitdeer(比特小鹿)の株式を22.8%まで追加取得し、Ripple社は主要ブローカーHidden Roadを12.5億ドルで買収する計画を発表。さらにa16z(Andreessen Horowitz)は過去最大規模の200億ドルファンドを立ち上げるという噂が報じられ、巨額マネーが依然として暗号資産業界に流れ込んでいます。
ニュースの解説
今回の一連のニュースは「関税強化によるマクロ経済の不透明感」と「暗号資産市場固有のリスク」が複雑に絡み合っている点が大きな特徴です。トランプ政権下で激化する貿易摩擦は世界株式市場の下落を招き、同時に暗号資産市場にとってもリスクオフの動きを促進しました。マイクロストラテジー(Strategy)のようにビットコインを大量に保有する企業が資金繰りに苦しめば、BTC市場全体の流動性と価格形成に重大なインパクトが生じる可能性があります。
一方、裁定機会を求める機関投資家や、XRPをはじめとするアルトコインの活発な開発・買収事例から、長期視点では市場拡大の余地を感じさせる動きも同時に見られます。米国の司法省やSECなど主要規制当局の方針転換が今後いっそう進むのか、欧州や中国の追加関税がどこまで拡大するのか――いずれも世界経済と暗号資産の両面に大きく関わる注目テーマとなっていることは間違いありません。