2024年11月13日前後には、HashKeyのHSK、MicroStrategyのビットコイン購入、米大統領選後の政策期待が話題になった。旧記事には、上場予定を実施済みのように扱う表現や、資産の評価益を確定利益と混同しやすい説明がある。本稿では当時の企業発表を軸に、日程、資金の動き、将来予測を整理し直す。
HSKは11月7日発表、現物取引は11月26日開始予定
HashKey Groupの11月7日付公式発表では、HashKey GlobalでHSKの入金を同日7時UTCに開き、HSK/USDTの現物取引を11月26日10時UTC、出金は11月27日の10時UTCからと案内している。これらを日本時間に換算すると、入金が11月7日16時、現物取引が11月26日19時、出金が翌27日19時となる。
したがって、11月13日の記事で「HSKがすでに現物市場で取引開始した」と受け取れる説明は適切でない。発表、入金受付、売買開始、出金受付は別の段階である。入金先が開いたことから、同時に売却や出金もできると考えてしまうと、利用可能な機能を読み違える。
同社はHSKについて、グループの事業で使うプラットフォームトークンであり、HashKey Chainのネイティブトークン、ガストークンになると説明している。これは発行側が示した用途の説明で、グループの利益を受け取る株式と同一ではない。事業が拡大すれば必ずトークン価格も上がるという関係まで、この発表が保証しているわけではない。
HashKey Globalと香港の取引所を混同しない
今回の上場告知の主体はHashKey Globalである。同発表は、Globalがバミューダ金融庁のライセンスを取得していると説明する一方、香港、米国、中国本土などの利用者にはサービスを提供しないと明記していた。グループ名にHashKeyが共通していても、香港のHashKey Exchangeと同じ対象地域・同じ運営条件とみなすことはできない。
旧記事にあった「世界初のコンプライアンスエココイン」という表現は、何を比較した世界初なのか、どの当局がトークン自体をどの範囲で認めたのかを示していなかった。事業者が規制に対応していることと、トークンの価値や収益が当局によって保証されることは異なるため、この形容は取り除いた。
また、英語のecosystem tokenを「エココイン」とだけ呼ぶと、環境対策や排出量削減のための資産に見える可能性がある。ここではグループのサービス群で用いるエコシステムトークンという意味で扱う。名称から機能を推測するより、具体的に何に使えると発表されているかを読む方が確実である。
これらは2024年11月の告知内容を整理したもので、現在の口座開設条件を網羅する案内ではない。同じブランドでも提供主体や対象地域は確認項目として残る。
MicroStrategyの購入額と含み益は別の計算
MicroStrategyの11月11日付発表を収録したForm 8-Kによると、同社は10月31日から11月10日に約2万7,200BTCを購入した。支出は約20億3,000万ドル、手数料などを含む平均購入価格は1BTC当たり約7万4,463ドルである。11月10日時点の合計保有量は約27万9,420BTC、累計取得額は約119億ドルとされる。
旧記事はBTC価格を8万9,000ドルと置き、約129億ドルの含み益を示していた。この計算を再現すると、27万9,420BTCに8万9,000ドルを掛けた評価額は約248億6,800万ドルとなり、約119億ドルの取得額との差は約129億6,800万ドルになる。桁としては近いが、これは指定した価格を使う概算であり、実際の売却益ではない。
この試算には、保有量と取得原価が変わらないという仮定がある。参照価格の時刻が違えば評価額も動き、売却すれば手数料や税など別の要素が加わる。会社の会計上の利益や、株主の投資収益率をそのまま表す数字でもない。「含み益」という一語で済ませず、何を掛け、何を引いた金額なのかを示すことが重要だ。
さらに、購入の公表と市場価格の上昇が近い時期に起きても、上昇分すべてが同社の購入によるものとは証明できない。購入期間は複数日にまたがっており、発表日に同額の買い注文が一度に入ったと説明するのも誤りになる。
20億USDTの作成を、そのまま市場流入としない
11月12日付のChainCatcherは、Ethereum上で20億USDTが作成されたと報じ、TetherのPaolo Ardoino氏が在庫補充のための承認済み・未発行取引と説明したと伝えている。ここでは当時の報道による説明として扱い、個々の顧客への発行額や、その後の流通残高まで独立に検証したとはしていない。
Tetherの公式FAQでも、承認済み・未発行のトークンは財務部門の保管残高にあり、まだ流通していないため対象トークンの時価総額には含めないと説明されている。このFAQは仕組みの確認に用いるもので、現在のページだけから過去の特定取引の全履歴を証明するものではない。
ブロックチェーン上で新しい単位が作られること、顧客に発行されること、取引所に送られること、BTCの購入に使われることは、それぞれ違う段階だ。作成額と同額の米ドルがその瞬間に新しく流入した、あるいは全額でBTCが買われたと結び付ける根拠にはならない。
旧稿の暗号資産市場全体の時価総額や占有率も、集計元と取得時刻が明示されていなかったため、固定した「現在値」としては再掲載しない。価格の上昇で時価総額が増える場合と、流通数量が増える場合を分けて読む必要がある。
財務長官の人事観測と、後日の承認を区別する
旧記事には「エリオット・ベイソン財務長官候補」という名前が出ていたが、今回確認した関連資料にこの人物名を裏付ける記述はなかった。Arthur Hayes氏の論考が有力候補として論じていたのはScott Bessent、スコット・ベッセント氏である。ただし、名前を直すだけで11月13日に就任済みだったと扱ってはいけない。
米上院の公式記録では、ベッセント氏の財務長官人事が承認されたのは2025年1月27日で、賛成68、反対29だった。これは元記事の公開日より後の結果であり、振り返りの補足として示す。将来の人事をめぐる観測と、実際の承認手続きは別々の出来事である。
11月13日は次の大統領任期の就任前だった。旧稿の「米国政府が友好的な政策を推進している」という表現では、選挙で勝利した側の意向と、その時点の政府が実施した施策が混ざる。候補者の発言や民間の予想を取り上げる際にも、政府の正式文書や施行済み制度とは区別したい。
Hayes氏の100万ドル論は信用拡大を仮定した見通し
Arthur Hayes氏の「Black or White?」は、原文ページ上では2024年11月11日付となっている。同氏は、政府が特定産業を支援し、銀行の融資が拡大する経済運営を想定し、BTCが100万ドルへ向かうという強気の見方を示した。旧記事ではこれが、決定済みの大規模金融緩和の結果として紹介されていた点を改める。
論考の中心は、政策や銀行信用が一定の方向に進んだ場合のシナリオである。政府・中央銀行がBTC100万ドルを目標にしたわけでも、決まった期限に到達すると公的に約束したわけでもない。本文には仮想的な会計例も含まれており、実際に行われた取引の記録と混同してはいけない。
予測を理解するには、目標価格の大きさよりも前提を見る必要がある。政策の実施状況や信用供給が想定と異なれば、予測の根拠も変わる。著名な市場参加者の意見として紹介することと、その結論を読者にとって確実な将来として提示することは別である。
旧稿にあったTesla株の史上最高値、Coinbaseアプリの順位、DOGE価格を条件とするMarsrise計画についても、対象日時や公式計画を確認できる根拠が不足していた。企業の新規投資、利用者増加、宇宙ミッションの実施決定としては再掲載せず、確認できた発表と予測に内容を絞った。
よくある質問
Q. HSKは11月13日に現物取引を始めていましたか?
A. 11月7日の公式告知では、HashKey Globalの現物取引開始予定日は11月26日でした。先に始まる入金受付とは別です。
Q. 20億USDTの作成は同額の買い需要を意味しますか?
A. いいえ。当時は在庫補充との説明が報じられています。作成、顧客への発行、他資産の購入は別の段階です。
Q. MicroStrategyの含み益は売却済み利益ですか?
A. いいえ。保有枚数を一定の市場価格で評価し、取得額を差し引いた概算です。実現利益や会社全体の純利益とは異なります。
この記事の出典
- HashKey Group:HSKの上場日程発表(11月7日)
- MicroStrategy:11月11日更新を含むForm 8-K
- ChainCatcher:20億USDTの在庫補充報道(11月12日)
- Tether FAQ:承認済み・未発行と在庫補充
- 米上院:ベッセント財務長官人事の承認記録(2025年1月27日)
- Arthur Hayes:Black or White?
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




