2025年4月9日、暗号資産市場では米司法省の捜査方針転換と、価格下落が企業・取引所に及ぼす影響が重なる局面にありました。NCETの解散は犯罪捜査の全面停止ではなく、企業の評価損も計算対象によって意味が変わります。4月9日午前までに公表された資料を軸に、主要な出来事と、その数字や制度を読む際の注意点を整理します。
米司法省がNCETを解散、捜査の優先対象を変更
米司法省のトッド・ブランチ副長官は4月7日付の覚書で、国家暗号資産取締チーム(NCET)を即時解散すると指示しました。覚書は、刑事訴追を通じて暗号資産の規制枠組みを事実上つくる手法から離れる方針を示しています。取引所やミキシングサービスなどを、利用者の行為や意図しない規制違反を理由に標的とする捜査についても、優先順位を見直しました。
ただし、暗号資産を使った犯罪の捜査が終わるわけではありません。顧客資産の横領、投資詐欺、ハッキングによる資金窃取など、投資家に被害を与える行為は引き続き重視されます。さらに、麻薬取引、人身取引、テロ、組織犯罪などのために暗号資産を利用する行為も対象です。「投資家保護だけに捜査を絞る」と理解すると、この重要な部分が抜け落ちます。
覚書は、新方針と整合しない進行中の捜査を終了し、既存事件も方針との整合性を審査するとしています。一方、個別の起訴判断は事実と証拠に基づきます。特定のサービスに関する訴訟が一律に取り下げられた、とまで読み取ることはできません。
これは司法省内部の執行方針の変更です。法律そのものの廃止や、すべての暗号資産事業に対する合法性の認定とは区別が必要です。今後の影響を追う際は、部署の再編だけで判断せず、各事件の裁判記録や当局の正式な処分を確かめることになります。
Strategyの59.1億ドルの未実現損失は何を示すのか
企業保有の暗号資産にも市場下落の影響が表れています。Strategyは4月7日のForm 8-Kで、2025年1〜3月期のデジタル資産の未実現損失を59.1億ドルと開示しました。関連する16.9億ドルの税効果で一部が相殺されるものの、同四半期は純損失になる見通しを示しています。これは4月8日の市場価格を使って外部から計算した損益ではなく、3月末までの会計期間に関する会社の開示です。
同社の4月6日時点の保有量は52万8,185BTC、取得総額は356.3億ドル、平均取得価格は1BTC当たり6万7,458ドルでした。手数料などを含む数字です。対して、1〜3月期に追加取得した8万715BTCだけを見ると、平均取得価格は9万4,922ドルです。最近購入した分の価格と、過去からの全保有分の平均価格は大きく異なります。
同社は1月1日から暗号資産の公正価値会計を適用しており、その後の時価変動が損益に反映されます。期中に値下がりして会計上の損失が生じても、期末時価が過去の取得原価を下回るとは限りません。実際、3月末の帳簿価額は約435.5億ドルで、取得原価の約356.3億ドルを上回っていました。
また、3月31日〜4月6日にBTCの追加購入はありませんでしたが、これだけで長期的な購入方針の終了とは判断できません。企業間で「含み損」を比べる場合も、対象期間、保有数量、計算通貨、会計基準を揃える必要があります。特定期間の購入分だけを抜き出した推計を、会社全体の決算上の損失として扱わないことが大切です。
Binanceが14銘柄の上場廃止を予告、取引と出金の期限は別
Binanceは初回の上場廃止投票と審査を踏まえ、4月16日に14銘柄の現物取引を終了すると発表しました。対象はBADGER、BAL、BETA、CREAM、CTXC、ELF、FIRO、HARD、NULS、PROS、SNT、TROY、UFT、VIDTです。公式案内の時刻はUTC+8で午前11時、日本時間では同日正午に当たります。
判断材料は投票順位だけではありません。取引量と流動性、開発の進捗、ネットワークの安定性、情報発信なども審査対象です。投票で目立った銘柄がすべて廃止される仕組みでも、今回残った銘柄の上場維持が約束される仕組みでもありません。上場廃止の発表自体から、個々のプロジェクトの不正を断定することもできません。
公表された予定では、現物取引の終了後に未約定注文が取り消され、対象銘柄の入金は4月17日正午以降、日本時間で口座に反映されなくなります。出金停止は6月16日正午の予定です。現物以外の商品には異なる終了日も設定されているため、単に「4月16日まで」と覚えるだけでは、利用中の商品に必要な対応を見落とします。
これはグローバル版Binanceの案内であり、日本居住者が同じ商品を利用できるという意味ではありません。口座を確認する際は契約先と適用される告知を照合してください。また、一つの取引所での上場廃止と、ブロックチェーン上のトークン消滅は別の出来事です。売買の場が減ることによる流動性の変化と、送付先が対応しているネットワークの確認が実務上の論点になります。
利下げ観測とFRBの判断を分けて読む
市場が不安定になると利下げへの期待が高まりやすい一方、関税による物価上昇は金融緩和を難しくする要因にもなります。パウエルFRB議長は4月4日の講演で、関税引き上げが予想より大きくなり、インフレ上昇と成長鈍化につながる可能性を指摘しました。その影響の大きさや持続期間は不確実だと説明しています。
議長は、政策を調整する前に状況がより明確になるのを待てるとの姿勢も示しました。したがって、市場で利下げが意識されていても、特定の会合での実施がFRBによって約束されたわけではありません。景気の弱さと物価の強さが同時に表れる局面では、金融政策の方向を一つの指標だけで読み切るのは困難です。
CMEのFedWatchは、FF金利先物の価格から政策金利の変更確率を推計するツールです。表示される数字は市場の織り込みを示し、中央銀行が公表する実施確率ではありません。比較には、対象会合と取得日時、何ベーシスポイントの変更を指すかを揃える必要があります。25ベーシスポイントは0.25ポイントです。
暗号資産についても、利下げ観測の上昇をそのまま価格上昇の予告に置き換えることはできません。資金調達環境への期待と、景気悪化に伴うリスク回避が同時に動くことがあります。利下げ確率の単独の数値より、当局の発言と市場価格がそれぞれ何を示しているかを分けて読む場面です。
急落時の投資テーマは、資金流入の事実と区別する
市場下落を受けて、価値保存、DeFi、ブロックチェーン基盤などの長期テーマにも関心が向いています。ただし、投資家がある領域を評価する発言と、実際に資金を投入した事実は別です。VCの出資契約と取引所でのトークン購入では、取得条件や売却制限も異なり得ます。注目分野の紹介だけを根拠に、一般の購入者にも同じ投資条件があるとは考えられません。
技術の分類にも注意が必要です。Hyperliquidは独自のレイヤー1ブロックチェーンであり、Solana上の取引所ではありません。同じDeFiという言葉で括られていても、使うネットワークや資産移動の経路が違います。ある基盤のトークンを保有すれば、関連サービスの収益をまとめて受け取れるという関係も自動的には成立しません。
イーサリアムについては、2022年のPoS移行で新規発行の仕組みが変わりましたが、ETHの供給が常に減少するとは限りません。供給量は、新しく発行される量と手数料として焼却される量の差によって変わります。発行抑制という技術上の性質を、そのまま価格の安定や将来の上昇保証として説明するのは不正確です。
4月9日時点のニュースを整理すると、司法省の方針、企業の会計、取引所の取扱条件、金利予想はそれぞれ別の経路で市場に影響します。「規制緩和だから買い」「大口が注目したから底値」と結び付けず、発表済みの事実と条件付きの見通しを読み分けることが、この日の動きを理解する手掛かりになります。
よくある質問
Q. NCETの解散で暗号資産の犯罪捜査はなくなりますか?
A. なくなりません。投資家に被害を与える詐欺や窃取、暗号資産を利用する組織犯罪などは引き続き重点対象です。司法省の執行方針と法律の廃止は別です。
Q. Strategyの未実現損失はBTCを売って確定した損失ですか?
A. いいえ。ここでの59.1億ドルは2025年1〜3月期の時価変動を反映した未実現損失です。特定期間の買付価格から推計する損益とも区別する必要があります。
Q. Binanceの現物取引終了日と出金停止日は同じですか?
A. 公表予定では異なります。対象14銘柄の現物取引は4月16日、出金は6月16日、いずれも日本時間正午に終了する予定とされました。商品や契約先ごとの告知が適用されます。
この記事の出典
- 米司法省:2025年4月7日付覚書
- Strategy:2025年4月7日Form 8-K
- Binance公式:14銘柄の上場廃止予定
- FRB:パウエル議長の4月4日講演
- CME:FedWatchの計算方法
- Hyperliquid公式ドキュメント
- Ethereum:MergeとETH供給の関係
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




