【4月3日】TUSD訴訟とFDUSDの動揺、Circle上場申請を読む

2025年4月3日は、ステーブルコインの裏付けをめぐる対立と、発行会社の経営情報が注目された日です。TUSDの準備金に関する訴訟が報じられる一方、別のステーブルコインFDUSDにも不安が波及しました。USDCを発行するCircleは、米国での株式公開に向けて財務情報を開示しています。

イーサリアムでは、大口保有者の取引と開発者イベントでの悲観的な声が話題になりました。本稿は同日昼までに公表された情報をもとに、裁判上の主張、企業の開示、分析者の推計を分けて読み解きます。

TUSDの約4.56億ドルをめぐる訴訟と双方の説明

CoinDeskは4月2日、TUSDを保有・運営するTechteryxの訴訟書類などをもとに、約4億5,600万ドルの準備金が回収困難になっていた経緯を報じました。Techteryx側は、受託会社First Digital Trust(FDT)に預けた資金が、許可していない投資先へ振り向けられたと主張しています。これは当事者の訴えであり、不正が裁判で確定したという報道ではありません。

一方、FDTのVincent Chok氏は不正への関与を否定し、Techteryx側の指示に従って取引したと説明しました。投資先のAria側も主張を争っています。FDTが否定した内容を「訴えられた事実そのもの」と取り違えると、争点が見えなくなります。

同報道では、Justin Sun氏が資金を融通して償還を支えたことも示されています。ただし、過去の資金不足に対応した融資の経緯であり、4月2日に新たな救済金が全額支払われたという意味ではありません。資産が帳簿に存在することと、利用者への返金に間に合うことは別です。TUSDの件では、投資の許可範囲、回収条件、すぐ使える資金の量がそれぞれ問われています。

FDUSDへの不安の波及と、発行・取引・保管の違い

Sun氏はFDTの支払能力にも疑義を示し、4月2日にはFDUSDの市場価格が1ドルを下回りました。The Blockは一時約9%下落したと報じています。これに対しFirst Digital側は、問題となっている紛争はTUSDに関するもので、FDUSDとは別だと反論し、自社の支払能力とFDUSDの裏付けを主張しました。

ここで混同しやすいのが、取引所と発行会社の関係です。当時のFDUSD発行主体は、First Digital Labsの名称を使う香港法人FD121 Limitedです。Binanceは主要な取引の場ですが、それを理由に「Binanceが発行する通貨」と説明するのは正確ではありません。また、準備資産の保管を担う会社と発行主体も、役割を分けて理解する必要があります。

TUSDの資産について争いがあることだけで、FDUSDにも同額の不足があるとはいえません。反対に、発行側の説明だけで懸念が解消したとも判断できません。通貨ごとに、準備資産の報告対象日、保管先、発行残高との対応、償還の運用を確認することになります。

市場価格は売買の需給で動きます。額面での償還をうたう仕組みがあっても、売買の集中や換金への不安で価格差が生じる場合があります。価格下落は警戒材料ですが、それ単独で資産不足を立証するものではありません。

CircleがIPO申請、公募価格と評価額は未確定

Circleは4月1日付の登録届出書S-1で、ニューヨーク証券取引所への上場を申請したと開示しました。予定する株式コードはCRCLです。書類はクラスA普通株式の新規公開と既存株主による売出しを扱っており、引受会社を通じるIPOの計画です。「直接上場」と呼ぶ方式と混ぜて説明するべきではありません。

この時点の表紙では、募集株数や想定する1株当たり価格の欄は空欄でした。したがって、報道に登場する企業価値の見積もりを、決定済みの公開価格に基づく評価額として扱うことはできません。上場申請、条件決定、売買開始は別々の段階です。

会社による新株発行と、既存株主による株式売却にも違いがあります。新株の募集で会社が受け取る資金と、売出しで株主が受け取る資金を足して、すべて会社の成長資金になると考えるのは誤りです。上場規模を見る際は、金額だけでなく内訳にも目を向ける必要があります。

USDCの利用拡大とCircle株式の価値も同じではありません。USDCの保有者が持つのはドル連動のトークンで、Circleの株主になるわけではありません。企業としての費用や利益を読むために、今回の財務開示が役立ちます。

準備資産の利息収入が、そのままCircleの利益にはならない

S-1によると、2024年の継続事業の売上高・準備資産収入の合計は約16.76億ドルで、うち約16.61億ドルが準備資産からの収入でした。一方、流通・取引費用は約10.11億ドルです。発行残高が生む収入の大きさに加え、USDCの利用を広げるための費用も大きいことが分かります。

Coinbaseとの分配は「Circleの最終利益の半分」という仕組みではありません。準備資産の収入から管理費などを調整し、発行側に留保する分や両社のサービスで保有されるUSDCに対応する分、認められた他の参加者への支払いを計算したうえで、残る分配原資の50%をCoinbaseが受け取る構造です。どこでUSDCが保有されるかも、支払額に関係します。

この事業を考えるうえでは、運用利回りと残高を同時に見る必要があります。同じ残高でも金利が下がれば利息収入は減りやすくなりますが、利用の拡大で残高が増えれば、その影響が一部相殺される可能性があります。金利の方向だけから利益の増減を決めつけることはできません。

さらに、分配費用を差し引いた残りからも人件費やシステム運営費などが発生します。準備資産の安全性を考える話と、発行会社がどれだけ利益を残せるかという話を分けると、ステーブルコイン事業の実態を捉えやすくなります。

2,000 ETHの売却観測、利益額は条件付きの推計

ChainCatcherは4月2日、オンチェーン分析者ai_9684xtpaの観測として、大口アドレスが2,000 ETHを売却した可能性を伝えました。推定取得単価は272ドルで、売却した場合の利益を約327.3万ドルとしています。同じ報道が示した直近約1か月の合計は5,000 ETHで、利益の見積もりは約867.8万ドル超です。

分析では2017年からの取得履歴が参照されていますが、こうした数字は追跡できた移動と価格をもとにした推定です。ウォレットの外で行われた取引や、保有者の全資産、手数料まで把握した会計上の利益ではありません。原報も条件付きで伝えており、「利益が確定した」と強めて書く根拠にはなりません。

取引所への入金が見つかった場合でも、入金と売却約定は別の出来事です。外部から見える移動だけで、売った数量や執行価格がすべて分かるとは限りません。逆に、分散型取引所での交換なら取引記録から確認できる部分が増えます。どの取引を根拠にした分析かが重要です。

一つの大口アドレスの動向は市場を観察する材料になりますが、ETH保有者全体の行動を代表するものではありません。売買が価格に与える影響も、その時点の取引量や注文の厚さに左右されます。

ETH Hangzhouの悲観論は約10人の聞き取り

ETH Hangzhouの現地取材としてPANewsに掲載されたOdailyのWenser記者の記事は、Demo Dayで約10人に質問した小規模な調査を紹介しています。近い将来のETH最高値更新には悲観的な回答が多く、アプリの普及や新しい資産の登場などを期待する意見が取り上げられていました。

ただし、これは開発者コミュニティ全体への大規模な意識調査ではありません。現場で回答した少人数の声を、「イーサリアム関係者の大多数は今後数年の上昇を否定している」と一般化することはできません。回答者の立場や保有状況によっても、見方は変わります。

取材で浮かんだ論点は、技術開発が進むことと、ETHへの経済的な需要が増えることの距離です。利用者にとって処理が安く便利になることを歓迎しながら、その変化がトークンの価値にどう結び付くかには慎重な見方もできます。技術への期待と短期価格への悲観は、必ずしも矛盾しません。

この日のニュースには、裏付け資産、会社の収益、大口の取引、参加者の感情という異なる情報が並んでいます。訴訟の結論は法的手続きで、IPOの条件は続く開示で、売却観測は取引の証拠で確かめる必要があります。それぞれに合う確認方法を使うことが、見出しだけで相場観を固めないための手掛かりになります。

よくある質問

Q. TUSDの訴訟はFDUSDの準備金不足を意味しますか?

A. 通貨も対象資産も異なるため、そのようには断定できません。First Digital側はTUSDに関する紛争だと反論しています。FDUSDについては同通貨の準備資産と償還状況を個別に確認する必要があります。

Q. 4月3日時点でCircleのIPO価格は決まっていましたか?

A. 本稿が参照した4月1日のS-1では、想定公募価格と株数の欄は空欄でした。報道上の評価額と正式な公開条件は分けて読む必要があります。

Q. 杭州のイベントでETHの将来予測が決まったのですか?

A. いいえ。約10人への現地聞き取りで紹介された見解です。参加者全体の総意でも、将来の価格を確定する情報でもありません。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。