DeepSeekとBTC下落を検証|学習費用・AI銘柄・月末オプション

2025年1月27日、DeepSeekへの注目が高まるなか、米国のAI関連株やビットコインに売りが広がった。翌28日にこの動きを読むうえで鍵となるのは、AIの技術的な成果と市場の反応を区別することだ。学習費用の数字、AI関連トークンの動き、月末のオプション満期について、当時の資料が示す範囲を整理する。

米国株とBTCの下落は観測時点をそろえて読む

2025年1月27日の米国市場では、DeepSeekの台頭を受けてAI関連企業の評価を見直す動きが広がった。Reutersの同日報道では、NVIDIA株は約17%下落して118.58ドル、AMD株も6%超下げたとされる。取引開始前の先物や寄り付き直後の下落率と、その後の株価を一つの数字として扱うと、値動きの大きさを取り違えてしまう。

暗号資産にも売りが広がり、CoinDeskは同日、ビットコインが9万9,000ドルを下回ったと報じた。同記事はDeepSeekをめぐる米国ハイテク株への懸念に加え、米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えた警戒にも触れている。値下がりとAIニュースが同時に起きたことは確認できるが、売却理由をDeepSeekだけに限定できるわけではない。

株式には市場の取引時間があり、暗号資産は週末も取引される。両者の下落率を比べるなら、前日終値からの変化なのか、直近24時間の変化なのかを確かめたい。同じ「27日の下落」でも基準は一致しない。また、価格水準は取引所や集計方法によって違い、記事中の数字は当時の観測値であって、現在の相場を示すものではない。

DeepSeekの注目度とR1の性能は別の指標

Reutersは1月27日、DeepSeekのAIアシスタントが米国のApp Storeで無料アプリの首位になったと報じている。ここで分かるのは、その時点でアプリへの関心が強まったことだ。累計ダウンロード数、課金収入、企業での導入件数までChatGPTを上回ったことを示す数字ではない。

技術面では、DeepSeekが1月22日に提出したR1の論文初版が、強化学習を用いる推論モデルの開発を説明している。研究チームは、R1-Zeroに見られた読みにくさや言語混在などへの対応として、R1に複数段階の学習と初期データを取り入れたと述べた。推論課題でOpenAIのo1-1217に匹敵する性能という評価も、同チームが報告した結果として理解する必要がある。

一つのベンチマークの結果から、すべての仕事で同じ優劣が出るとは言えない。日本語の文章、長い資料の検索、計算、外部ツールの操作では要求が異なるからだ。実用性を比較するには、正答率だけでなく、回答にかかる時間、再試行の回数、誤回答を確認する人の負担も同じ条件で測ることになる。ランキングの上昇と業務上の性能評価を分けると、話題性だけで技術の勝敗を決めずに済む。

557.6万ドルはV3の正式学習を対象とした推計

低コストという評価の根拠として広く参照されたのは、DeepSeek-V3の技術報告書にある学習費用だ。同報告は計278.8万H800 GPU時間を示し、GPU一基を一時間利用する費用を2ドルと仮定して、557.6万ドルと計算している。これには正式学習の各段階が含まれる一方、先行研究や設計・データなどの比較実験の費用は含めないと明記されている。

したがって、この金額を会社の総投資額、設備購入額、あるいはR1の開発に必要だった全費用と呼ぶことはできない。別企業の長年の研究開発費やデータセンター建設費と並べても、費用の対象が違うため、そのまま効率の比較にはならない。金額が小さいという印象より、何を計算に入れた数字なのかを押さえる方が重要だ。

同報告は、FP8の混合精度学習、MoE、MLAなどを使った効率化を説明し、2,048基のH800からなる計算環境にも言及している。ただし、計算に使う数値の精度を32ビットから8ビットへ変えるだけで、必要なGPU台数が必ず4分の1になるわけではない。実際の学習では、通信、メモリ、演算の待ち時間なども所要時間を左右する。

この事例が示す論点は、巨額の設備投資が不要になったという結論ではなく、同じ目的を達成するための計算資源の使い方を改善できる可能性だ。学習の効率と、サービス提供時に大量の問い合わせを処理する費用も別に評価する必要がある。

AI関連トークンへの影響は用途と権利で変わる

AIへの注目が高まっても、AIを掲げる暗号資産が一律に買われたわけではない。The Blockの1月27日米国時間午前の記事では、直近一日の値動きとしてNEAR、ICP、RENDER、FETがそれぞれ8%、9%、10%、11%下落したと報告された。これは掲載時点の相場で、AI関連銘柄すべての共通した騰落率ではない。

高性能なモデルを安く呼び出せれば、AIエージェントを運営する側の費用が下がる可能性はある。一方、同じモデルを競合も使えるなら、単に接続するだけでは差をつけにくくなる。利用者が継続して使う機能、独自のデータ、安定した運用など、モデル以外の部分が事業の評価に関わる。

さらに、サービスの改善とトークン保有者が受け取る利益は同じではない。利用料金の支払いにトークンが必要なのか、収益分配の権利があるのか、供給増加が予定されているのかを個別に見る必要がある。オープンな開発フレームワークを使えることも、その名称を持つトークンの購入が必要なことを意味しない。

Elizaなどのエージェント基盤についてモデル対応を確認する場合も、対応するモデル名とソフトウェアの版をそろえたい。接続設定が存在すること、実際の処理が成功すること、本番で継続して使えることには違いがある。対応のニュースだけで将来のトークン需要を確定させることはできない。

キヨサキ氏の2月暴落説は本人の予測

同じ時期、ロバート・キヨサキ氏は2025年2月に歴史的な株式市場の暴落が起き、資金がビットコインなどへ向かうとの見通しを示した。The Economic Timesは1月27日の本人の投稿を引用して、この主張を報じている。市場で広く合意された予測や、将来の資金移動が確定したという発表ではない。

本人は投稿で2013年の著書にも言及したが、それだけで当時の本が2025年2月という時期まで指定していたとは確認できない。過去から市場崩壊を警告してきたことと、今回の投稿で具体的な月を挙げたことを分けておく必要がある。

相場予測を検討するなら、対象となる指数、下落幅、期間、予測が外れたと判断する条件を確認したい。「史上最大」という表現だけでは、日次の下落率なのか、一定期間の時価総額の減少なのかも明確ではない。株式が下落すれば必ずBTCへ資金が流れるという関係も成り立たず、実際の資金フローを確かめる作業が必要になる。

月末78億ドルのオプションは売却予定額ではない

CoinDeskの1月24日記事は、Deribitで1月31日に満期を迎えるBTCオプションの想定元本を約78億ドルと報じた。満期時刻はUTC午前8時、日本時間では午後5時に当たる。これはその時点の建玉と価格に基づく規模であり、同額のビットコインが市場で売却される予定を表す数字ではない。

オプションの買い手には権利があり、満期時に価値が残るかは行使価格と決済価格の関係で決まる。すべての契約が同じ方向の現物売買につながるわけではない。売買参加者が価格変動への備えを調整することで需給が変わる場合はあるが、その方向や規模は保有ポジションによって違う。

同記事で紹介されたマックスペインの9万8,000ドルも、特定の建玉構成から計算した水準で、価格が必ずそこへ到達するという予報ではない。新しい取引が加われば計算結果も変わる。満期の大きさを知ることと、価格の行き先を言い当てることは別だ。

この局面を振り返る際は、株価の観測時刻、AIの学習費用の範囲、トークンが持つ権利、オプションの想定元本という四つの基準をそろえたい。技術上の進歩、市場参加者の期待、実際に発生した売買を分けることで、強い見出しに隠れた数字の意味を読み取れる。

よくある質問

Q. DeepSeekは約557万ドルだけで開発されたのですか?

A. V3の報告書が示す557.6万ドルは、一定のGPU利用単価を仮定した正式学習の推計です。先行研究などを含む総開発費やR1全体の費用ではありません。

Q. AIが高性能になると関連トークンも値上がりしますか?

A. 自動的には結びつきません。サービスの利用がトークン需要につながる設計か、保有者にどんな権利があるかによって違います。

Q. 78億ドルのオプション満期は同額の売りが出る意味ですか?

A. 違います。報道の金額は想定元本です。決済やヘッジの影響は契約条件と保有ポジションによって変わります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。