【3月27日】RWA市場の加速、ビットコインの“最後のリスク”消滅、そして新たなFHE動向――最新仮想通貨ニュース総覧

【要約】
・RWA(リアルワールドアセット)市場が急成長し、195.3億ドル規模に到達
・Ethena LabsとSecuritizeが新パブリックチェーン「Converge」をQ2にローンチ予定
・BlackRockやSuperstateなどが10億ドル規模のトークン化アセット競争で選出
・15以上の仮想通貨プロジェクトが独自トークンの回購を相次いで発表
・GameStopがビットコインを企業資産に組み込み、株価も上昇
・Fidelityが独自ステーブルコイン発行に向けて後期テスト段階へ
・ビットコインの“政府禁止”リスクが事実上解消されたとの見方が拡大
・FHE(完全準同型暗号)分野への期待が続く一方、具体的ユースケース模索が課題

RWA市場が195.3億ドル規模へ:DeFiを超えて金融インフラを再定義

RWA(リアルワールドアセット)市場のチェーン上価値が拡大している。rwa.xyzによれば、3月25日時点でRWAのオンチェーン総価値は195.3億ドルに達し、過去30日間で約19.58%増加した。前年同時期(94.07億ドル)から約108%もの成長を遂げており、今後もさらなる拡大が見込まれている。

イーサリアムが依然としてRWA担保資産の主要ネットワークとして50.1億ドル超を占める一方、ZKsync EraやAlgorandなども成長が顕著だ。最近は、米大手資産管理会社BlackRock(ブラックロック)の「BUIDL」ファンドが10億ドルを突破したことがRWA業界を大きく揺るがせている。また、DigiFTの代替指数ファンド、Figureによる抵当住宅ローン証券(MBS)のブロックチェーン活用など、RWAの活用範囲は国債から不動産、私募インフラ基金など多岐にわたる。

Converge誕生:Ethena Labs × Securitizeの新パブリックチェーンとUSDe安定通貨構想

Ethena LabsとSecuritizeが共同で駆動する新たなパブリックチェーン「Converge」は、トラディショナル金融(TradFi)とDeFiを融合させる決済基盤として注目を集めている。2025年の第2四半期に正式ローンチされる予定で、USDeやUSDtbなど複数のドル連動型通貨を統合し、セキュリティトークンを幅広いアセットクラスに展開する構想を打ち出している。

Converge上では、Securitizeによるトークン発行レイヤーが稼働し、国債やファンドのみならず多様な有価証券をオンチェーン化する。また、Aave LabsやPendle Institutional、Morpho Labs、Maple Financeなど、既存のディファイ(DeFi)プロトコルが積極的に参入し、トラディショナルな債券・証券とオンチェーン流動性の橋渡しを進めるという。今後のRWA市場拡大の一角を担う重要インフラとなり得るかが注目される。

10億ドルのトークン化レースとBlackRockのBUIDLファンド

3月18日に実施された「Spark Tokenization Grand Prix」では、BlackRock-Securitize、Superstate、Centrifugeが優勝を果たし、それぞれ5億ドル、3億ドル、2億ドルの資産トークン化枠を得る見込みだ。これはSky(旧MakerDAO)が主導する大規模プログラムの一環で、多様な投資家のRWA参入を後押ししようという狙いがある。

一方、BlackRockは自社のBUIDLファンドが10億ドルを突破したと発表。米短期国債で裏付けられたこのファンドは、いわゆる「オンチェーン版マネーマーケットファンド」として注目を集める。イーサリアムやArbitrum、Optimism、Polygonなどマルチチェーン対応を進めており、さらにSolanaネットワークへの拡張も発表された。機関投資家向け暗号資産カストディの活用など、従来の金融商品とDeFiの境界を融合する動きが一層加速している。

15の仮想通貨プロジェクトが回購に踏み切る:市場安定とトークン経済再設計

ここ数日で注目を集めたのが、AaveやArbitrum、Movementなど少なくとも15のプロジェクトが表明した独自トークンの回購(バイバック)だ。回購原資としてはプロトコル収益やペナルティで得た資産、ファンド予算など多岐にわたる。プロジェクト側はこの回購を一時的な価格維持策だけではなく、長期的なトークン経済の再設計と位置づけている。

また、この回購ブームとタイミングを同じくして、ImmutableへのSEC調査終了やGameStopのビットコイン採用などの好材料が重なり、業界全体にやや強気のムードが漂っている。しかし市場参加者には楽観論と慎重論が共存しており、特に米国の金融政策が今後のリスク要因として警戒されている。

GameStopがビットコインを企業資産に:機関・企業のBTC受容が加速

一時期“meme株”として話題を呼んだGameStopが、取締役会の全会一致によりビットコインをバランスシートに組み入れた。これを受けて同社株は時間外取引で約7%上昇した。
マイクロストラテジーやテスラが先んじてビットコインを保有してきたが、伝統的ゲーム小売という業態のGameStopが続いたことで、機関・企業によるビットコインの保有がさらに一般化するとの見方が強まっている。米オクラホマ州議会が「戦略的ビットコイン準備法案」を可決したこともあり、公的機関によるビットコイン採用にも広がりがみられる。

Fidelityのステーブルコイン構想とSECの動向:広がる規制明確化

大手資産運用会社Fidelity Investmentsが、米国でステーブルコインを発行する準備を進めている。すでに試験段階の後期にあると報じられ、今年後半に正式発表される可能性がある。
また、Fidelityは既に「OnChain」という株式クラスを登録申請し、自社のマネーマーケットファンド(Fidelity Treasury Digital Fund)をトークン化する計画も進行中だ。これらは機関投資家のデジタル資産導入を容易にし、同時にSECによる承認プロセスが焦点となる。

一方で、SECは2025年4~6月にかけて加密資産やトークン化、DeFi規制などを議題とする4回の円卓会議を開催する。強硬姿勢が先行してきたが、建設的な対話の兆しも見え始めている。

ビットコインの“最後の生存リスク”消滅説:政府禁止の可能性は後退?

BitwiseのCIO(最高投資責任者)であるMatt Hougan氏は、ビットコインが誕生以来直面してきた「政府による禁止リスク」が事実上解消されたと指摘している。過去には1933年の米国政府による金没収例などが引き合いに出されてきたが、米国はビットコインを「ドルの代替足り得る通貨候補」として容認する可能性が高いとみられる。
特に連邦政府や一部州議会がBTC導入に前向きな姿勢を示す中、機関投資家も大規模に参入。Hougan氏は「過去と比べリスクは大幅に低減し、ビットコインへの投資は今が最適期だ」と述べている。

FHE(完全準同型暗号)とプライバシー:Signal成功例が示す持続可能モデルへの課題

完全準同型暗号(FHE)は、プライバシー技術の究極形ともいわれるが、ブロックチェーンとの本格融合はこれからだ。ZK(ゼロ知識証明)がL2やRollupで主に“高速検証”を実現しているのに対し、FHEは計算プロセス全体を暗号化したまま行うため、ユースケースの設計がさらに複雑になる。

プライバシー分野では、エンドツーエンド暗号化メッセージングの「Signal」が寄付のみで成り立つ組織運営を続けている点が注目を浴びる。大手SNSのように広告モデルに依存せず、ユーザー情報を収益化しない形でサーバーなどのコストをまかなう形だ。FHE領域でも、同様に広告収入をビジネスモデルとしないサービスが将来登場するかが焦点となっている。もっとも、RWAや暗号資産に直接適用するにはL1への大規模な仕様変更など技術的課題が多く、まずは暗号化された“暗号資産の取引所(暗号化暗号取引)”といった限定的な場面から採用される可能性が指摘されている。

量的引き締めから量的緩和へ?米金融政策と暗号資産市場

3月末から4月にかけて米連邦準備制度(FRB)の政策スタンスが注目されている。マーケットでは量的引き締め(QT)が縮小し、2025年下半期には量的緩和(QE)へ再転換するとの観測が一部で浮上している。もし実際に大幅な金融緩和へ向かえば、ビットコインをはじめ暗号資産市場にも追加的な資金流入が期待できる。

ただし、主要インフレ指標のPCE(個人消費支出物価指数)が再び上振れすれば、利下げ見通しが先延ばしになる可能性もある。短期的な価格変動は米ドルや債券市場の動向に影響されやすい局面が続き、投資家は引き続き注意が必要だ。

総括的視点:RWA拡大とBTC受容で市場は次なる段階へ

RWAトークン化の進行や、ビットコインが「政府禁止リスク」の段階をほぼ脱したとの見方、企業や機関投資家によるBTC導入など、市場の基盤が着実に整いつつある。また、Fidelityの動きやSECの姿勢変化など、旧来の規制環境にも変化が表れ始めた。
一方、プライバシーやFHEのような先端領域は引き続き課題が多く、すぐに大規模普及するとは限らない。ただ、Signalが広告モデル以外でもユーザーベースを確保している事例に見るように、次世代の暗号技術・ブロックチェーン技術が“自立したエコシステム”を築けるか否かが注目される。
今後もRWAやビットコイン動向のみならず、ステーブルコイン規制、暗号資産企業の回購戦略、プライバシー技術の実装といった複合的な観点から、市場の行方を注視していく必要がある。

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