【要約】
本記事では、2025年1月21日~1月23日に報じられた主要な仮想通貨ニュースを一挙に整理する。Ledger創業者の誘拐疑惑、Solana DeFiにおけるTRUMP(トランプ)トークンの波紋、そしてトランプ大統領による5000億ドル規模のAIインフラ構想「Stargate」の発表が大きな注目を集めている。さらに、ZachXBTが受け取ったMemeトークンをめぐる論議や、イーサリアムの重要開発者Eric Connerのコミュニティ離脱など、暗号資産(仮想通貨)業界に影響を与える出来事が相次いで起こった。本記事では、それぞれのニュースを時系列に沿って詳細に解説する。
Ledger創業者誘拐疑惑:フランス当局が捜査を開始
フランスを拠点とするハードウェアウォレット企業Ledgerの共同創業者であるEric Larch氏が誘拐された疑いが浮上し、フランスの国家憲兵隊特殊部隊(GIGN)を含む警察当局が捜査に乗り出した。フランスメディアによると、犯人グループはビットコイン(BTC)を身代金として要求している模様だ。1月21日、Larch氏の所有するメロー(Méreau)地区の邸宅で大規模な捜索が行われ、近隣住民への聞き込みも実施されたが、フランス当局から公式な声明はまだ出ていない。
Ledgerは仮想通貨の保管におけるセキュリティ面で高い評価を受けているが、創業者本人への身柄拘束疑惑は世界中の投資家や利用者に衝撃を与えている。今後の捜査進展に注目が集まるとともに、仮想通貨のセキュリティ体制そのものにも改めて関心が高まっている。
Solana DeFiを揺るがすトランプトークン:Meteora取引量が8倍に急増
次に話題となったのは、米国大統領トランプ氏が個人名義で発行した「TRUMP」トークンと、それに続く家族による「MELANIA」トークンの登場である。Solanaエコシステム内の分散型取引所(DEX)では、このトランプコイン熱が取引量を史上最高水準に押し上げた。とりわけ「Meteora」の日次取引高は、1月18日前後から急激に増加し、一時は従来の8倍を超える39億~60億ドル規模にまで拡大した。
一方で、これまでSolanaにおける主要DEXだったRaydiumは、Memeコイン需要に対するシェアが一時的に30%を下回るほどシェアを奪われ、存在感が後退した。MeteoraはRaydiumやJupiterと並ぶ流動性プラットフォームで、元々大きな市場占有率はなかったが、今回のトランプ家族トークンの熱狂を背景に新規ユーザーと取引量を大幅に取り込むことに成功した。
専門家の見立てでは、Memeトークン需要が落ち着けばMeteoraの取引量は平常時に戻る可能性があるものの、これを機にユーザー基盤が拡大すれば、Solanaエコシステム全体のDeFi構造が変化する可能性もある。トランプコインが単なる一過性のブームに留まるのか、今後も市場の牽引役となるのか、コミュニティの動向が注目される。
トランプ大統領のAIインフラ計画「Stargate」:5000億ドル規模で始動
トランプ氏は1月21日、就任後初の大型プロジェクトとして、ソフトバンクの孫正義氏やOpenAIのSam Altman氏、Oracleの共同創業者Larry Ellison氏らをホワイトハウスに招き、AI(人工知能)関連の超大型投資構想「Stargate」を発表した。初期投資額は1000億ドルで、最終的に5000億ドル以上を投じてAI用データセンターや各種インフラを整備する方針だ。マイクロソフトやNVIDIAも参加が見込まれ、10万もの新規雇用を生み出すとされる。
このプロジェクトにはソフトバンク、OpenAI、Oracle、そしてMGXなどが出資する見込みで、ソフトバンクが資金面で主導的役割を担い、OpenAIが運営面を支えると伝えられている。既存のクラウド大手も技術パートナーとして参画し、AIと仮想通貨を組み合わせた次世代のインフラ構築が計画されているという。バイデン前政権がAIのリスク管理を重視していたのに対し、トランプ政権は大幅な規制緩和とインフラ支援に舵を切っている。
金融市場では、Oracle株価の上昇や、AI関連銘柄の資金流入が目立ち始めている。仮想通貨分野でもAI系トークンへの再注目が起こり、Meme分野からAIセクターへ資金が回帰しはじめた。専門家は「国主導の巨大AIプロジェクトは、業界全体を飛躍的に押し上げる可能性がある」と分析している。
トランプコイン事件後の市場動向:4つの予測
トランプの個人トークン「TRUMP」や家族が発行した「MELANIA」が市場を沸かせたが、その後の価格急落や次々と登場する派生Memeトークンが波乱を呼んでいる。著名アナリストは、今後の加密市場(仮想通貨市場)について以下の4点を指摘する。
- 名人・有名人Memeトークンの乱立
トランプ家族の事例を受け、著名人が自身のブランド力を活かしてトークンを発行する動きが加速するとみられる。過去にはフロイド・メイウェザー氏などがトークンを宣伝した例もあるが、ユーザー数の増加や関心の高まりを背景に、今後はより大規模なMemeトークンプロジェクトが登場する可能性が高い。 - Memeトークン利回りの逓減
大物の参入が続くと、目新しさによる短期的な爆発力は徐々に薄れる可能性がある。投資家の目線が厳しくなる一方で、選別も進むため、Memeトークン間の競争は激化すると予測されている。 - AI銘柄の王者復活
近時のMemeブームが一服すると、再びAI関連トークンへの注目が高まると考えられている。OpenAIや各社の巨大投資計画が後押しとなり、AI×仮想通貨の分野は長期的な成長が見込める分野として再評価されている。 - Solanaのエコシステム拡大
TRUMPトークンやMELANIAトークンの事例が示すように、Solanaは高い処理能力と独自のユーザーベースを背景に、今後も「大衆受け」しやすいチェーンとして市場をリードする可能性がある。高い取引速度とスケーラビリティが新たなユーザーを呼び込み、DeFiやMemeトークンのハブとしての役割を一層強めるかもしれない。
ZachXBTをめぐる議論:Memeトークンで390万ドル相当を手に入れた“チェーン探偵”
続いて話題となったのは、数々の詐欺案件を暴いてきた「チェーン上の探偵」として知られるZachXBTの動向である。トランプ騒動で盛り上がるMeme市場において、コミュニティがZachXBTを讃えるトークンを発行。その際、ZachXBTは空投げで受け取った代替トークンを流動性プールに追加し、高騰後に引き出したため、約390万ドル相当の利益を得た。
一部からは「かつての正義の味方が変質したのか」との批判もあったが、ZachXBT自身は「十分な報酬を受け取らずに調査活動を続けてきた」と明かしており、今回のトークン売却はあくまで正当な権利とする見方も多い。実際には、彼が流動性を一度引き出して再度投入し、プールのロックを行うなど、コミュニティに配慮した動きも見られた。市場関係者は「単なる投機的なプール撤退に起因する価格下落を、正義のヒーローの変節だと短絡的に捉えるのは早計」と分析している。
イーサリアム開発の重鎮、Eric Connerのコミュニティ離脱
最後に注目を集めたのは、EIP-1559の共同著者であり、長年イーサリアムの中心人物として活動してきたEric Conner氏のコミュニティ離脱である。Conner氏は「現在のイーサリアムのリーダーシップには懸念を覚えており、私は一旦離脱する。深い部分ではイーサリアムの成功を願っているが、今はAIの可能性に集中したい」と発言した。
彼が言及するAI関連プロジェクト「Freysa」は、ブロックチェーン技術とAIを組み合わせた新領域を目指すもので、Conner氏は「仮想通貨はAIの未来を公正かつ安全に保つ上で不可欠」と述べ、今後はこの分野にリソースを集中させる意向だ。イーサリアムコミュニティにとっては大きな痛手とも言えるが、「AIとブロックチェーンの融合」という新たな潮流を牽引する側面もあり、その動向が注目される。