2024年米大統領選と暗号資産|トランプ勝利と市場反応を検証

2024年11月の米大統領選では、ドナルド・トランプ氏の勝利への期待とともにビットコイン価格が上昇した。ただし、投票日、勝利が伝えられた日、大統領に就任する日は異なる。11月7日に公開された旧記事には日付や議会選挙の扱いに誤りがあった。本稿では、当時の市場報道と共和党の政策文書を読み直し、何が確認でき、何が期待にとどまっていたのかを整理する。

投票日は11月5日、11月7日はこの記事の公開日

米国立公文書館が示す2024年の一般投票日は、米国現地時間の11月5日である。旧記事の冒頭にある「11月7日の大統領選挙」と、本文の「11月6日に行われた選挙」は訂正する。日本で開票ニュースに接した日と、米国で有権者が投票した日を混ぜると、市場が何に反応したのかも読み違える。

また、開票状況から勝利が報じられる段階と、選挙人投票や議会での集計は別の手続きだ。公文書館の日程では選挙人による投票は12月17日、議会の集計は翌2025年1月6日、就任は1月20日となる。11月7日時点の記事で、トランプ氏が新しい任期の大統領権限をすでに行使していたかのように説明するのは適切でない。

後日確定した選挙人票はトランプ氏312票、カマラ・ハリス氏226票だった。この数字は結果を振り返る補足として扱う。初期の開票速報が伝えた獲得見込みと、正式手続きを終えた最終結果を同じ時点の数字として並べないことが、選挙と相場の関係を追う基本になる。

下院の多数派判明を11月7日に前倒ししない

旧記事は、大統領選での勝利と同時に共和党が上下両院を制したと記述していた。しかし、AP通信が共和党の下院218議席獲得を伝えたのは11月13日である。同報道は、上院ではそれ以前に共和党が多数派を奪還していたと説明している。したがって、11月7日の記事に下院まで確定済みと書くことはできない。

後から見ると大統領職と両院の多数派が同じ政党にそろったとしても、その結末がいつ判明したかは重要だ。当時の投資家が判断材料にできた情報の範囲が変わるためである。ここでは下院についての11月13日報道を、公開日後の補足として明示する。米国のSenateの訳語も、旧記事の「参議院」から「上院」へ修正した。

議会の勢力図は政策の実現可能性を考える材料になるが、選挙の勝敗だけで個々の暗号資産関連制度の内容まで決まるわけではない。多数派を得たという政治上の事実と、特定の法案が成立したという事実を分けて読む必要がある。旧記事はこの間にある手続きを省き、規制緩和と市場成長を近接させすぎていた。

BTCの7万5,000ドル突破は開票中の市場反応

11月6日更新のReuters報道では、アジア時間の取引でBTCが7%上昇して7万5,060ドルとなり、3月の高値を上回ったと伝えられた。記事の時点では、なお勝敗を判断するには早いとしつつ、市場がトランプ氏の勝利を織り込み始めていたと説明している。「勝利が完全に確定してから初めて上昇した」という順序ではない。

この価格は、その報道が捉えた時点の値だ。11月6日の全取引所共通の終値や、翌日以降も含む最終的な最高値を意味しない。後から別の記事で異なる高値を見つけても、まず配信時刻と観測期間をそろえる必要がある。ドル建ての相場を円建ての購入価格や損益にそのまま置き換えることもできない。

報道は規制姿勢の変化への期待を上昇の背景として挙げている。ただし、それは市場参加者の見方であり、値上がり分のすべてを一つの政治要因で説明する証明ではない。まして、短期の高値更新から、次の数カ月の上昇や特定の投資家の利益まで保証することはできない。価格の観測と、その理由についての解釈は別々に記録したい。

共和党綱領に書かれた方針と、実施済み政策の違い

2024年の共和党綱領には暗号資産に関する項目があり、中央銀行デジタル通貨の創設に反対する姿勢、ビットコインを採掘する権利、デジタル資産を自己保管する権利などが掲げられている。これらは、選挙前から公表されていた党の方針を確認する資料になる。自己保管とは利用者自身が鍵を管理する形で、取引所が預かる方式と区別される。

ただし、党綱領は行政機関が発出した個別の規則ではない。自己保管を支持する方針があることから、すべての取引が無条件で認められた、あるいは利用するサービスの安全性が政府に保証された、と解釈することはできない。採掘、保管、売買、銀行の資産管理は、それぞれ異なる論点を含む。

旧記事はSEC委員長の交代や国家としてのBTC保有についても期待を並べていたが、11月7日は新政権の就任前である。選挙運動中の発言を、当日の解任や購入の実行として扱わない。「暗号資産を重視する候補が勝利した」という政治ニュースと、「具体的な制度変更が施行された」という行政上のニュースでは、確認すべき文書も日時も異なる。

12万5,000ドル予測は選挙前から示された条件付き見通し

The Blockが2024年9月12日に伝えたGeoff Kendrick氏の説明では、その年末のBTCについて、トランプ氏勝利なら12万5,000ドル、ハリス氏勝利なら7万5,000ドルという見通しが示されていた。同氏はスタンダードチャータードのアナリストである。この報道から確認できるのは、選挙結果別の予測が投票前に提示されていたことだ。

したがって、旧記事のように12万5,000ドルを「当選によって新たに出された予測」とだけ紹介すると、公表時期が不正確になる。予測は発言者、発表日、目標時点、前提条件を組み合わせて読むべきものだ。2024年末という期限を外して、今後いつか到達する価格として紹介すれば、予測の意味も変わってしまう。

また、金融機関の担当者による見通しは、銀行がその価格で買い取る約束でも、実際に到達した価格の記録でもない。旧稿の2025年末20万ドルという数字も、今回確認した9月12日の発言と一括して、11月7日の新規発表だったとは扱わない。ここでは出典と時点を確認できた予測に範囲を絞り、実績と混同しない形で残した。

政治家名のトークンと有権者調査の数字をどう読むか

旧記事は選挙関連のミームコインが多数急落したと述べ、ハリス氏に関連するトークンにも触れていた。しかし、銘柄名だけでは、どのチェーンのどのコントラクトを指すのか特定できない。同じ政治家名を使うトークンがあっても、本人や陣営が発行・承認した証拠にはならない。名前の一致と公式な関係を分ける必要がある。

価格変化の比較には、対象銘柄、観測開始時刻と終了時刻、売買できる市場の確認が欠かせない。BTCが上昇したという記録だけから、資金がすべてミームコインからBTCへ移ったとは言えない。旧稿にはその資金移動を確かめる資料がないため、市場全体についての断定を取り除いた。

同様に、旧稿にあった「有権者の16%」「黒人有権者の40%」という数字は、調査名、実施時期、質問文、対象者の条件を確認できず、再掲載を見送った。暗号資産を保有している割合と、政策を投票判断の要因にした割合は異なる。選挙が市場の注目材料だったことは確認できても、その数字だけで投票行動や勝敗への寄与を測ったことにはならない。

よくある質問

Q. 2024年の米大統領選の投票日はいつですか?

A. 米国現地時間の11月5日です。本記事の公開日は11月7日で、投票日とは異なります。

Q. 11月7日には共和党の下院多数派も確定していましたか?

A. 本稿で確認したAP通信の218議席獲得報道は11月13日です。公開日後の出来事として区別しています。

Q. BTCの12万5,000ドルという数字は実績ですか?

A. ここで紹介した数字は、9月12日報道のトランプ氏勝利を条件とする2024年末予測です。実際の価格や利益の保証ではありません。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。