9月19日暗号資産ニュース:TrueX・Hemi調達とCohen氏の和解

2024年9月19日分では、取引プラットフォームTrueXとネットワーク開発企業Hemiの資金調達が注目された。一方、Ryan Cohen氏の規制案件には、対象となる株式取得をGameStopの経営問題と取り違えた説明があった。本稿はこの三つの話題を取り上げ、当時の発表内容と後日の情報を整理する。

TrueXが900万ドルを調達、PYUSDを決済に採用

2024年9月18日、True Marketsは暗号資産取引プラットフォームTrueXを公表し、900万ドルのシード資金調達を発表した。共同創業者はVishal Gupta氏とPatrick McCreary氏。発表にはRRE Ventures、Reciprocal Ventures、Paxos、Hack VC、Solana Foundation、Aptosなどの出資者が挙げられている。

Gupta氏はCoinbaseで取引所部門を率い、その前はCircleでUSDCに関わった人物として紹介された。McCreary氏はCoinbaseのシニアスタッフエンジニアを務めた。両者を一律に「元幹部」と呼ぶより、事業運営と技術開発の経歴を持つ創業チームと捉える方が、発表の内容に沿っている。

TrueXの特徴は、売買を成立させる機能と資産の保管を分ける設計にある。Paxosとの協力により、PayPal USD(PYUSD)を標準の決済通貨として採用すると説明した。ドル連動型のステーブルコインを決済の中心に置くという話であり、TrueXが新たな独自通貨を発行して900万ドルを集めたという発表ではない。

資金調達額は会社の開発や事業展開に関する情報だ。取引所に預けられた顧客資産の総額や、利用者に配られる報酬額と取り違えてはいけない。また、出資者として名前があることと、個々の取引や利用者の損失をその出資者が保証することも別である。

取引と保管の分離は、利用者の契約先まで確認する

発表はTrueXをノンカストディアルな取引所と表現する一方、Paxosによる保管の仕組みを紹介している。この場合の要点は、取引を処理する事業者と資産を保管する主体の分離だ。「ノンカストディアル」という言葉だけから、全利用者が秘密鍵を自分で管理し、第三者に一切依存しない方式だと読むことはできない。

売買注文が約定することと、その後に代金や資産の受渡しが終わることは異なる。利用を検討する際は、口座の契約相手、保管を担う会社、入出金できる資産、決済の条件をそれぞれ照合したい。PYUSDが標準で使われるという説明だけでは、すべての入出金経路や対象国の条件までは分からない。

9月18日の資料には、機関投資家向けの流動性プログラムも掲載されていた。したがって、プラットフォームの公表を、その日からあらゆる国の個人が同じ条件で利用できた証拠にはできない。発表された構想と、各利用者が実際に申し込めるサービスを分けて扱う必要がある。

旧記事はTrueXの調達資金の用途として、ビットコインの相互運用機能の追加などを記載していた。しかし、確認したTrue Marketsの発表は、そのような開発計画を示していない。本稿ではこの記述を削除し、別案件であるHemiのネットワーク開発と混同しないよう整理した。

Hemiの1,500万ドルは、BitcoinとEthereumをつなぐ開発資金

同じ9月18日、Cypher CapitalはHemi Labsの1,500万ドルのシードラウンドへの参加を発表した。Hemiが後日公開した公式資料では、このラウンドをBinance Labs、Breyer Capital、Big Brain Holdingsが主導したと説明している。TrueXとは調達主体も用途も異なる案件だ。

HemiはBitcoinとEthereumを組み合わせたモジュール型ネットワークを開発する。Cypher Capitalの発表では、Hemi Virtual Machine(hVM)に、Ethereumの実行環境であるEVMとBitcoinのフルノードを組み合わせる構想が紹介された。既存のEthereum系の開発ツールを使いながら、Bitcoinの情報を利用するアプリを作れるようにする狙いがある。

あわせて示されたHemi Bitcoin Kit(hBK)は、スマートコントラクトからBitcoinの状態に関する詳しい情報へアクセスするための仕組みだ。取引所の注文処理を効率化するTrueXとは、扱っている技術課題が違う。両社の調達額を並べる際も、取引サービスへの出資とネットワーク基盤への出資を区別すると理解しやすい。

資金を得たことは開発を進める材料になるが、それだけで技術の安全性や商用利用の完成を証明するわけではない。発表中の性能や安全性の説明は、開発者や出資者が示した設計上の主張として扱い、監査や実際の運用状況とは切り分けて読む必要がある。

Hemiの当初予定と、2025年の公開日発表を区別

2024年9月のCypher Capitalの資料は、インセンティブ付きテストネットの公開後に資金調達が行われ、メインネットは2024年第4四半期を目標としていたと記している。この時点では、正式稼働が済んだという報告ではなかった。テスト環境の提供と、本番ネットワークの公開は別の段階である。

その後、Hemiは2025年2月25日の公式発表で、メインネットを同年3月12日に公開すると案内した。9月時点の予定だけを残すと、後から読む人には2024年中に予定どおり本番公開されたように見えてしまう。ここでは、当初の目標と後日提示された日程を明記する。

2025年2月の発表には、利用を予定する取引・融資などのアプリや、ネットワークへ集まった資産に関する説明もある。ただし、ネットワーク上の資産額と会社が出資者から受け取ったシード資金は、性質の違う数字だ。利用者の預入資産を、会社の追加資金調達として合算することはできない。

プロジェクトの進展を追う場合には、資金調達、テストネット、公開予定、本番稼働という順序で資料を並べるとよい。本稿で引用する2月25日の発表が直接示すのは公開日程の案内であり、その一文だけをもって、その後のすべての機能が予定どおり稼働したと断定するものではない。

Ryan Cohen氏の案件は、Wells Fargo株の届出義務

米連邦取引委員会(FTC)は2024年9月18日、GameStopの会長兼CEOであるRyan Cohen氏が、98万5,320ドルの民事制裁金を支払う和解案を発表した。問題になった取引はWells Fargoの株式取得である。GameStopの事業方針や、同社株の市場操作について違法性を認定した発表ではない。

FTCによると、Cohen氏はWells Fargoの議決権付き証券を取得し、保有額がHart-Scott-Rodino法(HSR法)の届出基準を超えた。訴状は、必要な届出を行い、取得前の待機期間を守る義務があったのに、これを履行しなかったと主張している。争点は大口の株式取得に伴う事前手続きだった。

旧記事の「競争を阻害する行為や市場操作に関与した」「GameStopの経営下で行われた戦略が抵触した」という説明は、今回確認したFTC資料の内容と一致しない。役職が見出しに使われていても、問題とされた取引先や行為を確認しなければ、別会社の事業に関する事件へ意味が変わってしまう。

10%未満の保有でも、投資目的の例外が自動適用されるわけではない

FTCは、Cohen氏の保有割合がWells Fargoの議決権付き証券の10%未満だった一方、投資のみを目的とする取得の例外には該当しないと説明した。訴状では、取締役への就任を求めるメールや、事業改善の提案を含む経営陣との連絡を、その判断の根拠として挙げている。

この説明から読み取れるのは、保有割合だけで手続きの要否を決められないという点だ。少数株主という呼び方だけでは、取得の目的や経営への関与を示す事情は分からない。本件の主張を、すべての少額投資に同じ届出が必要だという一般論へ広げることも適切ではない。

また、発表当時の資料は和解案を公表し、意見募集と裁判所による承認の手続きを説明していた。「支払うことで合意した」という内容を、その日にすでに納付が完了した記録として扱うことはできない。新規事業の発表、開発計画、規制当局の措置は、いずれも資料が示す段階までを正確に書き分けることが重要になる。

よくある質問

Q. TrueXとHemiは同じ資金調達案件ですか?

A. 別案件です。TrueXは取引プラットフォームに関する900万ドル、Hemiはネットワーク開発に関する1,500万ドルのシードラウンドを発表しました。

Q. Hemiは2024年9月にメインネットを公開しましたか?

A. 引用した当時の発表は2024年第4四半期を目標としていました。その後、2025年2月25日に同年3月12日の公開予定が発表されています。

Q. Cohen氏の和解はGameStop株の市場操作に関するものですか?

A. 違います。FTCの発表は、Wells Fargo株の取得に伴うHSR法の届出・待機義務違反を問題とした和解案です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。