オリコンは2023年3月16日、顧客満足度調査の総合1位企業に向けた「受賞トロフィーNFT」の無償配布を発表しました。対象は、2022年4月から2023年3月に発表された192ランキングです。192という数字はランキングの数であり、受賞企業が重複なしで192社あったという意味ではありません。
この企画は、賞の喜びを従業員にも届けるための記念品でした。2026年9月27日時点で読むときには、当時の受け取り期限と、その後のウォレットサービスの変更を踏まえる必要があります。売買するためのNFTとは何が違ったのか、一次資料をもとに振り返ります。
トロフィーの画像を、離れた拠点の従業員にも届ける企画
通常のトロフィーは、企業の本社や店舗など特定の場所に置かれます。そこで働いていない従業員には、実物を見る機会がない場合もあります。オリコンはこうした声を背景に、受賞企業へ渡すトロフィーの画像をNFTにし、受賞の喜びを社内で共有する用途を打ち出しました。
ここで配るのは実物のトロフィーを細かく分割した所有権でも、企業の株式でもありません。従業員が手元で受賞を感じられるデジタルの記念品です。顧客がサービスを評価し、その結果として企業が受賞する流れと、従業員がNFTを受け取る流れは別にあります。NFT保有者が投票して受賞企業を決める制度ではありませんでした。
発表では、3月16日の授賞式に出席する企業に会場で配布し、それ以外の受賞企業には後日個別に対応する予定が示されました。ただし、公開された発表だけでは、対象の全従業員が実際に取得したか、最終的に何件配られたかまでは分かりません。受賞企業への案内と、各個人の取得実績を同じ数字として扱わないことが必要です。
2023年3月30日が期限で、出品も送付もできなかった
当時の受け取りには、LINEアカウントだけでなくDOSI Walletへの登録が必要でした。配布の締め切りは2023年3月30日で、期限後の受け取りはできないと明記されています。現在あらためてLINEのアカウントを作っても、この配布に参加できるという案内ではありません。
さらに、発表には出品と友だちへの送付を認めない条件がありました。そのため、マーケットで購入して集める商品や、ほかの人に贈るデジタルギフトと同じ使い方を想定すべきではありません。「NFT」という名称だけから、外部ウォレットへ自由に移せる、別の市場で売れると判断することもできません。
売買できない記念品の場合、評価すべき点は将来の相場ではなく、受賞の記憶をどのように共有できるかです。一方で、譲渡制限があることと、保有者の雇用関係を継続的に証明できることも同じではありません。本企画の発表は、社員証としての認証や退職後の権利管理まで説明したものではなく、そのような機能を追加で推測する根拠はありません。
192ランキング、127ランキング、88社はそれぞれ別の集計
翌3月17日のオリコンの開催報告によると、授賞式には127ランキングに関係する総合1位企業88社が集まりました。式典は東京都港区のグランド ハイアット 東京で、午前と午後の二部制で行われています。2019年以来、4年ぶりに企業の代表者を集めた授賞式でした。
192は対象期間に発表したランキング全体の数、127は当日の出席企業に関わるランキングの数、88は集まった企業の数です。異なるサービス分野で同じ企業が評価されることもあるため、ランキングの件数と企業の件数は単純には一致しません。また、この88社はNFTを受け取った個人の人数を表すものでもありません。
公式の開催レポートでは、代表者へのトロフィーと賞状の授与を確認できます。受賞の事実を調べたい場合は、NFT画像だけでなく、該当年の受賞企業一覧やランキング名をたどる方が、対象となったサービスを理解しやすくなります。式典への出席の有無、ランキングでの受賞、NFTの取得という三つの事実を分けて確認する読み方です。
先行した音楽ランキングのNFTとは、対象が異なる
オリコンは今回の企画を、同社によるNFT配布の2例目と説明しました。先行するのは「第55回 オリコン年間ランキング2022」の受賞トロフィーNFTです。2023年1月17日の発表では、各部門の1位アーティストに渡すトロフィーの画像をNFT化し、翌18日正午から無償で配ると案内していました。
音楽アーティストの受賞をファンと共有する企画と、顧客満足度で評価された企業の喜びを従業員と共有する企画では、参加者と目的が異なります。画像をデジタルの記念品にする発想は共通していても、片方の配布先や受け取り条件をもう片方にそのまま当てはめることはできません。
この比較からは、NFTを価格の付く収集品以外にも用いる考え方が見えます。企業表彰では、同じ職場の成果を共有する接点になり得ます。ただし、記念品を導入したことで従業員の意欲や顧客満足度が実際にどの程度上がったかは、別途測定が必要です。今回確認した資料に、その効果を数値で検証した結果はありませんでした。
DOSI Walletの再編とDOSIの終了告知を踏まえる
配布時に利用したDOSI Walletは、その後も同じ形で続いたわけではありません。LINE Xenesisは、LINE NFTやDOSI Walletを順次停止し、2024年1月10日にリニューアルしたDOSIへサービスをまとめる案内を出しています。保有するデジタルアセットの利用には、情報提供への同意など所定の手続きが必要とされていました。
さらにLINE Xenesisの2025年7月2日の告知では、DOSIの全サービスを同年12月末までに終了する方針が記されています。予定表では9月30日にFinschiaチェーンとDOSIサービス、12月30日11時にマイページ上の保有アイテム・取引履歴の表示を終了すると案内されました。いずれも2026年9月時点では過去の日程です。
同じ告知には一部アイテムをKaiaへ移す方針もありますが、列挙されているのはLINE Xenesis発行の3種です。それだけを根拠に、オリコンのトロフィーも移転対象だったとはいえません。今回の調査では、当該トロフィーの移転実績や現在利用できる専用閲覧先を確認できませんでした。過去のウォレット登録手順を再掲して、今も取得・閲覧できるとは案内しません。
受賞記録と、NFTを表示するサービスは別に確認する
サービスの停止告知があっても、それだけで2023年の受賞という出来事が取り消されるわけではありません。現在もオリコンの公式開催レポートで、当時の表彰をたどれます。一方、NFTの画像を表示する画面や保有履歴を確認する機能は、利用したサービスの提供条件に左右されます。受賞の記録とデジタルアイテムへのアクセスは別々に確かめる必要があります。
また、NFT化したことでランキングの対象や評価方法が変わるわけでもありません。オリコンの調査方法の説明では、サービスや商品を利用した経験のある人を対象にインターネット調査を行い、その結果を集計しています。ある年・ある分野の総合1位という結果を、その企業の全商品や将来の品質まで保証する表示に広げないことが大切です。
企業が同様の記念品を企画する場合は、配布目的、対象者、期限、譲渡の可否に加え、表示サービスが変わる際の対応まで整理すると、受け取る側が理解しやすくなります。公式の受賞ページや当時の案内を残しておくことも、後から経緯を確認する助けになります。NFTの発行と、その意味を説明し続ける情報の管理は、両方が必要な作業です。
よくある質問
Q. オリコンの受賞トロフィーNFTは今から受け取れますか?
A. 2023年の配布期限は3月30日でした。今回の調査では再配布や現在の受け取り窓口を確認できていません。
Q. このNFTを売買したり、人に送ったりできますか?
A. 当時の発表は出品と友だちへの送付を不可としていました。自由な売買を前提とする商品ではありません。
Q. DOSI終了でオリコンの受賞そのものも無効になりますか?
A. ウォレットや閲覧機能の提供と、ランキングで受賞した事実は別です。当時の表彰は公式開催レポートから確認できます。
この記事の出典
- オリコン:顧客満足度トロフィーNFTの発表(2023年3月16日)
- オリコン:2023年アワード授賞式の開催報告
- 2023年オリコン顧客満足度アワード開催レポート
- オリコン:年間ランキング2022の受賞トロフィーNFT
- オリコン顧客満足度:調査・ランキング方法
- LINE Xenesis:DOSIへの統合とNFT関連サービス終了
- LINE Xenesis:DOSIサービス終了に伴う対応(2025年7月2日)
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




