ベトナムIT企業の買収で確認したいこと:2023年セミナーを振り返る

ONE-VALUEが2023年3月に案内した「ベトナムIT業界におけるM&A」は、市場動向の解説と売り手案件の紹介を組み合わせたウェビナーでした。現在の参加募集ではなく、日本企業がベトナムの開発会社を検討する際の論点を知るための過去の企画です。

買収で得られるのは会社の規模だけではありません。開発を担う人が残るか、技術や権利を使えるか、顧客との取引が続くかが重要です。主催者の告知と後続資料、公的機関のM&A資料を基に、開催記録と現在の検討に使える確認事項を整理します。

2023年3月22日のウェビナーはどのような企画だったか

ONE-VALUEは2023年3月16日、ベトナムIT業界の動向とM&A案件を紹介する無料ウェビナーを告知しました。開催日時は3月22日15〜16時の日本時間で、ベトナム時間では13〜14時。オンラインで日本語を使い、事前登録した参加者に視聴URLを送る形式でした。無料なのはこのイベントへの参加で、企業調査や買収支援まで無償という案内ではありません。

講演は二部構成で、第一部に市場動向、M&Aを使うメリット、売り手案件を検討する際の留意点を置き、第二部でベトナムIT企業の案件を紹介する予定でした。質疑応答を含めて60分とされ、告知には代表取締役のフィ ホア氏とコンサルタントの太田宙輝氏が登壇者として掲載されています。肩書は当時のものです。

本サイトの旧記事は3月24日付でありながら、過ぎた3月22日を「開催します」と案内していました。現在の募集と誤解されないよう、申込リンクは掲載しません。なお、VietBizの第2回案内には、3月22日に開催した同名ウェビナーと同じ内容である旨が記されており、初回の実施は主催者側の記述で確認できます。

買収で何を得たいのかを、案件を見る前に決める

IT企業のM&Aを検討する目的には、開発人員の確保、特定技術の獲得、現地顧客への接点づくりなどがあります。同じ売上規模の会社でも、受託開発が中心か、自社製品を販売する会社かで、評価する資産は違います。人材不足の解消が目的なのに、事業の理解を伴わず企業規模だけを比較すると、必要な能力を得られない可能性があります。

主催者系列のVietBizは2025年2月の解説で、既存チームや開発基盤を引き継ぐ利点とともに、人材流出、技術資料の不足、顧客案件の引き継ぎ、統合作業の混乱を挙げています。これは支援事業者による解説であり、すべてのベトナム企業が低コスト・高品質であるという保証ではありません。

経済産業省も、海外M&Aには制度、言語、文化の違いがあり、期待した成果を十分に挙げられない事例があると説明しています。買収のほか、開発委託、業務提携、現地採用で同じ目的を達成できるかも比較対象です。案件紹介を受ける前に、欲しい技術、必要人数、顧客層、買収後に任せたい業務を整理すると、質問が具体的になります。

人材は人数だけでなく、役割と定着条件を確認する

開発会社の価値を考える際は、エンジニアの在籍数だけでなく、設計、実装、品質管理、顧客との調整を誰が担当しているかを見ます。特定の創業者や責任者だけが仕様や顧客関係を理解しているなら、その人が離れた場合にどの業務が止まるのかを確認する必要があります。

関東経済産業局の海外M&A資料も、企業の強みが経営者個人の信用や人脈に依存するのか、組織の契約や業務プロセスに定着しているのかを見極めるよう説明しています。この考え方をIT企業に当てはめるなら、担当者の代替要員、設計資料、コードレビュー、引き継ぎ方法が確認項目になります。これは本稿が整理した検討例で、当日の講演内容を再現したものではありません。

待遇や評価方法を大きく変える場合には、主要人材が働き続ける条件も検討対象です。雇用契約、職務、報酬、離職状況を確認し、買収後の責任と権限を話し合います。株式を取得したことだけで、全従業員の定着や同じ生産性が確保されるわけではありません。現地の管理者を残すのか、日本側がどこまで判断するのかという体制も、価格交渉とは別に詰める課題です。

ソースコードの存在と、使える権利を分けて調べる

VietBizの2025年解説が挙げる技術資産の不透明性は、IT案件で重要な論点です。ソースコードや仕様書が不足していると、保守や追加開発の費用を見積もりにくくなります。実際に動く製品がある場合でも、開発環境の再現、テスト、更新手順、障害対応の履歴を確認することで、継続運用に必要な作業が分かります。

もう一つ分けたいのが、コードを保管していることと、そのコードを事業に利用できる権利です。たとえば顧客の委託で作ったシステム、自社で開発した製品、外部事業者から利用許諾を受けた部品では、確認する契約が異なります。開発した会社にあらゆる権利が残っていると推測せず、顧客契約や委託契約の権利帰属と利用範囲を調べる項目です。

この点は特許や商標の有無だけでは判断できません。JETROはベトナムの技術・知的財産関連制度への参照先を用意しています。海外M&Aの検討では、財務資料とは別にこうした制度と契約を確認します。個別の契約解釈や現地制度の適用は、その会社の資料を基に確認すべきであり、一般向けのセミナー告知から結論を出せる内容ではありません。

顧客の継続性と買収契約の条件を確認する

開発企業の過去の売上を見るだけでは、買収後の受注を判断できません。主要顧客がどの程度を占めるか、単発開発と保守契約の割合、契約更新の時期、未回収の代金、進行中案件の採算などを分けて見ると、売上が継続する前提を検討できます。特に経営者個人の関係で受注していた案件は、窓口の変更後も同じ条件で続くとは限りません。

契約の確認例としては、会社の支配関係が変わったときの通知や同意、再委託の制限、秘密情報の扱い、成果物の納品・検収条件があります。すべての契約に同じ条項があるわけではなく、締結済みの文面と取引の実態を照らす作業です。紹介資料の顧客ロゴだけを、将来の受注や契約承継の証拠にはできません。

JETROの2022年のベトナムM&A資料は、取引契約の検討事項として、違反時の対応、複数言語間で食い違いが生じた場合の優先言語、準拠法、紛争解決方法などを整理しています。当時の制度解説を2026年の案件へそのまま適用することは避けつつ、合意内容と問題発生時の処理を明確にするという論点は、現在の検討にも役立ちます。

2026年に読める資料と、公開情報では分からないこと

2026年9月27日の確認では、ONE-VALUEの初回告知とVietBizの第2回案内が公開されています。第2回は2023年6月15日の企画で、終了と表示されています。初回3月22日とは別の開催日です。日付を入れ替えたり、第2回の講師情報を初回へ移したりせず、個々の案内を読む必要があります。

主催者系列では、その後もIT企業のM&Aに関する解説や支援の案内を確認できます。ただし、それを理由に2023年に紹介した売り手企業が今も募集中だとはいえません。具体的な企業名、提示条件、成約の有無、初回講演の録画の一般公開は、今回確認した資料からは確定できませんでした。

当時のイベントは案件を知る入口であり、個別企業への調査を終えたことを意味しません。買収を検討する場合は、まず求める能力を定め、その後に人材、技術資料、権利、顧客契約を調べ、買収後の運営計画へつなげるという順序になります。本稿の確認項目は検討を具体化するためのもので、特定案件の成約や収益性を保証するものではありません。

よくある質問

Q. 2023年3月22日のウェビナーに今から申し込めますか?

A. 過去の企画です。本稿では旧申込先への案内を終了し、開催記録として紹介しています。録画の一般公開は確認できていません。

Q. 第2回の終了表示だけで初回開催を確認したのですか?

A. 第2回の本文に、2023年3月22日に開催した同名ウェビナーと同じ内容である旨が明記されています。この主催者の記述を初回実施の根拠としています。

Q. 紹介された企業の買収条件や成約は分かりますか?

A. 今回確認した公開資料では、個別の企業名や価格、成約の有無まで確認できませんでした。現在の支援案内と過去の案件の募集継続は別です。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。