暗号資産とNFTの違い|代替性・法律・税金の3点で整理

「NFTも仮想通貨の一種でしょう?」という疑問はよく聞かれます。どちらもブロックチェーンに記録されるトークンで、買うときにはイーサ(ETH)などの暗号資産を使うことが多いため、混同されやすいのは無理もありません。

しかし、両者は「1つ1つが同じ価値として交換できるか」という性質が根本から違い、日本の法律や税金の扱いも別々に定められています。2022年の旧版記事には「現物通貨と暗号通貨はタンジブル」といった不正確な説明もありました。この記事では、技術・法律・税金・値段の決まり方の順に、2026年時点の制度に沿って違いを整理し直します。

一言でいうと「代わりが利くかどうか」の違い

暗号資産とNFTを分ける一番の違いは、英語でいう「fungible(代替可能)」かどうかです。

  • 暗号資産(代替性トークン):あなたの持つ1BTCと、他人の持つ1BTCは同じ価値で、入れ替えても困りません。1万円札どうしを交換しても損得がないのと同じ性質です。
  • NFT(非代替性トークン):トークンごとに固有の番号(トークンID)があり、同じコレクションでも番号が違えば別物として扱われます。美術館の作品に1点ずつ登録番号が付いているイメージに近いものです。

旧版記事は「現物通貨と暗号通貨はタンジブル(有形)」と書いていましたが、ここで言うべき言葉は「ファンジブル(代替可能)」です。形があるかどうかではなく、交換しても価値が変わらないかどうかが論点になります。

なお、「NFTは分割できない」と説明されることもありますが、後で触れる規格ERC-1155のように、同じデザインのトークンを複数枚発行できる仕組みもあります。「1点もの」だけがNFTではない点は押さえておきましょう。NFTそのものの基本はNFTとは何か|初心者向けの基礎解説で詳しく説明しています。

技術の違い:ERC-20とERC-721・ERC-1155

イーサリアム上のトークンは、「規格」と呼ばれる共通ルールに沿って作られます。暗号資産とNFTの違いは、この規格の違いとして表れます。

規格 性質 主な使われ方
ERC-20(2015年提案) 代替性トークン。残高を数量で管理 ステーブルコイン、各種トークン
ERC-721(2018年提案) 非代替性トークン。IDごとに所有者を管理 アート、PFP(アイコン用画像)など
ERC-1155(2018年提案) 代替性・非代替性を1つの契約で混在して扱える ゲーム内アイテム、複数枚発行の作品

ERC-20では「アドレスAが100枚持っている」という数量の記録ですが、ERC-721では「ID 1234番の持ち主はアドレスA」という1対1の記録になります。どちらも同じブロックチェーンで動くため、NFTを送るときも手数料(ガス代)はETHで払います(ガス代の仕組み)。「NFTは暗号資産と同じプログラミングで作られるが、似ているのはそこまで」という旧版の指摘は、この点では正しいと言えます。

法律上の違い:資金決済法の「暗号資産」とNFT

日本では、資金決済法第2条第14項が「暗号資産」を定義しています。要点は次の2つです。

  • 1号暗号資産:不特定の人に対して代金の支払いに使え、不特定の人と売買でき、電子的に移転できる財産的価値(ビットコインなど)。
  • 2号暗号資産:不特定の人と1号暗号資産に交換でき、電子的に移転できる財産的価値。

多くのNFTがこれに当たらないことは、金融庁の事務ガイドラインで整理されています。2023年3月24日に公表・適用された改正で、次のイとロをいずれも満たし、社会通念上「物品等」にとどまるものは、支払手段の要件を満たさないとされました。

  1. イ:発行者が規約などで決済手段としての使用を禁じている、または仕様上決済に使えない。
  2. ロ:最小単位あたりの価格が高額である、または発行数量が限られている。

逆に言えば、NFTという名前でも、実際に店舗の支払いなどに広く使われていれば暗号資産に当たる可能性があります。名前ではなく中身で判断されるという点が大切です。また、円などの法定通貨と価値が連動するステーブルコインは「電子決済手段」という別の枠組みで規制されています(ステーブルコインの種類と日本の規制)。

税金の違い:暗号資産は原則雑所得、NFTの転売は原則譲渡所得

税金の扱いも異なります。個人の場合の基本は次のとおりです。

  • 暗号資産の売却益:国税庁の資料では、事業所得などに当たる場合を除き、原則として雑所得(総合課税)とされています。暗号資産の課税については分離課税への見直しが進められているため、申告する年の最新の取扱いを国税庁の案内で確かめてください。
  • 購入したNFTの転売益:国税庁が2023年1月13日に公表したNFTの課税に関するFAQ(全15問)では、原則として譲渡所得とされ、年50万円の特別控除があります。ただし、営利目的で継続的に売買している場合は事業所得や雑所得になります。
  • 自分で作ったNFTを売った場合:同じFAQで雑所得(または事業所得)とされています。ブロックチェーンゲームで得た報酬も雑所得です。

注意したいのは、ETHでNFTを買った時点で「ETHを手放した」ことになり、ETHの値上がり分に課税される場合がある点です。NFTの売買だけを見ていると見落としやすいので、取引の記録は暗号資産とNFTの両方で残しておきましょう。取引所の取引履歴に加えて、ウォレットの送受信記録や、購入時点の円換算レートも控えておくと、申告の際に計算し直す手間が省けます。詳しくはNFTの税金|一次流通と転売の課税区分を参照してください。

値段の決まり方と売りやすさの違い

暗号資産は、取引所の板に多くの売買注文が並び、ほぼ連続的に価格が付きます。1BTCはどれも同じなので、「今いくらで売れるか」がはっきりしています。

一方のNFTは、1点ごとに買い手を見つける必要があります。よく使われる「フロア価格」は、そのコレクションで一番安く出品されている価格にすぎず、その値段で必ず売れるわけではありません。取引の少ないNFTは、出品しても何か月も買い手が付かないことがあります。旧版記事は「暗号資産は流動性が高く、NFTは唯一無二の価値を担保できる」とまとめていましたが、裏を返せば、NFTは売りたいときに売れない可能性を常に抱えているということです。

また、NFTの価格は多くの場合ETH建てで表示されるため、NFTの人気が変わらなくても、ETHの円建て価格が下がれば資産の円換算額は減ります。この二重の値動きについては暗号資産の下落はNFTに響くかで詳しく検証しています。

よくある3つの誤解

誤解1:NFTを買えば作品の著作権が手に入る。多くの場合、NFTの購入で得られるのはトークンの所有であり、著作権そのものは作者に残ります。商用利用ができるかどうかは、コレクションごとの利用規約(ライセンス)で決まります。

誤解2:NFTは画像そのものである。ブロックチェーンに記録されるのは主にトークンIDと所有者、画像などのデータの置き場所を示す情報です。画像ファイル自体は別のサーバーや分散型ストレージに置かれていることが多く、保存先が消えれば表示できなくなることもあります。

誤解3:NFTも暗号資産と同じ保護を受けられる。国内の登録業者が扱う暗号資産には、利用者の資産の分別管理などのルールがあります。NFTのマーケットプレイスは運営者によって仕組みが違うため、同じ水準の保護があるとは限りません。NFTにはアート、ゲーム、チケットなどさまざまなタイプがあり(NFTの代表的なタイプ)、タイプごとに気をつける点も変わります。

よくある質問

Q. NFTは暗号資産(仮想通貨)ですか?

A. 多くのNFTは、資金決済法の暗号資産には当たらないと整理されています。金融庁の事務ガイドラインは、決済に使えない仕様で、高額または発行数が限られるなど「物品等」にとどまるトークンは支払手段の要件を満たさないとしています。ただし、実際に支払いに広く使われていれば該当する可能性があります。

Q. NFTを転売した利益は何所得になりますか?

A. 国税庁のFAQでは、購入したNFTの転売益は原則として譲渡所得(年50万円の特別控除あり)です。営利目的で継続的に売買している場合は事業所得や雑所得になります。

Q. ETHでNFTを買うと税金がかかることがありますか?

A. あります。ETHでNFTを買うと、ETHを手放したことになり、取得したときより値上がりしていれば、その差額が課税対象になる場合があります。取引ごとの記録を残しておきましょう。

Q. ビットコイン上にもNFTはありますか?

A. あります。2022年末から2023年初めにかけて広まった「Ordinals」という仕組みで、ビットコインの最小単位にデータを刻み込み、NFTのように扱う方法が使われています。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。