2022年5月23日、GMOペパボが運営するオリジナルグッズ作成・販売サービス「SUZURI byGMOペパボ」は、NFTの画像を使ってTシャツやステッカーなどのグッズを作り、販売できる機能を、NFTの制作者向けに提供し始めました。国内のオンデマンドプリントサービスでは初の試みと発表されています(同社調べ)。
旧版の記事はこの発表を短く紹介したものでした。この記事では、機能の仕組みと利用手順、発表時に示された今後の構想、その後のSUZURIの展開を整理したうえで、NFTの画像をグッズにするときに多くの人がつまずく「誰が商用利用できるのか」という点を解説します。
何が始まったのか:2022年5月の発表内容
SUZURIは、クリエイターが画像をアップロードするだけで、注文が入るたびに1点ずつ商品を製造・発送する「オンデマンドプリント」のサービスです。在庫を持たずにグッズを販売できることから、個人のイラストレーターや写真家に広く使われており、発表当時の登録クリエイターは60万人を超えていました。
新機能では、ブロックチェーンのウォレット「MetaMask」をSUZURIと連携させると、ウォレットに入っている自分のNFTの画像を、そのままグッズのデザインとして使えるようになりました。NFTの画像ファイルを探して保存し直す手間がなく、作品の出どころがNFTであることも示しやすくなります。
この機能は、GMOペパボが2022年3月に新設した「ペパボ3推進室」が開発しました。同室はWeb3関連の技術を自社サービスに取り入れることや、NFTを通じたクリエイター支援を目的に作られた部署です。
利用の流れ
発表時のプレスリリースでは、次の手順が案内されていました。
- MetaMaskを入れたWebブラウザでSUZURIにログインする(グッズの作成・販売には会員登録が必要)。
- 「アイテムをつくる」の画面で「NFTの画像を使う」を選び、MetaMaskに接続する。
- ウォレット内のNFTから使いたい画像を選び、Tシャツやパーカーなどの商品に配置する。
- 価格などを設定して販売を始める。
ウォレットの接続は、SUZURIがウォレット内のNFTを読み取って一覧表示するためのものです。接続そのものでNFTが移動することはありませんが、ほかのサイトも含め、ウォレットを接続する際は表示される要求の内容を確認する習慣をつけておくことが大切です。
なお、対応するブロックチェーンや、画像を読み込めるNFTの種類について、発表資料に詳しい記載はありませんでした。
発表時に示された今後の構想
GMOペパボは発表の中で、今後の取り組みとして、NFTの制作者に売上の一部が還元される仕組みづくりを挙げていました。旧版の記事は、制作者本人だけでなく、NFTを保有し商用利用の許諾を受けた人もグッズを作れるよう整備する予定だとも紹介していました。
これは、NFTの世界でよく議論される「二次創作や商品化で得た利益を、元の作者にどう届けるか」という課題に対する答えのひとつです。現実の商品として売れたときに作者にも収益が入れば、NFTを起点にした創作の広がりと、作者の収入を両立させられます。
ただし、この構想がその後どのような形で実装されたかについて、公式な発表は確認できませんでした。
その後どうなったか:デジタル販売への展開
SUZURIは2022年11月16日、音楽、イラスト、壁紙、写真、動画、3Dモデルなどのデジタルコンテンツを販売できる機能の事前登録を始め、2023年春の販売開始を予定すると発表しました。販売手数料は販売金額の5.6%と22円とされ、同時点の登録クリエイターは66万人を超えていました。
このデジタルコンテンツ販売はブロックチェーンを使う仕組みではなく、通常のファイル販売です。発表資料では、背景としてWeb3やNFTへの関心の高まりに触れ、5月のNFT機能を過去の取り組みとして紹介していました。NFTという仕組みにこだわらず、デジタル作品を手軽に売れる場を広げる方向へ進んだと読み取れます。この発表は、暗号資産市場の下落を受けてNFTの取引額が2022年後半に大きく落ち込んだ時期と重なっており、作家がウォレットを持たなくても作品を売れる仕組みのほうが、利用の裾野は広がりやすいと言えます。
2026年時点で、NFTの画像を使うグッズ作成機能が引き続き提供されているかどうかは、公式サイトやヘルプで確認できませんでした。利用を考えている場合は、SUZURIのアイテム作成画面やサポート窓口で最新の状況を確かめてください。
なぜNFTとオンデマンドプリントの組み合わせが注目されたのか
2021年から2022年にかけて、NFTのアートやキャラクターは画面の中だけで楽しむものという印象が強く、「実物がないのに価値があるのか」という疑問がよく聞かれました。グッズ化は、デジタルで生まれた作品を日常の持ち物として身につけられるようにし、NFTを持っていない人にも作品を知ってもらう入り口になります。
一方、NFTのコレクションを実物の商品にするには、従来は工場への発注や在庫の管理が必要で、個人の作家には負担が大きいものでした。注文ごとに製造するオンデマンドプリントなら、売れ残りの心配がなく、少量から試せます。個人のNFT作家が多い日本の市場事情に合った組み合わせだったと言えます。
海外でも、NFTの保有者が自分の持つキャラクターで商品を作る例が話題になりましたが、それには後述する商用利用の許諾が前提になります。
NFTの画像をグッズにするときの権利の注意点
NFTを持っていることと、その画像を商品にして売ってよいことは別の問題です。NFTを買っても、作品の著作権は原則として作者に残り、購入者が得るのは販売条件で定められた範囲の権利だけです。
| ケース | グッズ化・販売の可否 |
|---|---|
| 自分が描いてNFTにした作品 | 自分が著作者なので原則として可能(他人の素材を使っていない場合) |
| 保有者に商用利用を認めているコレクション | 利用規約の範囲内で可能。売上の上限や表示の条件が付くことがある |
| CC0など権利を放棄したコレクション | 保有していなくても使えることが多いが、商標は別に確認が必要 |
| 個人利用のみを認めるコレクション | 保有していても販売は不可 |
規約は発行元のサイトやマーケットプレイスの説明欄に載っています。条件が変わることもあるため、販売を始める時点の規約を保存しておくと安心です。また、画像の中に実在の人物の顔や他社のロゴ、キャラクターが含まれている場合は、著作権とは別に肖像権や商標権の問題が生じることがあります。作品そのものの権利が問題なくても、描かれている内容まで確認するのが安全です。NFTの仕組みそのものはNFTとは何か|初心者向けの基礎で解説しています。
クリエイターが押さえておきたいこと
NFTとして発表した作品を、実物のグッズとしても販売するやり方は、ファンとの接点を増やす方法として今も使われています。取り組む際は次の点を意識するとよいでしょう。
- NFTの保有者との関係:NFTを買った人が「自分の持つ作品が勝手に商品化された」と感じないよう、販売時の条件にグッズ化の方針を書いておく。
- 収入の管理:グッズの売上もNFTの売上も、個人の所得として確定申告の対象になり得る。販売履歴を残しておく。
- ウォレットの安全:制作用と保管用でウォレットを分け、復元用フレーズは誰にも教えない。
OpenSeaでのNFTの出品方法はNFTをOpenSeaで販売する方法で紹介しています。
よくある質問
Q. SUZURIのNFTグッズ機能はいつ始まりましたか?
A. 2022年5月23日に、NFTの制作者向けに提供が始まりました。MetaMaskと連携し、ウォレット内のNFTの画像をグッズのデザインに使える機能です。
Q. 他人が作ったNFTを買えば、その画像でグッズを売れますか?
A. NFTを保有しているだけでは売れません。コレクションの利用規約が保有者の商用利用を認めている場合に限り、その範囲で販売できます。
Q. NFTグッズ機能は今も使えますか?
A. 2026年時点で提供状況を公式情報で確認できませんでした。SUZURIのアイテム作成画面やサポートで最新の状況を確かめてください。
Q. MetaMaskをSUZURIに接続するとNFTが移動しますか?
A. 接続はウォレット内のNFTを読み取るためのもので、接続だけでNFTが移動することはありません。どのサイトでも、署名を求められたときは内容を確認してください。
この記事の出典
- GMOペパボ:「SUZURI byGMOペパボ」、NFTコンテンツでオリジナルグッズの作成・販売ができる機能を提供開始
- ITmedia NEWS:「SUZURI」でNFTコンテンツのグッズ販売可能に MetaMaskと連携
- GMOペパボ:「SUZURI byGMOペパボ」、デジタルコンテンツの取り扱いを開始
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




